AXCR2014 レポート Vol.01 AXCRはたくさんの魅力に溢れたラリーだ!(前編)

掲載日:2015年02月16日 エクストリームラリー    

取材協力/アジアクロスカントリーラリー日本事務局  取材・文/宮崎 大吾

Asia Cross Country Rally 2014 Special Report

■大会名称
第19回 アジアクロスカントリーラリー2014
■開催期間
2014年8月9日(タイ パタヤ)~15日(カンボジア プノンペン)
■公認
国際モーターサイクリズム連盟(FIM)、国際自動車連盟(FIA)、タイ王室自動車連盟(RAAT)
■主催
オルティブタイランド、R1ジャパン
■協力
タイ国政府観光庁、パタヤ市、サケオ市、カンボジア政府
■お問い合わせ(電話)
アジアクロスカントリーラリー日本事務局(03-5911-3844)

2014年で第19回を迎えた『アジアクロスカントリーラリー』は、タイのパタヤをスタートし、カンボジアのプノンペンまでの約2,000kmの行程を走破する、アジア最大のクロスカントリーラリーです。2014年大会はタイ特有のマディから、日本では経験できないカンボジアの超高速ダート、世界遺産のアンコールワット、いにしえの日本の農村を思い起こさせるような田園風景を駆け抜け、心優しい村人達との出会いもありました。そんな魅力に溢れた大会の模様をお伝えしましょう。

アジアを舞台に繰り広げられる大会
2012年から待望の2輪クラスがスタート

1996年から現在まで、タイをはじめ、マレーシア、シンガポール、中国、ラオス、ベトナム、カンボジア、ミャンマーなど8カ国で開催されてきた『アジアクロスカントリーラリー』。1996年の記念すべき第1回大会ではマレーシアのクアラルンプールをスタートし、シンガポールを経由してクアラルンプールに戻ってくるという設定だった。

2年目(1997年)はクアラルンプールをスタートしてタイのバンコクまで。3年目(1998年)、再びクアラルンプールからスタートし、タイ北部のチェンマイまで3,200kmの行程。4年目(1999年)もクアラルンプールからスタートし、バンコクを抜け、ラオスのビエンチャンでゴール。そして5年目は西暦2000年を記念した大会で、10日以上のプレミアムなラリーとなった。マレーシアをスタートし、タイ、ミャンマー、中国の雲南省を駆け抜け、4,000kmに渡る壮大なものになった。

ここまではすべてマレーシアをスタートするラリーだったが、アジアのモータリゼーションの急速な発達により、メーカーの拠点がタイに集中したり、物流の中心となっていった背景もあり、6年目の2001年からはタイを中心としたルートが使われるようになる。

一方『アジアオープン』というFIM傘下によるエンデューロイベントが2000年から2007年までタイで開催され、ここに参加し続けていたトップライダーの池町佳生選手や江連忠男選手がアジアクロスカントリーラリーの2輪部門の開催を強く要望してきた経緯があり、2012年には2輪(MOTO)クラスが新設された。

記念すべきMOTOクラス初優勝者は池町選手。2013年はスウェーデンのラリーストであるオーレ・オルソン選手が優勝。オルソン氏は2014年度の参戦はなかったものの、スタッフとしてラリーに同行。親日家で日本人ライダーの面倒も見てくれるライダーだ。2015年は多くのスウェーデンライダーとの参戦を計画していると言う。

エンデューロやクロスカントリー、SSERなどで活躍中の前田啓介選手は、AXCR初参戦ながらも見事MOTO部門で優勝。最終LEGは後輪がバーストしながらも無事フィニッシュ。

ゴール後は地元の修理屋で適当なタイヤを装着してリエゾンを帰還した。ショップ『5D』の代表を勤めており「お客さんに魅力を伝えるためにも、まずは自分で参戦してみました。ラリーは自身を振り返ることができるのがいいですね」と話す。

大会初日にして最難関!?
タイの湿地帯が選手を待ち構える

2014年は日本人11名、タイ人1名、カンボジア人3名、スウェーデン人1名のライダーが参戦した。マシンの内訳はヤマハ5台、KTM5台、ホンダ3台、フサベル2台、ハスクバーナ1台。それぞれビッグタンクやマップホルダー、トリップメーターを装着する以外は、一般的なオフロードマシンだ。

ラリー競技の性格上、長距離SS走行や移動区間の長さから、450ccや500ccといった大排気量のメリットはあるものの、このラリーでは250ccでも十分完走できるため、マシン選びの自由度は非常に高いと言える。

それでは、ラリーの様子を日を追ってレポートしよう。

8月9日 LEG-0

スタートは世界有数のリゾートビーチで知られるパタヤから。都心部から少し離れたビラサーキットにて公式車検とブリーフィングを済ませ、いよいよスーパーSSが開始された。これは翌日のSS1のスタート順を決めるための短いSSだが、競技方式はラリーそのもの。ライダーの緊張感も高まっていく。その後、一同は一旦ホテルに戻り、夜はパタヤのウォーキングストリートでセレモニースタートが行なわれた。大勢の観光客が注目するなか、選手たちはさっそうとスタートゲートをくぐっていった。

8月10日 LEG-1

この日はパタヤからサケオまでの403.1kmという設定で、SS1は193.5km。初日にして大会中最難関となった。道幅が狭く、ところどころにギャップや溝、水たまりやスタックしそうな沼地などがライダーを待ち構えている。4輪のスタック車も続出した。またプランテーションや田園は美しい景色ではあるが、集中が途切れると方向感覚を失いがち。ライダーの中には1時間以上も村の中を迷った選手もいた。トップは前田啓介選手、2位に池町佳生選手、3位に江連忠男選手と、『FB JAPAN』チームが上位を占めた。

タイ、カンボジア、どこの村でも熱烈な歓迎を受けた。大歓声の中を駆け巡る快感と喜びはなかなか味わえない。

ヘルメットごしに声援を受けながら走る感動は一生忘れられない! そして純真な国民性なのか、困ったときにも多くの人が助けてくれようとする。

8月11日 LEG-2

タイ東部のアランヤプラセートを起点としたループコースで、総距離は335.95km。そのうちSS2は239.84km。前日同様のプランテーションや狭い熱帯雨林、ウッズなど変化に富んだコースでライダーを飽きさせない。トップは前日同様前田選手で、僅差で2位に入ったのはTouch Thach選手、3位に江連選手。池町選手のマシンはエンジン不調をきたしてしまい、SS1ゴール後ホテルに戻ってからもシムを削るなど懸命の復旧作業に見舞われた。この日の夜もホテルに戻ってから食事の時間も惜しみ、長時間整備に追われる池町選手の姿があった。

8月12日 LEG-3

全選手揃ってのコンボイ走行から始まり、カンボジアとの国境の町ポイペットに向かう。国境を超えると街の様相がガラリと変わる。走行車線も左から右へ変わるため、咄嗟の判断で右に避ける習慣が必要になるなど、運転にも気をつけなくてはならない。またビザの携行も必要。通貨はタイバーツからUSドルへ。これら事前の準備も、競技者にとって必要な要素だ。SS3(171.67km)は固く締まったハードパックで、地平線が見えるほどの直線が続く超高速コース。ところどころに長年かけてえぐられた大きな穴やギャップが点在しているので、相当気をつけなくてはいけない。SSをゴールした後に選手を待ち構えていたのが、アンコールワットだ。特別な許可を得て、大勢の観光客がいる敷地内を2輪、4輪が走る姿は圧巻(リエゾンなので速度制限は遵守する)。

大会3日目、カンボジアの世界遺産アンコールワットへ到着。突如現れる荘厳な建造物に心が湧き上がる。もちろん正式な走行許可を得ているので、リエゾンながら堂々と走行することができる。

欧米や中国の観光客からの注目度も極めて高く、冒険者になった気分だ。

選手たちも壮大な世界遺産を楽しむことができた。この日のトップは見事マシン不調をはねとばし、気を吐いた池町選手だったが、各車に装着されたGPSが不調で速度制限地帯でのコントロールが不可能となり、残念ながらすべてキャンセルとなってしまった。

(次回レポートに続く)

アジアクロスカントリーラリー2014 ルートマップ

AXCR2014はタイのビーチリゾート地として知られるパタヤからスタート。大会初日は市街地からやや離れたビラサーキットで公式車検と、LEG-1のスタート順を決めるためのスーパーSSを開催。LEG-1はパタヤからサケオまでの403.1kmのうち193.5kmがSS1としてタイムを計測。途中99km地点にPCによるサポート(ガソリン補給など)を受ける。LEG-2は385.95kmのうち239.84kmがSS2。LEG-3はカンボジア国境をコンボイで超え、171.67kmのSS3(後にGPSのシステム障害によりキャンセル)が行われ、世界遺産のアンコールワットのあるシェムリアップでゴール。LEG-4はSS4前半が安全上の問題でキャンセルとなり76.36kmに。最長のLEG-5は423.04kmのうち、SS5が206kmと長丁場。途中PCポイントがなく、ライダーはガソリンを現地(村)で購入した。最終日のLEG-6は197.02kmのうち51.02kmのSS6を終え、首都プノンペンの街中をコンボイで走行。セレモニアルフィニッシュを果たし、約2,000kmの全行程を終えた。

雨期にも関わらず晴天が続いたが、コースの至るところには大きな水たまりや川を渡ることもしばしば。国内外のカメラマン、TVクルーが待ち構えているので、豪快に水しぶきをあげて走破!

第20回 アジアクロスカントリーラリー2015
開催期間 2015年8月8日~14日  最新情報はコチラをチェック!>>

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