レンチの掛け替えが不要! ラチェットめがねで作業効率アップ

掲載日:2018年05月17日 メンテナンス    

写真・文/モトメンテナンス編集部  記事提供/モトメンテナンス編集部
※この記事は『モトメンテナンス vol.129』に掲載された内容を再編集したものです

ソケットを交換することで1本のハンドルで何通りにも使えるのがソケット工具、ラチェットハンドルの強みである。しかしながら、ソケット工具が進化してもメガネレンチやスパナなど「昔ながら」の工具が廃れないのは、ソケットにラチェットハンドルを差し込むことでどうしても厚みがかさばるソケット工具に対して、厚みが薄く狭い隙間での使い勝手に優れるためだ。

別の機会に紹介するが、リング部分のオフセットが少なく柄の長いメガネレンチは、狭い場所で強いトルクで締め付けられているボルトやナットを緩める場面ではソケット工具より使い勝手に優れることもある。

そんなメガネレンチの中でも、機能性の高さから多くのユーザーに愛用されているのがラチェットメガネレンチである。製品名と見た目どおり、6角または12角のメガネレンチにラチェット機構を組み込んだもので、一定角度で振ることで、レンチを着脱することなく連続的にボルトやナットを回せるのが使いやすさにつながっている。ラチェットハンドルのヘッドがソケットに差し込むための四角凸であるのに対して、メガネレンチはヘッドが貫通している。

回転方向を切り換えるレバーはヘッドの厚みに収まり、狭い場所での引っかかりや誤作動を防ぐ。12角のソケット部分の端にストップリングが見える。

日本、海外を含めて現在では数多くのメーカーがラチェットメガネレンチを製造しているが、登場した当初は常用される一軍工具というよりアイデア頼みのサブツールと見なされることが多く、実用面でも既存の工具に対して見劣りする面があったのは事実だった。

メガネ部分の外径、六角部の外側の肉厚はメガネレンチの使い勝手を左右する重要なポイントで、肉厚が厚ければ狭い場所で使いづらい。ラチェット機構を備える分、ラチェットメガネレンチのメガネ部分は外径が大きくかさばるのは避けられない。

だがスリムな仕上げにこだわりすぎれば、強度で見劣る製品になりかねない。相反する条件のせめぎ合いから、使えそうで使えない、早回しには使えるが本締めはメガネレンチにバトンタッチするような、中途半端な存在となるような時期もあった。

だがメガネレンチにラチェット機構を組み込むという根本的な発想と、それによる利便性の高さは大きな魅力で、コンパクトながら充分な強度を備え、さまざまな場面で使い勝手の良い製品が登場することで、プロの現場でも活用されるようになっているのが現状だ。

柄は中央部の窪みに指が添えやすく、薄い仕上げで握りやすいTONEの切替式ラチェットめがねレンチ。表面はピカピカの光沢めっきではなく、艶を抑えた梨地仕上げとしている。サイズは8、10、12、13、14、15、16、17、18、19、21、22、24mmの13種類で、製品番号は8mmの場合RMR-08となる。

ボルトへの接触部分が6角か12角か、回転方向の切り替えがレバー式か表裏転換式か、片側がスパナのコンビネーションタイプか両端がメガネか、メガネ部分が固定式か首振り式かなど、ラチェットメガネレンチはいくつもの種類に分類される。

ここで紹介するTONEの切換式ラチェットメガネレンチは、メガネ部分が12角で回転方向はレバーで切り換えるタイプ。作業時に握る柄に対してラチェットヘッド部分が若干上方、13°のオフセット角度が付けられているため、フラットタイプに比べて平面上に取り付けられたボルトを回しやすい。

さらに12角のソケット部分の端には溝が切られ、金属製のC形状のリングがセットされており、スタッドボルトに組み込まれたナットを回す際にメガネ部分が通り抜けるのを防いでくれる。このリングは一部が切れたC形状なので、ナットがここに掛かってもちょっと強く押せばリングが開き、メガネ部分を貫通させることはできる。ストップ機構と呼ばれるメカニズムはこのレンチ独特の個性で、使いやすさの向上に寄与している。

わずか13°のオフセット量でヘッド部分はちょっとしか持ち上がっていないように見えるが、この傾きによって平面上にあるボルトナットを回す際にも柄の下側に指が入る。工具を掛け替えることなくボルトナットを連続的に回せる快適性は、一度体験すると納得できる。ソケット工具のような拡張性はないが、ラチェット機構の利便性は魅力だ。

ラチェット機構やヘッド部分のサイズはどうかといえば、レバー切り換え式のラチェット機構はギアとストッパーが噛み合うカチカチ……というクリック感が明確で、錆び付いて固着したボルトナットを回すような使い方をしない限り、緩め始めや本締め作業に使用できる。

メガネ部分の外幅は14mmサイズを例に取れば、ラチェットメガネ27mmに対してTONE製の通常メガネは21mmと、ラチェット付きの方が6mm大きい。シビアな作業環境ではこのサイズ差が問題となることもあるだろうが、ひと昔前の製品と比較すれば断然コンパクトで、ほとんどの場面ではラチェット無しメガネと同等に使える。その上でラチェットの機能性は明らかに高く、レンチ本体を掛け替えずボルトナットを快適に回すことできる。

ソケットレンチの便利さを理解できて、メガネレンチは従来のラチェット無ししか使ったことがないなら、工具店などでラチェットメガネレンチに触れてみよう。ラチェットハンドル+ソケットの組み合わせより遙かに薄い機動性の高さと、作業効率の良さを実感できるはずだ。

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