ドライバーの種類と使い方 その3

掲載日:2011年02月22日 バイク基本整備のイロハ工具の使い方実践    

ドライバーの種類と使い方 その3

押しながら回す、貫通ドライバーをハンマーで叩いて回すという手段をもってしてもビクともしないねじ。もう、手の力では回せないような強烈なねじを緩める最強の武器がインパクトドライバーです。使い慣れるまで若干のコツが必要ですが、覚えておくときっと役に立つはずです。

ハンマーで叩く前に
回転方向を確認しよう

プラスねじのねじ溝が崩れる原因の大半は、ねじ溝から刃先が逃げるカムアウト現象だと思いますが、ではなぜねじ溝が崩れるほどドライバーを当てているのでしょうか。答えは簡単、そのねじが全然緩まないからです。押しながら回すことにどれだけ専念しても、手でドライバーを回転させる力よりもねじの固着が強力なら、そのねじはドライバーでは回りません。にもかかわらず、諦め悪く執念深くドライバーで回そうとし続ければ、何かのきっかけ、例えばねじに対してドライバーの軸が傾くとか、押さえ込む力が若干抜けたとかの拍子に、ズルッとなめてしまうのです。

 

もちろん、ねじ溝とドライバーの刃先のサイズが合っていないとか、泥汚れが詰まっているとかいうのは論外ですが、旧車やポンコツ系バイクをいじっていると、どう頑張っても緩まないねじがあるのは事実です。

 

このような場面で頼りになるのが「インパクトドライバー」です。このドライバーは金属製のグリップとその内部に挿入された軸部がカム回転機構を介して接しています。そして、刃先をねじに押しつけながらグリップ後端をハンマーで打撃すると、カムに乗った軸部が強制的に回転させられる仕組みになっています。その威力は絶大で、手でどれだけ頑張っても緩まなかったねじを、いとも簡単に緩めてくれます。そのため、古いバイクを扱う際には、何本ものねじをはじめからインパクトドライバーで緩めてしまうという人もいるほどです。

 

ハンマーの打撃力を強力な回転力に変換するインパクトドライバーは、使い方にちょっとしたコツがあります。まず重要なポイントは、ねじに当てたドライバー本体を緩め方向に回しながらハンマーで叩くことです。グリップ後部をハンマーで叩くと、グリップが沈みつつ回転トルクを刃先に伝達します。そのさい、若干の無効区間(打撃力が回転力に変わらない区間)があるので、あらかじめドライバー本体に緩め方向の力を掛けておくことで、その無駄を省くというわけです。インパクトというだけあって、一瞬で大きな打撃力を与えることも大切です。そのためには、ハンマーはなるべく重いものを使った方が効率が上がります。プラスチックハンマーでどれだけ引っぱたいても緩みませんので念のため。

 

手で回そうにも、ボルスターにレンチを掛けようが回らないねじに対する最終攻撃が、インパクトドライバーの投入です。工具名の通り、同じトルクを与えるにも一気に立ち上がるトルクが有効に働きます。緩め方向にグリップを絞り上げておくのがコツです。

手で回そうにも、ボルスターにレンチを掛けようが回らないねじに対する最終攻撃が、インパクトドライバーの投入です。工具名の通り、同じトルクを与えるにも一気に立ち上がるトルクが有効に働きます。緩め方向にグリップを絞り上げておくのがコツです。

また、ドライバーに加えた打撃力が逃げないように、固着したねじがついたエンジンや車体などが簡単に動かないようにしておくことも大切です。ねじがドライバーの刃先に押されて下がってしまっては回転力が伝達できませんし、場合によってはグリッと回転した刃先でねじ溝をなめてしまう危険性もあります。さらに、インパクトドライバーが主に太いねじに対処することから、ドライバー先端のビットが#3しかない製品もありますから注意が必要です。固着したねじが#3なら良いのですが、場合によっては#2や#1といった細めのねじが固着していることだってあるのです。そう考えると、ビットは#1、#2、#3の3サイズが揃っていた方が安心といえるでしょう。

 

ここまでは、主に緩め用途に関して述べてきましたが、インパクトドライバーは締め付け作業にも使えます。回転の切り替えはグリップ先端のリングを操作して行う場合が多く、締め方向にセットして叩けば、高トルクで緩み止めをすることができます(バイクのメンテナンスでインパクト締めを行う場面は皆無ですが)。ちなみに、ドライバーの回転方向を知るには、地面や作業台にドライバーの刃先を当てて、グリップ後部に体重を掛けてみれば、セットされた方向にゆっくりと刃先が回るので分かります。万が一、セット方向を間違えて叩いたときのダメージを回避できるという実利もありますから、リングをセットした後、実際にねじを叩く前に回転方向を確かめる習慣を身につけると良いでしょう。

 

インパクトドライバーはほんの一瞬で仕事を終えますが、ねじ溝に強大な回転力を与えるため通常のドライバーよりビット先端の消耗は激しくなります。ビットは消耗品と考え、先端が鈍ってきたら交換することが、ねじ溝を傷めないための予防措置となります。

 

製品によってデザインなどは若干異なりますが、グリップ先端のリングを回すことで軸の回転方向を選択します。

製品によってデザインなどは若干異なりますが、グリップ先端のリングを回すことで軸の回転方向を選択します。

プラスドライバーを使う時は、まず第一にねじを押す力、次に強力な回転力が重要で、それでも緩まなければインパクトドライバーを活用することで、ねじ山が崩れてドライバーがまったく引っかからない、というトラブルも回避できることでしょう。

 

作業手順を見てみよう!

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