林道ツーリングに役立つ実践テクニック

【Vol.01】障害物越えのキホンをマスターしたい!

掲載日:2008年12月15日 オフロードライテク講座林道ツーリング実践テクニック    

軽いトレールバイク(オフ車)でも、凸凹や傾斜のきつい林道では扱いが困難になることも多々ある。ツーリング先で足下をすくわれないために、ユウタロウ流の実践的な障害物越えをイメージトレーニングしておこう。的確な状況判断と操作のキホンが出来ていれば、体格は関係ない。それが身長165cmのユウタロウ流『チビテク』なのだ。

木や石はまっすぐ&アクセルオフで乗り越え

太さ15cmの倒木が林道に横たわっている。ここはとある山の中。上の写真のようにススキが伸びてはいるものの、落ち葉はないので丸太は手前から見えていた。

「これぐらいの障害物なら、フロントタイヤが当たる前に半クラッチを使ってフロントアップすれば、スピードを落とさず乗り越えられます」

というユウタロウ講師。でも、ここは少し下り坂になっていて、フロントアップするタイミングをピッタリと倒木の位置に合わせるのは難しい。

「自信のないライダーは、とにかく倒木に対してまっすぐアプローチするよう、進入角度を見極めてください。障害物越えのキホンは『まっすぐ』。これはタイヤが斜めに当たると滑りやすいからです。とくにフロントタイヤが滑るとリカバリーが難しいので、倒木に対しては垂直になるようにしてください」

障害物が不規則な形をしている石などのときは、上半身の力を抜くことで、やはりスリップを抑えられる。これは抜重というテクニックだ。

『まっすぐ』の次に重要なのは、リアタイヤが障害物を乗り越える瞬間にアクセルをオフにすること。これも障害物に乗り上げた後輪が空転してスリップダウンすることを防ぐ。

「要は前後タイヤの滑り防止ですね。これさえ覚えておけば、倒木からロックセクションまで、さまざまなシチュエーションで応用が利きます。オフを走っていてジャマなものを見つけたら常に『まっすぐ』と『アクセルをオフ』にするタイミングを練習してみてください」

つまり、練習はどこででもできるのだ。それでは細かい点も写真を見ながらレクチャーしていこう。

フロントタイヤをまっすぐ当てる

2つの写真を見比べてほしい。倒木に対してまっすぐにアプローチしているほうは、タイヤと倒木とに接地面が大きい。対して斜めに当たっているほうは、フロントタイヤが倒木に当たった瞬間、右へスライドするようにFタイヤが逃げた。スピードを出していたら転倒する可能性が高い。これはタイヤが滑ってグリップを失ってしまったため。タイヤの角は接地面が少ないから滑りやすいのだ。また、タイヤに押されて倒木が逃げるように動いてしまっていることも原因のひとつに挙げられる。

フロントタイヤをまっすぐ当てる

ブレーキをかけない

ブレーキをかけないブレーキをかけるとバイクの重心はフロントタイヤに集まる。すると障害物を乗り越えるとき、イラストのような状態となり非常に危険。これを避けるために簡単な方法なのが、障害物がある場所ではブレーキを使わないようにすること。今回のように大回りでアプローチ角度を変えたいときなどは、ブレーキングによる重心移動の少ないリアブレーキを使うようにする。

障害物に対して垂直にアプローチする

一連の流れを順番に追ってみよう

【1】で走行ラインに対して倒木がどんな角度なのかをチェック。

【2】それに合わせて回り道をして、無理なくまっすぐなアプローチをできるように調整。

【3】なるべく余裕をもって進入角度をまっすぐにすることで、抜重などを行う気持ちの余裕を作っておく。

【4】フロントタイヤが倒木に載ったら、次はアクセルオフのタイミングだ

倒木を発見!

ラインを大回りに取り始める。同時にスローダウンして全体の動きに余裕を持てるようにする

慎重にアプローチ…

対向車は来ないので大胆に右ラインを使って大回り。ススキで視界が悪くなるのでさらにスピードを落とす

倒木に対して『まっすぐ』に!

アプローチできる角度を確保できたので、ハンドルを戻しながら倒木との距離を測る。このぐらいから腕をリラックス

上半身の力を抜いて~

フロントタイヤが倒木に載る直前アクセルを開ける。同時に上半身を後へ引いて抜重、前輪の引っかかりを低減する

しっかり後ろ荷重。そして上体を前へ移動

フロントタイヤが越えたら、リアは自然とついてくるもの。ただ、乗り越える障害物が大きく、滑りやすいほど、写真のように重心の前後移動が大切になってくる。前輪が通過するときは上半身を後へ、後輪が倒木に当たるときは前へとタイミングを合わせて動く。するとそれによってタイヤにかかる荷重が少なくなってショックも低減。よりスムーズに障害物を越えられるのだ。

しっかり後ろ荷重。そして上体を前へ移動

石越えは開ける、閉じるをハッキリと

石越えは開ける、閉じるをハッキリと仮に上り坂でスタックしてしまったとしよう。このシチュエーションでは、前輪下の大きな石でリアタイヤが滑って空転してしまうのが難しいポイント。ここでも倒木越えのとき同様、石越えのときも後輪が当たる瞬間はアクセルを閉じるのが基本。石は硬いので木よりも格段に滑りやすい。そのため石の上でアクセルを開けると、後輪は簡単に滑り出してしまう。これではまったくグリップが得られないので、アクセルをオフにしてスリップを防止しなければならない。

しかし後輪のトラクションが一番得られる上り斜面にちょうど石があるため、右下の写真のように、ユウタロウ講師が両手を広げているスペースしかアクセルを開けられない。

前輪のある上段へバイクを押し上げるには、短い助走で勢いをつけなければならない。そこで振り子テクニックの出番だ。まず、できるだけ下がって助走距離を作る。そしてアクセルをゆっくり開けて上り、リアタイヤが石に当たったらアクセルをオフにする。

重力にまかせていったん下り、下がり切った下の石に乗り上げると、助走距離が少し長くなるので間髪入れず再登坂する。2度目は反動も利用できるので上りに勢いがつく。タイミングを合わせて3、4回繰り返すと、振れ幅が増してゼロ発進よりも、格段に力強い登坂力を得られる。

内山 裕太郎
インストラクター

1978年12月、静岡県生まれ。7歳のときに父親の影響でバイクに乗りはじめ、15歳でエンデューロレースに初出場。以後、大きなレースに参戦を重ねて、02年には西日本WONETシリーズを制した。また04年には東日本シリーズSERIES初代シリーズチャンピオンに輝く。ISDEチリ大会のトロフィーチーム(日本代表)に選ばれ日本チームは12位。個人ではクラス34位という成績を残した。

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