タンクボトムに穴をあけて凹みを直す編

掲載日:2010年02月23日 部位別メンテナンス外装系    

メンテナンス講座

鋭角に凹んだタンクも修理可能?しかもアルミタンク?
開かないけど「開き直って」修理にチャレンジ

レーシングマシンやカスタムマシンに多いアルミタンク。中古のアルミタンクを購入すると、それなりに凹部分が多く、ペイントする前にどのように修復したら良いのか? 悩んでしまうものである。あまりにも凹部分が多く、そもそものオリジナル形状とはまったくかけ離れているような場合は、ある程度で我慢して、パテ入れするのが効率の良い修復方法といえる。仮に、徹底的に修復したいのであれば、タンクスキンとボトムを分割し、当て金&ハンマーで形状を修正し、再度溶接して復旧させる方法もあるが、これはたやすい作業ではない。

 

それに対して、部分的に凹んでいる場合なら、以前リポートしたデントオーレ? や引っ張り出しも通用する。モトメンテナンス本誌でも過去に登場しているAC100V仕様の半自動アルゴン溶接機を利用すれば、引っ張り出し用のフック(アルミ板に穴あけしたもの)を溶接できるし、アルミハンダでもフックを固定することができる。

 

もっと簡単な方法が無いワケではない。仮に「タンクボトムへの穴あけ」を覚悟できるのなら、比較的容易に凹修理は可能だ。ここでは、その具体的な方法をリポートしているが、事実、折れ目が入った強烈な凹みも、比較的簡単に修復することができた。ただし、最終的には穴あけ部分を閉じる溶接作業が必要なので、そのあたりのケアの必要性を忘れずにいてほしい。実は今回、タンクボトムの形状次第では、溶接穴埋め時にネジ加工を施したパーツを溶接し、ガソリンを一気に抜きとるためのドレンを追加しようと思った。しかし、穴あけ部分がタンクの最低レベル付近ではなかったため、この構想は断念することにした。仮に、最低レベル付近に穴あけを行う場合は、このようなアイディアを盛り込むことで、ひとつの付加価値を得られることも忘れずにいてほしい。

 

最後に、スチール製のガソリンタンクなら鋼鈑に強度があるため心配いらないが、アルミタンクの場合は、スチールに対してマテリアル強度が低いので、凹み修正した部分には十分な注意が必要だ。具体的には、鈑金作業途中に発生する亀裂=クラックである。このクラックに気が付かずにペイントを施してしまうと、後々ガソリン漏れなどの重大トラブルが発生してしまうのだ。特に、折れ目が入っていたような個所には要注意だ。

作業手順を見てみよう!

タンクボトムに穴あけを行うが、今回はφ15mmのホールソーを利用した。ある程度の太さの棒が差し込めないと、鈑金ハンマーリングがしにくいからだ。

タンクボトムに穴あけを行うが、今回はφ15mmのホールソーを利用した。ある程度の太さの棒が差し込めないと、鈑金ハンマーリングがしにくいからだ。

 

凹みの正反対部分に穴あけが可能なら作業性は良いが、今回はタンク固定用のステーがあるため、それはできなかった。穴あけ個所は慎重に決定しよう。

凹みの正反対部分に穴あけが可能なら作業性は良いが、今回はタンク固定用のステーがあるため、それはできなかった。穴あけ個所は慎重に決定しよう。

 

ホールソーで穴あけを行うと切り粉以外はこのように取り除くことができる。作業後にはこの穴を溶接で閉じるため、溶接トーチが入る場所に穴あけする。

ホールソーで穴あけを行うと切り粉以外はこのように取り除くことができる。作業後にはこの穴を溶接で閉じるため、溶接トーチが入る場所に穴あけする。

 

L字型に曲がった棒を差し込み、できるだけ広範囲(折れ目部分全体)を受けられるようにしたかったが、穴位置の関係でそれはできなかった。

L字型に曲がった棒を差し込み、できるだけ広範囲(折れ目部分全体)を受けられるようにしたかったが、穴位置の関係でそれはできなかった。

 

仕方ないので直線の棒を用意し、先端部分のエッジをグラインダーで面取りして差し込んだ。エッジが鋭いとタンクを破って突き抜けてしまうことも。

仕方ないので直線の棒を用意し、先端部分のエッジをグラインダーで面取りして差し込んだ。エッジが鋭いとタンクを破って突き抜けてしまうことも。

 

毛布の上にタンクを置き、指先に伝わる感触で凹み部分を探り当て、その部分をハンマーで叩いて押し出す。一気に叩かず慎重に作業を進める。

毛布の上にタンクを置き、指先に伝わる感触で凹み部分を探り当て、その部分をハンマーで叩いて押し出す。一気に叩かず慎重に作業を進める。

 

折れ目の先端部分では? と思える個所を慎重に叩いた結果、このように凹みをある程度押し出すことができた。なかなかイイ感じである。

折れ目の先端部分では? と思える個所を慎重に叩いた結果、このように凹みをある程度押し出すことができた。なかなかイイ感じである。

 

押し棒を患部に当てた状態で、今度は外板側からハンマーで形状を修正していく。当て金(今回は当て棒)があれば、外側から叩いても凹みを直せる。

押し棒を患部に当てた状態で、今度は外板側からハンマーで形状を修正していく。当て金(今回は当て棒)があれば、外側から叩いても凹みを直せる。

 

折れ目部分が平面になったら、さらに当て棒を押し付けてハンマーリングし凹み全体を押し出すようにする。この際により太い押し棒があればベストだ。

折れ目部分が平面になったら、さらに当て棒を押し付けてハンマーリングし凹み全体を押し出すようにする。この際により太い押し棒があればベストだ。

 

折れ目つきで凹んでいたタンクエンドが、このように押し出されてオリジナル形状を取り戻しつつある。根気良く作業を進めることが大切だ。

折れ目つきで凹んでいたタンクエンドが、このように押し出されてオリジナル形状を取り戻しつつある。根気良く作業を進めることが大切だ。

 

ある程度の形状を取り戻したら、平ヤスリを横向きに持ち、ヤスリを前後させて表面を整える(この方法を目通しという)。削り過ぎに要注意。

ある程度の形状を取り戻したら、平ヤスリを横向きに持ち、ヤスリを前後させて表面を整える(この方法を目通しという)。削り過ぎに要注意。

 

かなりイイ感じに仕上がったが、やはり折れ目部分の修復は困難。これ以上押し戻しても逆に亀裂が入ってしまう。事実、そのような雰囲気が‥‥。

かなりイイ感じに仕上がったが、やはり折れ目部分の修復は困難。これ以上押し戻しても逆に亀裂が入ってしまう。事実、そのような雰囲気が‥‥。

 

タンクサイドの別の凹み=エクボを、デントオーレ?(デント俺の意味)で修復してみた。適当に曲げた棒をタンク内に挿入し患部を押し出してみた。

タンクサイドの別の凹み=エクボを、デントオーレ?(デント俺の意味)で修復してみた。適当に曲げた棒をタンク内に挿入し患部を押し出してみた。

 

アルミタンクだったこともあり、比較的簡単に押し出すことができた。オールペンが前提ならばペイントハクリ&ハンマーリングでさらに平面化できる。

アルミタンクだったこともあり、比較的簡単に押し出すことができた。オールペンが前提ならばペイントハクリ&ハンマーリングでさらに平面化できる。

 

今回はタンクボトムにφ15mmの穴あけをおこなったため、その部分を作業後に封じなくてはいけない。アルミ棒から削り出し、栓となるパーツを製作した。

今回はタンクボトムにφ15mmの穴あけをおこなったため、その部分を作業後に封じなくてはいけない。アルミ棒から削り出し、栓となるパーツを製作した。

 

穴あけした周辺のペイントは完全に取り除き、溶接前にきれいにしておく。剥離した部分はサンドペーパーや不織布シートで足付けし、表面を徹底的に磨くと良い。

穴あけした周辺のペイントは完全に取り除き、溶接前にきれいにしておく。剥離した部分はサンドペーパーや不織布シートで足付けし、表面を徹底的に磨くと良い。

 

栓をするパーツは平面ではなく、穴部分にピタリとハマルような段つき形状にしておくことをお勧めしたい。このようにすることで、溶接作業が楽になるのだ。

栓をするパーツは平面ではなく、穴部分にピタリとハマルような段つき形状にしておくことをお勧めしたい。このようにすることで、溶接作業が楽になるのだ。

 

今回の溶接作業はクラブ1.2FK(Tel.048-255-92899)の大平さんにお願いした。アルミに限らず溶接全般が得意な頼れる人だ。

今回の溶接作業はクラブ1.2FK(Tel.048-255-92899)の大平さんにお願いした。アルミに限らず溶接全般が得意な頼れる人だ。

 

折れ目が入った部分にトーチを当て、溶接棒を使わずに、まずは周辺にスパークを飛ばす。果たして、この作業にどのような意味があるのだろうか? 想像がつかないが‥‥。

折れ目が入った部分にトーチを当て、溶接棒を使わずに、まずは周辺にスパークを飛ばす。果たして、この作業にどのような意味があるのだろうか? 想像がつかないが‥‥。

 

溶接トーチで折れ目周辺にスパークを飛ばすことで、このようにクラック部分が明確になる。いきなり溶接せずにこのような処理を施すことで、確実な修復を行えるようになる。

溶接トーチで折れ目周辺にスパークを飛ばすことで、このようにクラック部分が明確になる。いきなり溶接せずにこのような処理を施すことで、確実な修復を行えるようになる。

 

クラックが入った部分を目掛けて溶接を行う。想像で溶接するのとそうでないのとでは、仕上がりにも違いが出るというものだ。確実な溶接で封=ガソリン漏れを防ぎたい。

クラックが入った部分を目掛けて溶接を行う。想像で溶接するのとそうでないのとでは、仕上がりにも違いが出るというものだ。確実な溶接で封=ガソリン漏れを防ぎたい。

 

折れ目の入った鈑金修理部分の溶接が完了。この後に、表面を平ヤスリで成形し、さらにオビタルサンダーで全体的な面出しを行えば、残すはペイントのみである。

折れ目の入った鈑金修理部分の溶接が完了。この後に、表面を平ヤスリで成形し、さらにオビタルサンダーで全体的な面出しを行えば、残すはペイントのみである。

 

当て棒を差し込むために穴あけした部分の穴閉じも完了。溶接ビードが実に美しい。ここまで作業を行えば、残すは漏れが無いか確認するのみである。その方法は‥‥。

当て棒を差し込むために穴あけした部分の穴閉じも完了。溶接ビードが実に美しい。ここまで作業を行えば、残すは漏れが無いか確認するのみである。その方法は‥‥。

 

今回は20リットルの空きペール缶を用意し、水を溜めてエア漏れチェックを行った。広い平面部分のエア漏れ確認を行う場合は、浴槽を利用するのが手っ取り早い。

今回は20リットルの空きペール缶を用意し、水を溜めてエア漏れチェックを行った。広い平面部分のエア漏れ確認を行う場合は、浴槽を利用するのが手っ取り早い。

 

タンクボトムの穴あけ部分、鈑金修理部分ともにエア漏れは無かった。フューエルフィラーのブリーザーから息を吹き込めば、漏れ確認を十分に行うことができる。

タンクボトムの穴あけ部分、鈑金修理部分ともにエア漏れは無かった。フューエルフィラーのブリーザーから息を吹き込めば、漏れ確認を十分に行うことができる。

 

このタイプのタンクキャップならエア漏れチェックは簡単だ。エアブリーザーが無い場合は、燃料コックを利用してエアーを吹き込むと良い。圧縮空気は高圧過ぎる。息で十分だ。

このタイプのタンクキャップならエア漏れチェックは簡単だ。エアブリーザーが無い場合は、燃料コックを利用してエアーを吹き込むと良い。圧縮空気は高圧過ぎる。息で十分だ。

   

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