モトクロスライダー辻 健二郎が2013年、AMA-SXに参戦! Vol.07

掲載日:2012年12月10日 ツジケンAMA-SX参戦記    

文/辻 健二郎

モトクロスライダー辻 健二郎が2013年、AMA-SXに参戦! Vol.07

アメリカに渡った辻選手は、まず旧知の間柄であるジム・ホリー宅にステイし、現地でお世話になる人たちへ挨拶を済ませました。ジムさん宅では時差ボケを解消する為、軽いサイクリングなどで徐々に身体を現地に馴染ませ、今回、いよいよ待ちに待ったバイクライドです!

バイクに乗るため大移動
ローカルレースにもいきなり出たよ!

いよいよバイクに乗る為、マシンを貸してもらうジェフのいる モントレー に移動です。ジェフはホンダのテストライダーをしていて、以前一緒にテストをした仲で友人です。今回、オレのSX参戦計画に非常に強く賛成してくれて、協力を申し出てくれたのです。ジェフは現在、モトクロススクールを行なっていて、本格的なステイも練習もジェフの所で、と考えています。

 

ジムさんの所からモントレーは500km弱なので、アメリカではクルマで4、5時間というところです。移動の足にハイウェイバスを経験したかったのですが、時間と荷物のオーバーチャージなどを考えたら、レンタカーを借りて目的地で乗り捨てるプランが一番良かったので、今回はクルマを自分で運転しての移動にしました。

 

道中は、海岸沿いから山道までバリエーション豊富なロケーションを走り、いかにも“アメリカ!”な景色を楽しみながらモントレーに着きました。到着してからは、ジェフと一緒に夕飯を食べに出て、今後の予定など色々な話しを。その晩はバイクに乗る為の準備をして、明日からはライディングが出来ると思うとワクワク興奮です。やはりオレは根っからのライダーですね。

 

ところが当日、450ccマシンがあると言われていたのですが、250ccしか用意がなく、仕方がなくそれで練習をする事になりました。少し残念でしたが排気量が小さい分、コーナースピードを上げる練習に良いので気持ちを切り替えて、Go!

 

練習は、いつもジェフが『MXCLINIC』で使用しているコース、“MX408”へ行く事に。んっ?! 日本にも同じ名前のコースがありますね。ウエストウッドさんの所(編注:千葉県龍ケ崎に、まったく同名のモトクロスコースがある)。昔、ここのコースでスクールさせてもらった事もあったので、親近感を覚えます。

 

早速、走り始めてみると、初めてのコースなどでレイアウトがまだわかりません。少しゆっくり走り下見をしていると、コースフラッガ-に、黒旗とコースから出て行け、の合図。そうでした。ここのトラックは、ジャンプが大きなセクションやハイスピードな箇所がある割にはコース幅が狭いので、レベルに応じたクラス分けをしっかりとするんです。しかも、フラッガーの判断で「こいつ遅いなっ」と睨まれると、オレに出したような合図をします。言われてあまりいい気はしませんが、レベルをしっかり分ける事で事故を防ぎ、みんなが気持良く走る為なので、素晴らしいシステムです。それで、知らないバイク、知らないコースでいきなり飛ばすのは怖いし危ないので、「いかにもアクセル開けてますよ!」って感じを出すためにわざと低いギアで全周を引っ張り倒しました(編注:ひとつのギアで吹け切るまでエンジンを回す事を“引っ張る”と言う)。これで開けっぷりがよく見えたのか、フラッガーはもう「出て行け」とは言いませんでした。

 

しかし、久しぶりのライディング&少ししくたびれているバイク。すべてを確かめながら走っているので、攻め切れないし、スムーズさが足りません。軽快に走れていないから他のライダーに抜かれる事も多く、内心は飛ばしたいのですが、そこは焦らずに、自分のペースで走り込む事に専念しました。いや、しかし。わがままを言わせてもらうと、マシンのセッティングが好みでないです。空燃比の設定が、燃料が薄くて音は元気でも走らない。多分、好みの問題ではないレベルだと思うのです。そこで、燃料のマップを変更してもらいました。変更してからは最後のセッションしか走ること出来なかったのですが、これが具合良く走るようになり、もっと早くに変えればよかったです。しかし、この日の練習は早々に終了。コースは14時でクローズドになり、夕方からはレースがあるのです。このレース、オレは、初めから出るつもりは無い、と周囲には話していましたが、ジェフは「your choice」と言う割にしつこく出させようとします。それに、他の人たちも「いいじゃんいいじゃん、練習になるから出なよ~」みたいなノリで誘って来ます。さすが、アメリカン! もっとも、オレも朝から乗ってた割には疲れていないし、正直、乗り足りなかったので、“じゃあ、ここは勢いつける為にイッときますか~”というノリで出ることにしました(笑)。

 

レースの出走クラスはPro250。ところがこのクラス、エントリーは3台?! さては人が少ないから「出ろ出ろ」言ってたんですね~。まあ、3台しかいないので、どうやっても3位は確定ですけど。もちろん3位にはなりたくありません。レースフォーマットは2ヒート制で、いざスタートしてみると、意外と他の2台はコーナーの突っ込みが甘く、そこでインを挿してみました。そうしたら、そこに深い泥があるじゃないですか! 滑って転んでしまいました……。これで3位確定です。しかも単独走行での。やっちまいましたね。次のヒートでは転倒に気を付けて慎重に走行。でも、目の前に1位がいたらアクセル開けますよね。前走車が射程内に収まってアタック開始です。マシンがくたびれているのでストレートやジャンプでは前のライダーより走りませんが、コーナーは攻められるのでガンガン突っ込み、プッシュして抜きました。「やはりトップは気分いいよね~」って思ったら、知らないライダー(オレ)に抜かれたローカルライダー、ちょっと怒ったのか、結構、際どい寄せをしてきました。オレ、“かちんっ”です。その後3周は、抜きつ抜かれつのバトル。しかし、オレが集中力を完全に使い切ってしまい、バトル終了。フィニッシュジャンプでひねり倒してゴールする前のライダーを見ながら、オレもゴール。単純に勝負に負けたので、内心ちょっと不愉快ではあったのですがパッドックに戻ったら、あのフラッガーのオッチャンがレースアナウンスしてる途中なのに走り寄って来て、「いいレースだった!!」とだけ言って走り去って行きました。そうしたら、「出ろ出ろ」と言っていた人たちも「お前が一番速く見えた」とか、「お前のバイクはエンジンがイケてない! 良いエンジンだったらイケる」とかお褒めの言葉か慰めの言葉かは微妙ですけど皆が声をかけてきて、何かここの空間はモトクロスをとても楽しんでいる感じがして、今までの自分のスタイルとは大きく違いを感じました。

 

こんなノリで、アメリカでのライディング初日はあっという間に終了。明日からも楽しみです。

 

<続く>

ツジケンの“ジムさん宅でのヒトコマ

今回、ジムさんの所には10日間位の滞在です。トレーニングと知人への挨拶の他、ジムさんの手伝いもしました。ちょうど渡米した時に、ジムさんが持ち家のリフォームを開始したところだったので、その手伝いをする事に。こうすることで、ステイ費をディスカウントしてもらえるからです。実際には、仕事としてお金を受け取る事はできないので(就労ビザが無い為)、手伝った分をステイ費から差し引いてもらう、家事手伝いみたいな感じですかね。

 

とは言ってもオレに特別な技術は無いので、掃除と改装に必要な解体などの雑用をやります。初めてアメリカに来た時にも、同じような手伝いをしました。その時は、すこし高い足場にいるジムさんに向けて、スコップでセメントを投げ上げる作業。失敗してこぼしてしまった時に、ハイテンションで、「タケシやコージもやっていたぞ!! YEAH~!!」って喜んで笑っていたジムさんを思い出しました(編注:小池田猛&大河原功次)。

 

今回は、庭掃除です。結構たくさんの木の枝が散乱している庭です。大きな枝も小さな枝もバケツに入れる為に細かく切り刻み、最後にゴミ箱に入れる。作業としては単純でただ切っていてもつまらないので、いかに無駄を省いて動き、スムーズに掃除を進められるかを考えながらやり方を変えて作業を楽しみました。でもオレ、クモが大の苦手なので草や枝の中にたくさんいるのを見て、正直ビビってしまいました。

 

そこに、ジムさんが見に来ました。作業中気にかけてもらえるのは嬉しいのですが、「おい、ツジMOTO(これはオレのニックネームで、ツジ&MOTOCROSSの略です)、まだ終わらないのか!!」ってニヤニヤしながら近付いて来て、「こうやって切るんだ」って言うから、カッターを渡したら、100m走みたいな勢いで切り始めました。案の定、100mくらいで止まって、「どうだ? 速いだろ! JIM SAN STRONGNE~!!」って、爆発しそうなハイテンションでオレを持ち上げて「YEAH~!!!!」って叫びながらグルグルと振り回すいつものルーティーン……。

 

おれ36才で、ジムさん50才過ぎですよ。こんな大人たち、なかなかいないでしょ?! ハハハッ! その後、集中して作業を終わらせ、報告に行くと、「う~ん、GOOD! 早いね~!!」とのお返事。ジムさん宅ではいつもこんな感じで、朝から寝るまで、エネルギッシュでユニークな空間を共にしました。

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プロフィール

辻 健二郎

辻 健二郎

1975年8月8日 山口県徳山市(現 周南市)生まれ

父親の影響で3歳の時にモンキー(ホンダ)を緑地公園で乗せてもらったのが初ライド。週末は、家族みんなが父親のモトクロス練習&レースについて行く。そんな環境下、行った先で山の中を草木や泥にまみれて遊ぶのが日常だった。これが彼のバイクライフの原点になる。自己評価は、ポジティブに捉えると真面目で実直と言われるが、見方を変えれば頑固で自分を曲げない性格、との事。不器用だからスムーズに事が進まないが、この性格を理解してくれる周りに支えられ、モトクロス道を進んで来ている。大好きなボブ・マリーの曲、"JAMMIN'"から名前を取ったバイク仲間との倶楽部も活動中。何事も「enjoy!」が信条。

 

なお、随時申し込みがあれば個別のスクールを実施しているので、「ツジケンに教わりたい」と思ったライダーはぜひ問い合わせて欲しい。

【モトクロス塾】

 

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