モトクロスライダー辻 健二郎が2013年、AMA-SXに参戦! Vol.04

掲載日:2012年09月07日 ツジケンAMA-SX参戦記    

文/辻 健二郎

モトクロスライダー辻 健二郎が2013年、AMA-SXに参戦! Vol.04

長年、日本のモトクロスシーンで活躍をしてきた辻 健二郎選手。その彼が、なんと2013年にアメリカのモトクロスレース、AMA-SX(エーエムエー・スーパークロス)に参戦するという。ダートライドでは、それに至った彼の心境や、そこに向けての活動、そして2013年の活躍まで、その生き様を追いかけてみたいと思う。彼の長年の夢は、いったいどんな結末を迎えるのだろうか……。

いよいよ渡米に向けて準備開始
ここでも多くの人たちのサポートを感じる

今回は、いよいよアメリカで活動するにあたっての準備について話そうと思います。これまでに何度も行っているUSトレーニングの時とは違って、新しい事に多くトライしたので新鮮な経験ばかりでした。

 

まず、今までのトレーニングなら1、2か月で戻ってくるので、長期滞在に必要なビザは取得しませんでしたが、今回はそうはいきません。レースをするのが目的で、必然的にアメリカをベースにするので、長期滞在は必須です。しかし、ビザ無しだと90日以内に日本に戻ってこなければ(アメリカを出国しないと)不法滞在扱いになります。一度これを犯してしまったら、スーパークロスはおろか、再度アメリカに入国する事すら難しくなる筈です。

 

そこで、まずビザの事についてものすごく調べました。自分で出来る事は自分でやりたいと思っているので、まずはトライです。

 

いや~、しかし。

 

調べれば調べるほどに、オレがやろうとしている事は簡単にはいかなさそうです。自分でやれなくはないのでしょうが、時間をかなり使ってしまいそうなので、知人の東野君(フリースタイルモトクロスライダー)に相談してみました。彼は現在アメリカに渡っていて、X Gamesなどで活躍中です(編注:2012年モトXフリースタイル部門で、なんとゴールドメダル!)。彼の実体験としても、同じようにビザに絡む案件は大きなハードルになった、と聞いていたからです。そんな東野君からは、すぐにアメリカの弁護士を紹介してもらえたので、さっそく連絡をしてみました。その弁護士さんは日系だから日本語も話せるし、オートバイの事も知っている人なのでとても助かりました。ひとまず、彼に目的と計画を伝え、実際にアメリカで会って話す事になりました。

 

次は荷物の問題です。ワークス所属やモトロマン(セキレーシングモトロマン:ホンダサテライトチーム)の時は恵まれた環境下だったので、渡米に際し準備も少なかったのですが、今回は初めてアメリカにトレーニングに行った時のように、バイクパーツの準備はとても多い。

 

そうなんです! 初めてアメリカに行った時は、預けるバッグ2個と機内持ち込みのバッグ、どちらもすごく大きいサイズで、重たい物をめいいっぱい詰め込んで渡りました。多分、総重量100キロは超えていたと思いますね、アレは。

 

空港のカウンターで「それ預けたほうがいいんじゃない?」って聞かれたけど、「とても大切な物だから手荷物で持っていくよ」って涼しい顔して重たい荷物を機内に持ち込みました。9.11テロよりも遥か前だったから、まだ検査も甘かったようです。今では考えられないですね。当時はフロントサスペンションも飛行機で持って行けたけど、今はまず無理でしょう。

 

という事で、さてどうするか。そこで今回は、長年お付き合いさせていただいているSHOWAさんにサスペンションの貸与サポートと現地でのケアを検討していただく為、会社を訪問してきました。事前に計画や目的などの詳細を伝えていたので、ミーティングでは即答で非常に心強いサポート内容を提案していただき、かなりハイテンションになりました!

 

他、必要な物としてタイヤとメンテナンスパーツは、日本から送る事にしました。タイヤはブリヂストンさんにサポートをしていただき、パーツは、昨年ケガでレースを走れなかった為、用意していたレース用スペアパーツが残っていたので、それを一緒に梱包しました。

 

ここで大事なものを忘れていました。シートです! 足の短いオレは、あんこ抜きのスペシャルシートをKING OF SEAT NOGUCHIさんに作っていただいているのです(編注:野口装美の事)。すぐに連絡を取り、使い倒したシートをリフレッシュしてもらい、これも荷物に入れて梱包完了!! 輸送には船を使うので時間はかかるけど、アメリカで新しい物を用意するよりも経済的だし、現地での活動期間中に物が無くて時間をロスするような事がないように、と考えています。

 

この輸送についても自分で色々と調べましたが、結果的にやはりここでも知人のBOSSレーシングの元木くん(編注:元木龍幸。元モトクロスプロライダー)、ゴンドランドの田中さん(編注:ゴンドランド ジャパン株式会社)、ドリーム高浜の金原さん(編注:Honda DREAM 高浜)にお世話になり、非常にスムーズに事が運びました。

 

荷物の準備/発送と、自分で出来る事は自分でやろうと動いていましたが、ひとりの力ではとにかく進まず、それが人とのつながり・支えによってこれほどスムーズに進むのか、と再認識させられました。生かせていただいている環境・状況に強く感謝を感じます。みんな、多謝!

 

しかし、この荷物作業でちょっとポカミス。荷物の発送に必要なインボイス(入国時に必要な書類)を作る際に、正確な数量を記入しなくてはならず、梱包前にこれを確認しておらず、一度閉じた荷物をすべて開けて数えなおす事に。相当な時間と労力を使ってしまいました……。こんな無駄は二度としたくないから、次の発送時には失敗しないよ!

 

タイヤの多さが印象的。その他の荷物も大量。

タイヤの多さが印象的。その他の荷物も大量。

SHOWAさんのサポートによりサスペンションも送る事に。

SHOWAさんのサポートによりサスペンションも送る事に。

これがインボイス。とても細かく記入する必要がある。

これがインボイス。とても細かく記入する必要がある。

荷物を送る際の請求書。船便でもかなりの額になる。

荷物を送る際の請求書。船便でもかなりの額になる。

ビザについてはアメリカに渡ってから詰める事になった。

ビザについてはアメリカに渡ってから詰める事になった。

と、今回はここまで。次回は旅券の話などをしようと思います。

 

<続く>

ツジケンの“USレース参戦に便利なビザ”について

まず、オレも全く知らない事だったので、たくさんの知り合いに話を聞きいたり調べたりしました。

 

そこで多くの人に一番勧められたのは、“学生ビザでの長期滞在をする”というものでした。これについては、選択肢として考えていなかったのであまり詳しく調べていませんが、語学などの留学が対象のようです。「他国の学校に行くからビザをちょうだいっ」てものではなく、まずは学校を決めて、「この人がうちの学校の生徒になるよ」って形の書類を書いてもらう必要がある。そして、学校に行くわけだから受講料を払う。

 

入校してからも少し制約のようなものがあるようで、週に何時間は出席を義務付けられているとか、6か月以上学校に行かなければ自動的にビザが消滅するとか……。

 

自分のケースでは、やりたいことの幅を狭めてしまいそうなので、選択肢からは消えました。でも、みんなが勧めるように、このビザは良いと思います。確かアルバイト程度の労働も認められていたと思いますし、たくさんの人との交流もできそうなので、違った形での渡航目的だったら、自分もチョイスしたと思います。

 

自分で調べてトライしようと思ったのは、B-1(短期商用ビザ)というもので、スポーツ選手でも取得できて、プロアマ問わずに海外で賞金のかかった試合に参戦する事ができます。本来は、海外でしかできない仕事に就くために使われるビザらしく、日本に基盤があって、必ず帰国するという渡航で、就労してお金を稼ぐことは認められていません。滞在期間は、6か月以内で延長も申請内容次第で可能(最長10年)というものでした。

 

“とても良いものではないか”と思って、たくさん調べてみたのですが、スポーツ選手に関する内容が上記の程度ぐらいしか記載されておらず、もっと詳細を知りたかったので米国大使館に問い合わせてみました。しかし、それでも返事の内容は自分の求めていたような詳しいものではなかったので、知人の弁護士を紹介してもらいました。

 

そこで返ってきた答えは、「Oビザを申請するのはどうでしょうか?」というものでした。

 

このビザは、メジャーリーガー、サッカー選手、有名芸能人など、卓越した能力や腕のいいシェフなどに発行され、海外での活動、就労を許されるものです。しかし、これにはスポンサー(活動する基盤のようなもの)、サポートレター(この人は能力が高く私たちに必要です、というようなもの)、能力を証明するもの(雑誌等で掲載されている記事など)が必要で、自分の申請するものではないだろうとハナから考えてもいなかったものです。でも結果的に、これまでの経歴、これからチャレンジしていきたい事柄を伝えたら、Oビザ申請をするスタンスで、前に上げたスポンサーやサポートレターなどを集めていきましょう、という形になりました。それで、関連書類が集まった段階で申請するビザを再度検討しましょう、と。シンプルでポジティブな考え方だと感じました。

 

現在は、日本でのこれまでの雑誌記事を収集して、翻訳を行っています。スポンサーも現地で見つけられそうな状況で、チーム員として大きなトレーラーにも乗せてもらえそうな話が出できました。この話でビザ申請が好転するかもしれない、と思っています。とは言え、相手はアメリカなので話が変わる事も多いだろうし、そこは慎重に捉えていますが、非常に嬉しく光栄なことだと感謝しています。

こちらの記事もおすすめです

この記事に関連するキーワード

プロフィール

辻 健二郎

辻 健二郎

1975年8月8日 山口県徳山市(現 周南市)生まれ

父親の影響で3歳の時にモンキー(ホンダ)を緑地公園で乗せてもらったのが初ライド。週末は、家族みんなが父親のモトクロス練習&レースについて行く。そんな環境下、行った先で山の中を草木や泥にまみれて遊ぶのが日常だった。これが彼のバイクライフの原点になる。自己評価は、ポジティブに捉えると真面目で実直と言われるが、見方を変えれば頑固で自分を曲げない性格、との事。不器用だからスムーズに事が進まないが、この性格を理解してくれる周りに支えられ、モトクロス道を進んで来ている。大好きなボブ・マリーの曲、"JAMMIN'"から名前を取ったバイク仲間との倶楽部も活動中。何事も「enjoy!」が信条。

 

なお、随時申し込みがあれば個別のスクールを実施しているので、「ツジケンに教わりたい」と思ったライダーはぜひ問い合わせて欲しい。

【モトクロス塾】

 

新着記事

タグで検索