ソケット工具の基準が「差込角」同じ差込角なら組み合わせは自由!!

掲載日:2018年05月10日 メンテナンス    

写真・文/モトメンテナンス編集部  記事提供/モトメンテナンス編集部
※この記事は『モトメンテナンス vol.126』に掲載された内容を再編集したものです

部品同士を固定するために、バイクのあらゆる部分で使われているボルトやナット。それらを緩めたり締めるための工具のひとつがソケット工具である。それ以前は、たとえば8mmと10mmと12mmと14mmのスパナにはそれぞれハンドルというか、これを扱うためのグリップがそれぞれ付いているのが当たり前だった。だがソケット工具であれば、8mmと10mm、12mm、14mmのソケットを回すための工具はラチェットハンドルが1本あればいい。100年ほど前にアメリカの工具メーカーが発想したこの考え方はとても合理的で世界中の工具メーカーが採用した。

ソケット工具が普及した現在ではさほど感動しないかも知れないが、「ソケット」と「ハンドル」を別々の工具に切り分けた発明は革命的で、当時のの工業界、産業界に旋風を巻き起こした。そして現在ではさまざまな形状のハンドルとソケット、数多くのアクセサリーが生み出され、ソケット工具の拡張性は無限大と言っても過言ではない。

ソケット工具が世界中のメカニックに使われている最大の理由は「互換性の高さ」である。AというメーカーのハンドルにBというメーカーのソケットが付かなければ、A社のハンドルを購入したユーザーはその先もずっとA社の製品しか使えず、ハンドルとソケットを差し替えて使えるソケット工具のメリットが限定されてしまう。

そうした不便を解消するため、ソケットとハンドルの差込角には世界中で統一された規格を用いている。この規格は差し込み部の四角断面の凸部の一辺の長さで表記され、その寸法は1/4インチ、3/8インチ、1/2インチ、3/4インチ、1インチが流通している。このうちバイクのメンテナンスで多用するのは1/4、3/8、1/2インチの3サイズである。そしてハンドルの凸とソケットの凹のサイズが同じであれば、工具メーカーに関わらず組み合わせることができるのがソケット工具の特徴だ。

つまりA社のハンドルにB社のエクステンションバーを差し込み、先端にC社のソケットを付けてボルトを回すことができるというわけ。この高い汎用性こそが、ソケット工具が多くのユーザーに愛用されいてる大きな理由である。

ちなみに差込角寸法の表記方法としては、先のインチ表示の他にミリ表記を採用するメーカーもある。ミリ表記を用いるのは主に日本のメーカーで、前回紹介した山下工業研究所は1/4インチを6.35mm、3/8インチを9.5mm、1/2インチを12.7mmと表記する。またKTCのブランドネームが有名な京都機械工具では1/4インチを6.3sq.、3/8インチを9.5sq.、1/2インチを12.7sq.と表記する。これをまとめると1/4インチ=6.35mm=6.3sq.、3/8インチ=9.5mm=9.5sq.、1/2インチ=12.7mm=12.7sq.ということになる。異なるメーカー同士のソケット工具を組み合わせる際には、こうした呼び寸法が同じなら共用できることを知っておくと便利だ。

差込部の凸を上向きにラチェットハンドルを並べると、差込角サイズの違いが明確に分かります。一番小さい手前が1/4インチ、左が3/8インチ、右が1/2インチで、具体的な寸法は知っていなくても、それぞれ用のソケットは他の差込角に差し込めないのは明らか。差込角に違いがあるのは、それぞれにソケットサイズの受け持ち範囲があり、狭い場所での使い勝手や工具の強度に違いがあるためです。

差込角のサイズが同じでもラチェットの頭部(ヘッド)の形状には小判型(奥)や丸形(手前)などの違いがあります。このヘッド内部のメカニズムやギア数がラチェットハンドルの個性となり、工具メーカーの思想が現れる部分となります。

ヘッド内部の凸部の根元はギア状に成型されており、回転方向を切り替えるカムの先端と噛み合うことで、一定方向だけに回転するのがラチェットのメカニズム。ソケットを回す時に「カチカチ……」と音がするのは、凸部とカムのギアの接触によるものです。これは山下工業研究所=コーケン製のジールのハンドル内部で一体型の爪の向きで回転方向が決まっています。

ハンドルの凸をソケットの凹に差し込むメカニズムは単純だが究極的な機構です。一方で、作業中にソケットが簡単に外れると、作業が中断したりトラブルの原因となるため、ラチェットハンドル凸部の小さな金属球をロックして、ソケット脱落を防止できるハンドルもあります。工具メーカーによってプッシュボタン式、ソケットホールド機構など名称は異なりますが、ラチェットヘッドにボタンが付けばロック機能が付いている証拠。

ボルトやナットの周囲に他の部品があってラチェットハンドルが使えない、ドライバーのように連続的に回したい時に便利なT型レンチ。長い軸を指で支えて、短いハンドルをプロペラのように回すと、とてもスピーディに作業できます。

T型レンチと同様、ラチェットハンドルが使いづらい環境やドライバービットやヘックスレンチソケットを回したい時に便利なのがドライバーハンドルで、ラチェット機構を内蔵したハンドルもあります。

ハンドルと差し込み部分の角度を任意に変更でき、90度に曲げれば大きなトルクで、直線状にすればドライバーのように使えるのがスピンナーハンドル。強く締まったボルトを緩める時に頼りになります。

こちらの記事もおすすめです

この記事に関連するキーワード

新着記事

タグで検索