冷却液(LLC)の交換

掲載日:2009年04月21日 部位別メンテナンスエンジン&キャブ    

メンテナンス講座

愛車のLLC交換
経路内のエア抜きがポイント

水冷エンジンの冷却に用いられるロングライフクーラント(LLC)は、エンジン各部を循環しながら温度の上昇と降下を繰り返し劣化が進行してしまう。そのままではLLCの汚れが経路にたまったり、ラジエターコアを詰まらせることもあるので、エンジンオイルと同じく定期交換が必要だ。

 

交換の要点は、古いLLCを抜いたら経路内をきれいに洗浄すること、冷却液として真水だけを入れないこと、そして作業後にはエア抜きを行うこと。この3点を基本に、ウォーターポンプからの液漏れやサーモスタットの点検を行う。夏場にオーバーヒートしがちな場合、ラジエターのコアに汚れが詰まって放熱効果が低下している場合もあり、洗浄剤の併用が効くことがある。

 

作業手順を見てみよう!

ラジエターキャップには冷却液経路に圧力を加えることで、沸点を上昇させる働きがある。

ラジエターキャップには冷却液経路に圧力を加えることで、沸点を上昇させる働きがある。

 

ゴムパッキンにひび割れが見られる時には、問答無用で交換する。同時に、年式の古い長期保管車では、ラジエターホースのゴムが劣化していることもあるので、予防のために交換したい。

ゴムパッキンにひび割れが見られる時には、問答無用で交換する。同時に、年式の古い長期保管車では、ラジエターホースのゴムが劣化していることもあるので、予防のために交換したい。

 

冷却液の交換で真水を用いると、冬季の凍結だけでなく、ウォーターポンプの回転軸のシール部分(メカニカルシール)の潤滑が不足して水漏れを起こす可能性がある。LLCには潤滑性能もあるので、交換時には必ずLLCを入れることが大切だ。

冷却液の交換で真水を用いると、冬季の凍結だけでなく、ウォーターポンプの回転軸のシール部分(メカニカルシール)の潤滑が不足して水漏れを起こす可能性がある。LLCには潤滑性能もあるので、交換時には必ずLLCを入れることが大切だ。

 

LLCの交換はエンジンが冷えた状態で行う。ラジエターキャップを外した後、フレームの一部を冷却系路として利用している車種の場合は、フレーム側にあるドレンボルトを緩める。

LLCの交換はエンジンが冷えた状態で行う。ラジエターキャップを外した後、フレームの一部を冷却系路として利用している車種の場合は、フレーム側にあるドレンボルトを緩める。

 

あらかじめ用意しておいたバットで冷却液を受ける。ラジエター内、ウォーターポンプ周辺のLLCが流れ出てくる。経路内が腐蝕したり、LLCが劣化していると、汚れた液体が出てくる。

あらかじめ用意しておいたバットで冷却液を受ける。ラジエター内、ウォーターポンプ周辺のLLCが流れ出てくる。経路内が腐蝕したり、LLCが劣化していると、汚れた液体が出てくる。

 

エンジン本体にもドレンボルトがある。こちらはシリンダーやサーモスタット周辺のLLCを排出する。ドレンボルトの位置や数は車種ごとに異なるので、作業前に確認すること。

エンジン本体にもドレンボルトがある。こちらはシリンダーやサーモスタット周辺のLLCを排出する。ドレンボルトの位置や数は車種ごとに異なるので、作業前に確認すること。

 

エンジンオイルのドレンボルトと同様に、冷却液のドレンボルトにもワッシャーを使用する。冷却系路は高温かつ高圧になるので、ワッシャーはできれば新品に交換したい。

エンジンオイルのドレンボルトと同様に、冷却液のドレンボルトにもワッシャーを使用する。冷却系路は高温かつ高圧になるので、ワッシャーはできれば新品に交換したい。

 

冷却系路から排出したLLCが著しく変色したり走行距離が多い、夏場に水温が上がりがちといった車両では、専用ケミカルを用いた冷却系路の洗浄が有効な場合がある。

冷却系路から排出したLLCが著しく変色したり走行距離が多い、夏場に水温が上がりがちといった車両では、専用ケミカルを用いた冷却系路の洗浄が有効な場合がある。

 

用品店で購入したこの洗浄剤は、冷却液量の5%を添加するタイプ。水道水と混合しながら、50ml(エンジン部の冷却液容量は1100ml)をラジエターキャップ部分から注入する。

用品店で購入したこの洗浄剤は、冷却液量の5%を添加するタイプ。水道水と混合しながら、50ml(エンジン部の冷却液容量は1100ml)をラジエターキャップ部分から注入する。

 

エンジンを始動し、10~20分暖機して洗浄剤を行き渡らせる。エンジン本体が熱くても、サーモスタットが開いてラジエターコアに洗浄液が回るまで暖機を続ける(自走しても良い)。

エンジンを始動し、10~20分暖機して洗浄剤を行き渡らせる。エンジン本体が熱くても、サーモスタットが開いてラジエターコアに洗浄液が回るまで暖機を続ける(自走しても良い)。

 

一方こちらはサイドカバー内にレイアウトされた冷却液のリザーバータンク。冷却液温と経路内圧力の増減に応じて、エンジン側のLLCがタンク内に出たり入ったりしている。

一方こちらはサイドカバー内にレイアウトされた冷却液のリザーバータンク。冷却液温と経路内圧力の増減に応じて、エンジン側のLLCがタンク内に出たり入ったりしている。

 

リザーバータンクを取り外し、内部のLLCを排出する。劣化したLLCが出入りすると、タンク内部が変色してしまうが、走行5000kmのこのVTでは、内部は新品同様の乳白色だった。

リザーバータンクを取り外し、内部のLLCを排出する。劣化したLLCが出入りすると、タンク内部が変色してしまうが、走行5000kmのこのVTでは、内部は新品同様の乳白色だった。

 

リザーバータンクには底に向かってゴムホースが刺さっている。エンジン内の冷却液はこのホースを通って行き来しているので、洗浄時に折れや破損がないことを確認しておく。

リザーバータンクには底に向かってゴムホースが刺さっている。エンジン内の冷却液はこのホースを通って行き来しているので、洗浄時に折れや破損がないことを確認しておく。

 

ワッシャーを再利用する場合、オイルストーンを使って表面の凹凸を平らにする。ワッシャーが柔らかくて変形が直らない時は、無理に修正しようとせず、新品パーツを購入した方が良い。

ワッシャーを再利用する場合、オイルストーンを使って表面の凹凸を平らにする。ワッシャーが柔らかくて変形が直らない時は、無理に修正しようとせず、新品パーツを購入した方が良い。

 

ドレンボルトを仮止めして、古いLLCをすすぎ出すための水を注入する。水が入ったら短時間だけエンジンを回し、ウォーターポンプで水を回してすすぎを進める。

ドレンボルトを仮止めして、古いLLCをすすぎ出すための水を注入する。水が入ったら短時間だけエンジンを回し、ウォーターポンプで水を回してすすぎを進める。

 

再びドレンボルトを外して水を捨てる。ドレンボルトを外したままでキャップ側から水を入れると、徐々に緑色のLLCの色が抜けて透明になる。こうなればすすぎは終了だ。

再びドレンボルトを外して水を捨てる。ドレンボルトを外したままでキャップ側から水を入れると、徐々に緑色のLLCの色が抜けて透明になる。こうなればすすぎは終了だ。

 

シリンダー側のドレンボルトも同様で、外したままで水を流し込んでやる。8~13で紹介している、洗浄剤を使わない交換作業なら、ボルトを締めた後に新しいLLCを注入する。

シリンダー側のドレンボルトも同様で、外したままで水を流し込んでやる。8~13で紹介している、洗浄剤を使わない交換作業なら、ボルトを締めた後に新しいLLCを注入する。

 

ドレンボルトを締めてリザーバータンクを復元したら、新しいLLCを注入する。今回は希釈不要の調製済みLLCを使用。ラジエターキャップが斜めに付くため、液面も斜めになってしまう。

ドレンボルトを締めてリザーバータンクを復元したら、新しいLLCを注入する。今回は希釈不要の調製済みLLCを使用。ラジエターキャップが斜めに付くため、液面も斜めになってしまう。

 

ラジエターキャップ部分で液量をいっぱいまで注入したら、リザーバータンクにも注入する。キャップ側だけ入れれば良いと誤解しているサンメカもいるようだが、こちらへの注入も必要だ。

ラジエターキャップ部分で液量をいっぱいまで注入したら、リザーバータンクにも注入する。キャップ側だけ入れれば良いと誤解しているサンメカもいるようだが、こちらへの注入も必要だ。

 

リザーバータンクの容量は約300ml。タンクからのホースはラジエターキャップの根元につながるので、日常の液量チェックでは液面がUPPERとLOWERの間にあるようにする。

リザーバータンクの容量は約300ml。タンクからのホースはラジエターキャップの根元につながるので、日常の液量チェックでは液面がUPPERとLOWERの間にあるようにする。

 

冷却系路に空気溜まりがあるとLLCの流れが悪くなるので、エア抜きを行う。方法は車種ごとに異なるが、VTの場合はラジエターキャップを外してエンジンを始動して、エアを排出する。

冷却系路に空気溜まりがあるとLLCの流れが悪くなるので、エア抜きを行う。方法は車種ごとに異なるが、VTの場合はラジエターキャップを外してエンジンを始動して、エアを排出する。

 

エアが排出されることでラジエターキャップ部の液面が低下するので、不足した分を追加してキャップを締める。車種によってはエア抜きようのブリーダーボルトを持つものもある。

エアが排出されることでラジエターキャップ部の液面が低下するので、不足した分を追加してキャップを締める。車種によってはエア抜きようのブリーダーボルトを持つものもある。

 

 

 

 

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