モトクロスライダー辻 健二郎が2013年、AMA-SXに参戦! Vol.06

掲載日:2012年10月26日 ツジケンAMA-SX参戦記    

文/辻 健二郎

モトクロスライダー辻 健二郎が2013年、AMA-SXに参戦! Vol.06

前回までに先に船便で出す荷物をまとめて送り、ビザや航空券など書類を揃え渡米の準備を済ませた辻 健二郎選手。特殊なスポーツをするのに大事な傷害保険の加入も済ませ、準備万端。日本での最後の晩は愛猫に寂しく振られ、すこし傷心ですが、今回はいよいよ日本を飛び出し、彼の地で活動を開始します。

いよいよアメリカ上陸
ライディング前の準備も大仕事

さあいよいよ出発です! 空港に着いてカウンターで荷物を預ける時、事前に計算してオーバーチャージを払うつもりでいたのですが、今回は何も無かったです。いつもだったら、かたくなに「これだけのオーバーだから追加料金払うか荷物を減らすか?」みたいな感じになるのに、なんでだろうね~、ってカミさんと喜びました。

 

機内では、ちょっと無神経なお隣さんに気を遣いながら映画を観ていたら、前日に仕込んだ時差ボケ対策の効果がまったく現れず、眠らずに映画を観続けてしまいました。ロサンゼルスに着く頃になってようやく眠気が襲ってきましたが、時既に遅しですね。入国審査と荷物検査を終えたら、ステイ先のジムさんに電話して「今、到着してこれからFLYAWAY(空港間を結ぶバス)に乗るからVan Nuysに迎えに来てください」とお願いしました。その後、なぜかジムさん宅に着く前に野球観戦に行ったり1日で7回も食事を摂ってしまったり、ヘンテコな苦労も。床に就く頃には、そうとうグッタリしていました。

 

しかし、翌朝目覚めてみると、前日の調子の悪さは完全にどこかに去っていました。食べ過ぎでおかしくなった身体を動かして、「汗を流したい!!」というテンションもぐんぐん上がってきています。今回の渡米には、トレーニングの為に日本でいつも使用しているロードバイク(自転車)を運んできたので、まずはこれを使って身体を動かす事にしました。実は今までランニングに時間を割く方が圧倒的に多く、走るのも速い方だったので苦ではありませんでした。足腰を鍛える為にランニングは良く、自分のライディングを支える重要な軸になっている、と考えていました。ところが、ここ2~3年は足首や膝に故障を抱える事が増え、ロードバイクに乗る時間の方が多くなりました。身体作りのメインは、今では完全に自転車です。モトクロスが盛んなアメリカとヨーロッパのプロライダーの多くも、ロードバイクを練習メニューに取り込んでいる、と昔から聞いていたので、それを参考にもしたのですが、その効果と重要さを最近になって更に深く感じ取る事ができるようになりました。ステイしているジムさんの家の近くには、ちょうどいい感じにアップダウンが続く道があるのでそこを走り、途中、周辺を見渡せる小高い山を上ったりしていたら、午後からは前日と同じ酷い時差ボケが出てしまい、ダウン。ダメですね、オレ。昔、TK(勝谷武史。編注:元ライダーで、2012年は成田亮のトレーナーとして、彼の連勝に貢献している。)のオーストラリアの家(編注:彼の一家は、モトクロスのトレーニングを積むために移住した。)にトレーニングに行った時、「まあまあ。初めは動くのは程々にして我慢しておかないと、体調崩すよ」と言われたのを、この時つくづく痛感しました。

 

ここで調子を崩してしまいましたが、そのお陰なのか結果的にはいい感じに疲れたのか、その夜はぐっすり眠れました。時差ボケで眠れないなんて事はまったくありませんでした。ただ、その後も昼間の調子の悪さを数日間引きずってしまい、これには閉口しました。しかし貴重な時間を「ボーッ」と過ごすわけにはいかないので、トレーニング以外の活動も開始する為、なんとか生活リズムを立て直しました。

 

復帰第一弾は、アメリカでお世話になる方たちに、挨拶に行く事にしました。まずは、USショーワです。電話では話をした事があるのですが、直接の面識はまだないので緊張しながら会社に到着。お世話になるアメリカ駐在の方は、オレが全日本モトクロスでレースを始めた頃にファクトリーの仕事をしていて、「お~っ」と声が出る憧れのライダーの担当。途端に、自分の中で時間がその頃に戻ってしまい、いちファンのように話をしてしまいました。渡米中、しっかりとケアをして頂けるとお話をいただけたので、非常に心強いです。

 

次は、USホンダに挨拶に行きました。先方の担当は、オレがアメリカに来た時は必ず挨拶に行っている日本の方で、自身も週末には友達とライディングを楽しんでいる、モトクロスフリークです。ここでは、日本に比べるとアメリカはダートバイクに乗って遊んでいる人が本当に多いと感じる話や、アメリカのレース業界の現状などを聞きました。アメリカ経済から受ける景気の動向で、昔に比べるとモトクロス業界でも少し落ち込みが見られる、との事。しかし、その中でスーパークロスだけはどのモータースポーツよりも盛り上がりが高く、その人気ぶりはまったく変わっていない、という話。確かに、2012年の開幕戦アナハイムは「あんなでかい祭り初めて観たっ」て感じを受けたし、数年前に観たときより更にパワーアップしているように感じました。

 

USヨシムラさんにも挨拶に伺いました。ここには、モンマさんという人物がいて、彼の事もマフラーの件でお世話になったりと昔からお付き合いがあるのに、まだ会った事がありませんでした。この時は、ジムさんも「ご飯に付き合うよっ」と、一緒に行く事に。「多分、あの大きな人だろ! 知ってるよ」ってジムさん。片や、モンマさんも「ジムに逢うのは久しぶりだな~」、っと面識があるよう。コリアンBBQ屋でご飯を食べながら、今の彼の仕事や携わったライダーの話など興味深い話があれこれと飛び出して、時間が経つのがとても速かったです。これで予定していた挨拶まわりは終わり、いよいよバイクに乗るステップになりましたよ! 楽しみです!

 

<続く>

ツジケンの“ジムさんって、だ~れ?”

今回の渡米トレーニングでステイさせていただいているお宅のご主で、「ジム・ホリー」さんと言います。元プロライダーで、1984年くらいに、US YAMAHA FACTORYのライダーでした。日本には「ジャパンスーパークロス」の招待で来日していて、当時、オレにとってはテレビの中の人でした。その後もレースを続け、アリーナクロスのチャンピオンにもなっています。アクションジャンプをキメるライダーとしても有名で、その派手なジャンプでUSバイク雑誌の表紙を飾った事もある、当時では珍しいタレント性も高かったライダーです。

 

彼は、現役時代からその傍らで、海外のライダーがアメリカで武者修行できるよう、自分の家にステイさせながらライディングトレーニングもサポートしてきました。日本人ライダーも、かなりの人がお世話になっています。昔で言えば、庄司さん(編注:庄司 覚。1983年の全日本チャンピオン。)、博之さん(編注:佐々木博之。東北出身のライダーで地元SUGOでは当時敵無しだった。)、大河原さん(編注:大河原功次。元ヤマハファクトリーライダー。)。現役組では、小池田(編注:小池田猛。2005年のチャンピオン、現在GNCCライダー。)や亮(編注:成田亮。現役ホンダファクトリーライダー。2012年度、ランキングトップ。)と、わかる名前だけでも有力者だらけで、その他にもオレみたいなMXフリークがたくさんお世話になっています。

 

現在は、Supercross.comの「live」でインタビュアーもしています。滑舌のいいしゃべりと気持ちのいいハイテンションで、素晴らしいインタビューをしています。その他にも、アメリカ人らしく(?)スタントマンの仕事をしたりと、たくさんの仕事を持っています。いつもエネルギッシュに動いていて、一緒に居るととても元気になりますね。人によっては温度差を感じる事もあるようですが、オレはマイペースでスローな性格なので、「中和」されてちょうどいい感じです。言葉や経歴だけでは収まりきらない、人間味の深いアメリカ人です。アメリカでの親みたいな感覚ですね。

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プロフィール

辻 健二郎

辻 健二郎

1975年8月8日 山口県徳山市(現 周南市)生まれ

父親の影響で3歳の時にモンキー(ホンダ)を緑地公園で乗せてもらったのが初ライド。週末は、家族みんなが父親のモトクロス練習&レースについて行く。そんな環境下、行った先で山の中を草木や泥にまみれて遊ぶのが日常だった。これが彼のバイクライフの原点になる。自己評価は、ポジティブに捉えると真面目で実直と言われるが、見方を変えれば頑固で自分を曲げない性格、との事。不器用だからスムーズに事が進まないが、この性格を理解してくれる周りに支えられ、モトクロス道を進んで来ている。大好きなボブ・マリーの曲、"JAMMIN'"から名前を取ったバイク仲間との倶楽部も活動中。何事も「enjoy!」が信条。

 

なお、随時申し込みがあれば個別のスクールを実施しているので、「ツジケンに教わりたい」と思ったライダーはぜひ問い合わせて欲しい。

【モトクロス塾】

 

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