ホンダ NS50F AERO(1987)

掲載日:2013年12月26日 絶版原付    

文/櫻井 伸樹

HONDA NS50F AERO(1987)

原付小僧達を熱狂させた
80年代のゼロハンキング

1980年代といえば空前のレーサーレプリカブーム。おりしも時代はバブル真っ只中で、日本中が好景気に沸いていた。ホンダ、ヤマハ、スズキはこぞって2スト250のフルカウルスポーツをリリースし、毎年のようにモデルチェンジが施され、都市部近郊の峠には「峠小僧」と呼ばれる若者達が毎晩のように集まり、膝を摺ることに情熱を傾けていた時代だ。

このNS50Fは、そんな日本の黄金期である1987年に登場した50ccのロードスポーツモデルだ。ベースとなったのは直前まで発売されていた「MBX50」。水冷2スト単気筒49ccのエンジンは8000回転で当時の自主規制上限である7.2馬力を発揮。流麗なハーフカウルから始まるエアロフォルムは、原付とは思えない堂々としたもので、前輪には油圧式ディスクブレーキ、軽量・高剛性のアルミ製キャストホイールや新パターンの幅広タイヤを採用するなど、革新的な車体構成を誇った。他にもハロゲンヘッドライト(30/30W)やセパハン、サイレンサー別体の排気チャンバーなど充実した装備を持ち、ワインディングからロングツーリングまで原付とは思えないほどスポーティであらゆる楽しみ方を実現してくれた。

幅広い層に人気のNS50Fだが、時代が峠小僧全盛期だったため、そのユーザーの多くは免許取立ての高校生や大学生だった。初めてのバイクがNS50Fだったというライダーも多いだろう。彼らはとにかく走り、転び、修理や改良をするつもりでいじっては逆に壊し、なけなしのバイト代で社外製のチャンバーを装着するなど、彼らなりのチープだが熱のある青春がそこで繰り返されたわけだが、最終的には後輩に売り、その金で中型免許を取得して原付を卒業するというのが定番だった。

峠の興奮、旅のわくわく、いじる楽しさ、転んだ痛み、盗まれる悲しみなど、バイクの総合的な楽しみ方を多くの若者に教えてくれた原付の中の原付と呼べる、貴重な1台だろう。

MACHINE SPEC

全長×全幅×全高 1,855×630×1,065mm
軸距最/最低地上高 1,260/170mm
車両重量 92kg
エンジン形式・種類 水冷2ストローク単気筒
総排気量 49cc
内径×行程 39.0×41.4mm
圧縮比 7.2
最高出力 7.2ps/8,000rpm
最大トルク 0.65kgf-m/7,500rpm
始動方式 キック
点火装置形式 CDI
潤滑方式 分離潤滑式
燃料タンク容量 10L
クラッチ形式 湿式多板
変速機 6段
Fタイヤ 2.75-17-4PR
Rタイヤ 3.00-17-4PR
Fブレーキ形式 油圧式ディスク
Rブレーキ形式 機械式リーディングトレーリング
F懸架方式 テレスコピック
R懸架方式 プロリンク・スイングアーム
価格 20万9,000円(1987年)

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