“白バイ流” 究極の安全運転テクニック
取材協力/千葉県警察本部交通機動隊

Lesson5/直線スラローム

掲載日:2010年10月22日 公道スペシャリスト“白バイ流” 究極の安全運転テクニック    

「白バイ流」安全の極意を学ぼう!

常に沈着冷静で威風堂々とした走り。そしてひとたび事件が発生すれば疾風のように現場に駆けつける…。「白バイ」は誰もが認める公道走行のスペシャリスト集団である。その極意とはいかなるものか。2009年度全国白バイ大会のチャンピオン、千葉県警の笹野巡査長を講師に迎え、ストリートを安全確実に走り続けるための考え方やノウハウをお伝えしよう。

Lesson5/直線スラローム
白バイ走法のここがキモだ!
Lesson5/直線スラローム

スロットルワークで
リズミカルに切り返そう

フル装備した重量級の白バイを軽々と操る隊員たち。その真骨頂ともいえるのがパイロンスラロームだ。右から左へ、左から右へとリズミカルに切り返すには、スロットルワークを中心とした操作系のコントロールとボディアクションの連携が必要になる。

 

直線的に並べられたパイロンを縫うように切り返しながら走り抜ける種目がストレートパイロンスラローム(直線スラローム)である。これは白バイ大会では低速バランス走行に含まれるもので、瞬間的にバイクの向きを変える高度な技術が求められる。実際の公道走行では咄嗟の場合の危険回避などにも役立つ技術である。

 

「バイクを自分の思いどおりに操作できることはライディングに楽しさを与えてくれるだけでなく、万が一のときの安全にも役立ちます。事故を起こさないように日頃から冷静で謙虚な運転をすることがまずは大事ですが、安全に長くバイクに乗り続けるためには、こうした技術を身につけておくこともまた必要なことでしょう」と笹野巡査長。スキルアップは予防安全に役立つという考え方だ。

 

白バイが行う直線スラロームは、パイロンの間隔が教習所などより短めに設定されているため難易度が高いのが特徴。その分、より俊敏かつ正確なスロットルワークやステップへの入力が必要になる。一番のキモはやはりスロットルワークで、アクセルのオン・オフによっていかにリズミカルに車体を動かしていくかがポイント。基本的にはスロットルを開けて(パワーオン)車体を起こし、スロットルを閉じて(パワーオフ)車体を寝かしていく。スロットル操作は短めにタイミングよく開けるのがコツ。ゆっくり開けていると回転数が上がりすぎて加速してしまうので注意したい。また、速度のコントロールはリヤブレーキ主体で行っている。

 

もうひとつ忘れてはならないのがニーグリップ。白バイ隊員レベルになると中腰になるぐらい強烈に両ヒザでタンクを挟み込んでいるほど。これを基本に車体を倒し込むときに外ヒザで、起こすときにはむ内ヒザでタンクを押すことで俊敏に切り返せる。ステップバーを踏み込む、いわゆるステップワークはあまり意識しないという。さらに白バイ隊員の場合、ハンドル操作も行って積極的にバイクの向きを変えている。もちろん、セルフステアは生かしつつもライダーのほうでステアリングの動きをアシストしてやる感覚だ。ただし、これは競技会でタイムを出すために行う操作であって、通常の公道走行ではハンドルにはなるべく力を入れないようにするのが基本だ。高度な技術だが、自分のできる範囲で徐々にトライしてもらいたい。

一直線に並んだパイロンを縫うように切り返す。パイロン横を通過しつつスロットルを開け始めようとしているところ。車体はあまり寝かさず舵角で曲がるのがコツ。

スロットルオンで起こす

一直線に並んだパイロンを縫うように切り返す。パイロン横を通過しつつスロットルを開け始めようとしているところ。車体はあまり寝かさず舵角で曲がるのがコツ。

スロットル操作に連動しつつ内ヒザ(この場合は左足)で車体を起こしつつ外足(この場合は右足)でステップを踏み込む。各パイロンの中間地点を前輪が通るイメージ。

ニーグリップで切り返し

スロットル操作に連動しつつ内ヒザ(この場合は左足)で車体を起こしつつ外足(この場合は右足)でステップを踏み込む。各パイロンの中間地点を前輪が通るイメージ。

一瞬スロットルを戻してリヤブレーキで減速しつつ、車体が倒れ込み始めたらすかさずパワーオン。ここでは外足でタンクを押しつつ内足でステップを踏む。

リヤブレーキで速度調整

一瞬スロットルを戻してリヤブレーキで減速しつつ、車体が倒れ込み始めたらすかさずパワーオン。ここでは外足でタンクを押しつつ内足でステップを踏む。

セルフステアを待っていられないので倒し込みと同時にハンドルも切っていくのが白バイ流。頭の位置は常に車体のセンター。顔と上体も常に正面に向けられている。

ハンドルを切っていく

セルフステアを待っていられないので倒し込みと同時にハンドルも切っていくのが白バイ流。頭の位置は常に車体のセンター。顔と上体も常に正面に向けられている。

直線スラロームを真横から見たところ。スロットルオンで加速しているときはフロントフォークが伸びてバイクの姿勢は前が高くなるのに合わせて上体は伏せる。

加速で上体を伏せる

直線スラロームを真横から見たところ。スロットルオンで加速しているときはフロントフォークが伸びてバイクの姿勢は前が高くなるのに合わせて上体は伏せる。

スロットルオフで減速しているときはフロントフォークが縮んで前下がりの姿勢になるため上体は起こしてバランスをとる。上体の動きに合わせて腕も屈伸させる。

減速で上体を起こす

スロットルオフで減速しているときはフロントフォークが縮んで前下がりの姿勢になるため上体は起こしてバランスをとる。上体の動きに合わせて腕も屈伸させる。

千葉県警交通機動隊ではシールドとバイザー付きのジェットヘルを採用。後部には被視認性を高める反射材を装備している点に注目。口元には通信用のマイクを装備。

隊員の装備①「ヘルメット」

千葉県警交通機動隊ではシールドとバイザー付きのジェットヘルを採用。後部には被視認性を高める反射材を装備している点に注目。口元には通信用のマイクを装備。

制服の上には同色で目立たないが実はエアバッグを着用している。反射材の付いたベストがそれ。さらにその内側には胸部プロテクターを装備。各都道府県警によって装備は異なる。

隊員の装備②「エアバッグ&プロテクター」

制服の上には同色で目立たないが実はエアバッグを着用している。反射材の付いたベストがそれ。さらにその内側には胸部プロテクターを装備。各都道府県警によって装備は異なる。

取材協力
取材にご協力いただいたのは千葉県警察本部交通部交通機動隊訓練指導係の皆様。2009年は「全国白バイ安全運転競技大会」団体一部で総合優勝を獲得するなど、全国白バイ隊員の中でも強豪チームとして知られる。
講師 プロフィール
講師 笹野裕也巡査長
千葉県警察本部交通部交通機動隊訓練指導係所属。「第41回全国白バイ安全運転競技大会」において個人総合優勝、千葉県警を団体一部優勝に導いた。マラソンを先導している白バイの凛々しい姿に憧れて現職を志す。プライベートではツーリングを楽しむ根っからのバイク好きでもある。愛車はCB1300SF。千葉県出身。
解説者 プロフィール
解説 佐川健太郎
モーターサイクルジャーナリストとして2輪専門誌等で活躍中。公道で役立つ実践テクからサーキット走行まで造詣が深く、白バイ関連の記事や映像も数多く手掛けるなど白バイテクについても精通。本誌ライテク講座「"スマテク"で乗りこなそう!」でも講師を担当した。ライディングアカデミー東京校長。MFJ公認インストラクター。

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