オフ走行の基礎テクニック

【Vol.08】クロスカントリー流コーナリング!

掲載日:2009年09月02日 オフロードライテク講座オフ走行の基礎テクニック    

Gとは重力加速度(gravity)の略称。ここでは「スピードレンジを問わずに感じられる荷重の変化」のことを指す。「このGをライダーが積極的にコントロールすることで、オフロードバイクの楽しさは広がっていく」とは三橋選手のお言葉。オフロードライディングをより楽しむためのテクニック、それがG RIDEなのだ。

アクセルはジワ~っとON つねにタイヤにGをかける!

クラモチ「三橋さん。コースのコーナーはそんなに怖くないんですけど、林道のコーナーが怖いんですよ。スピードも他の人より遅いのに何ででしょう? 速く走ろうとするとオーバーランしそうになるから、ゆっくりとコーナリングしているんですけど、マシンがフラフラしていつ転ぶか分からなくて不安なんですよ。もっとスムーズに走れる方法を教えてもらえませんか?」

と、数々のクロスカントリーライディングを身につけてきたはずのクラモチが、意外な悩みを告白してきた。そこで、フラットな場所をコーナーに見立てて、クラモチの走りをチェックしてみた。杭がイン側、丸太を置いた所からはガケという設定だ。

コーナーに進入してくるクラモチ。オーバーランを警戒してトコトコとアプローチしてくる。そしてコーナーに差しかかると、アクセルを全閉にして、惰性でコーナリングしている。

三橋「クラモチ君、アクセル全閉で曲がってるでしょ。それがフラフラしている原因だよ。林道はほとんどブラインドコーナーだから、安全マージンを取って減速しているのは正解なんだ。でも、ダートはリアタイヤを路面にグリップさせないと走れないよね。クラモチ君は路面をグリップしないで、惰性で滑走しているような状態なんだ。ということは、リアタイヤを路面にグリップさせればフラフラしなくなるということだよね」

クラモチ「そうか。リアタイヤにGをかけて走ればいいのか。ということは、アクセルを開けるんですね!」

三橋「そう。ただ注意しなくちゃいけないのは、アクセルを開ける=全開、ではないということ。コーナリング中でマシンも傾けているから、不必要にアクセルを開けるとリアがスリップする原因になるんだ。アクセルワイヤーの遊びをなくす程度に、ジュワ~っという感じでアクセルを少しだけ開けて走ってみて」

クラモチ「アクセルを開けると安定するのは分かっているんですけど、ついガバッと開けちゃうんです」

と、速いコーナリングをやりたいクラモチは、アクセル開度が大きくなってしまうようだ。

 

モトクロスのコーナリングは、できるだけ速いスピードでコーナーに進入して、ギリギリまでブレーキングをガマンしてから一気に減速し、アクセルを閉じてスパッと向きをかえ、コーナー出口に向かって最大限に加速していく。これができるのは、モトクロスではコーナーの路面状態やコーナー出口の状況が分かっているからだ。純粋にタイムだけを比較すれば、G RIDE流コーナリングはモトクロスのそれよりも遅い。しかし、初めて走る林道のブラインドコーナーで、モトクロスライダーがコースと同じように走れるかと言えば、答えはNOだ。クラモチが林道のコーナーを怖く感じたのはそういうこと。速く走る意識を持たないことが重要なのだ。

バイクにはアクセルを開けると直立する特性がある。コーナリング中にアクセルを開けるのは、マシンを倒し込んで曲がろうとする力に、マシンを起き上げる力を釣り合わせることで、マシンを安定させつつ向きを変えているからだ。アクセル全閉だとマシンを起き上がる力が発生せず倒れ込んでしまい、アクセル全開だと直立する力が強すぎて倒し込めずオーバーランする。起きすぎず倒れすぎない状態を作ってやるには、ジュワーと開けてバランス点を探るのだ。

三橋「それだとリアタイヤがスライドして、結局タイムロスしてるのは分かるよね。まず、コーナーへの進入は自分がコントロールできるスピードまで減速すること。そして、減速したらアクセルを全閉にしたままにせず、マシンを安定させるためにアクセルをジュワ~っという感じで開けていこう。マシンを加速させるのではなく、減速しないようにすればいいから、進入スピードをキープ出来るくらいのアクセル開度でいいんだ。リアタイヤをグリップさせて、マシンがフラフラしていなければ、対向車が来たり大きな岩があっても、停止したり、ラインを変えて避けることが出来る。先の分からないクロスカントリーのコーナリングは、何があっても対処出来るようにしておくことが基本なんだよ」

ジュワ~っとアクセルを開けてコーンリングするクラモチ。安定感が増しているのがパッと見でわかる。

三橋「進入で減速したら、アクセル開度はジュワーのままで、アクセルを開けるタイミングを少し速くしみよう。こうすると速くマシンが安定するから、速いタイミングでマシンを倒し込んでいける。ということは、必然的にコーナリングも速くなる。速いコーナリングをするには、アクセル開度じゃなく、ジュワ~っと開け始めるタイミングが重要なんだ」

初心者にありがちなミステイク【Case-01】

オーバースピードを警戒してアクセル全閉でコーナリング。じつはこのアクセル全閉が、マシンをフラフラさせる原因になっている。バイクはリアタイヤを路面にグリップさせて走るが、リアタイヤをグリップさせるには、アクセルを開けてリアタイヤにGをかける必要がある。アクセル全閉では路面にGをかけられず、マシンは滑りやすい路面の上に置かれているのと同じ状態だ。その状態で動いているから、倒し込もうとすると必要以上に倒れ込んでしまい、それを修正しようとしてフラフラする。ゆっくりコーナリング=アクセル全閉ではないのだ。

初心者にありがちなミステイク【Case-02】

速いコーナリングをしようとして多い失敗例がコレだ。自分の限界を超えたオーバースピードでコーナーに進入している。クラモチは丸太を乗り越えているが、これが実際の林道だとしたら、ガケから落ちて大惨事になっているところだ。速く進入しても曲がり切れなければ、それは速いコーナリングにはならない。コントロールできないスピードで進入するということは、写真のように何かあっても対処できないということでもある。速いコーナリングの第一歩は、速く走る意識を持たないこと。安全確実に走破できることが、結果的に速くなるんだ。

アクセルの開け方にもポイントあり!全開ではなく「ジュワ~」が正解!

アクセルはジュワ~っと開けたままなので、マシンは加速もせず減速もせず、安定した姿勢のままコーナーに進入していく。倒し込めないのはアクセルの開け過ぎ、倒れ込み過ぎるのはアクセルの閉じ過ぎ。ジュワ~っで適切な開度を探る。

 

曲がるためにマシンを傾けていくが、このときのリア回りに注目。リアサスが縮んで、リアタイヤにGがかかり、リアタイヤがしっかりとグリップしている。つまり、この段階でジュワ~っとアクセルを開け始めているのだ。

 

コーナー進入は、自分が余裕を持ってコントロール出来るスピードまで減速する。進入の段階でしっかり減速するために、アクセルを全閉にするのは間違いではない。速い進入が速いコーナリングではないというのを覚えておこう。

対向車がいないのを確認したので、アウトに膨らんでも大丈夫。アクセルを開けて気持ちよくコーナーを抜けられた。安全を確認出来れば安心して走ることが出来る。ミスなく結果的に速い、それがG RIDEの極意だ。

 

アクセルをジュワ~っと開けたまま、コーナー出口が見える位置まで来た。アクセルを戻せばイン側に倒し込んでいけるし、アクセルを開けていけばアウト側に膨らみつつ、加速してコーナーから脱出出来る。いろいろと対処出来る状態だ。

 

倒し込む力と起き上がる力が釣り合っているので、ハイスピードではなくてもこれだけバンクさせることが出来る。フロントタイヤのグリップに頼っていない状態なので、ハンドルを切らなくてもマシンの向きが変わっていく。

コーナリング安定の仕組みを理解して不安定さがなくなったクラモチ

バンク角は深くなっているが、ハンドルも切れ込み過ぎず、リアタイヤがグリップしているので不安定さがまったくない。クラモチ「速く走る意識を持たないこととジュワ~。これで全然怖くなくなりました!」

三橋 淳
インストラクター
三橋 淳

2007パリダカ・市販車無改造クラスで優勝を果たしたのは記憶に新しいところ。四輪ドライバー転向前は、BAJA1000、UAEラリー、ラリーレイドモンゴル、パリダカなどの海外レースで輝かしいリザルトを残してきた。豪快かつ繊細なライディングは未だに健在。

クラモチ
生徒
クラモチ

GARRRR編集スタッフではあるものの、オフロード経験はほぼゼロ。学生時代にカッコイイという理由で購入したKDX200SRも半日で焼きつかせてしまい、その後もストリート・オフローダーとしてRMX250S、DT200WRと乗り継いできた2スト好き。

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