原チャでchacha茶

後編:涼を求めて富士山へ、猛暑脱出!(静岡・富士宮~本栖)

掲載日:2012年08月27日 原付漫遊記原チャでchacha茶    

文・写真/ 野岸“ねぎ”泰之  写真/野呂瀬悦史

天然の扇風機!?
白糸の滝はオアシスだ

アイドルに爽やかな風をもらったあとは、再び灼熱の路上へと戻り、さらに涼を求めて走り出すとしよう。市街から北上するのに、国道139号線は交通量が多く、トラックの往来も激しいので、原付にはちょっとつらい。そこで、平行して走る県道414号線を走ることにした。この道は国道139号線の旧道だから路面はきっちり整備されており、地元の車両が中心のため、のん気で走りやすい。例によって道はずーっと上りっぱなし。こんな時、マニュアルクラッチ付きのAPEだと、自在にシフト操作ができるから、キビキビした走りが可能。スクーターも楽でいいけど、たまにはバイクらしい原付でお散歩、もいいね~。

しばらく走って到着したのは、白糸の滝。観光地らしくあちこちに「滝から近い駐車場はこちら」という客引きや看板が目立つ。けど、実はわかりやすく目立つ駐車場に停めると滝から遠かったりする。くれぐれも駐車場選びは慎重に!! 余計に歩くと、暑さも倍増だからね……。

歩いて石の階段を下りていくと、ドウドウという、ものすごい量の水が流れ落ちる音が聞こえてくる。と、その全貌を現した滝の姿は、圧巻。高さ20m、幅200mにわたって溶岩層から流れ出る富士山の雪解け水は、その名のとおり、まるで絹の糸を垂らしたかのよう。美しさもさることながら、ミストを含んで吹き抜ける風が涼しい! 駐車場から汗だくになって歩いてきた身が生き返る! あ~もうここから動きたくない、ってマジで思えるほどの涼しさだった。すぐ近くの音止めの滝も迫力満点で見ごたえがあるし、暑いときに行くとありがたみが倍増するスポットだ。

写真ではわかりにくいけど、ミスト状になった水が風で冷やされて、滝付近は超涼しいのであります。幸せだ~!!

白糸の滝近くにはお土産物店が並ぶ。絵葉書とか提灯とか、昭和のニオイがする商品がいっぱい

左/県道414号線は、交通量はそこそこあるけどトラックが少なくて原付向き。ひたすら上るぞ~ 右/白糸の滝の端っこに到着。溶岩から涼しげに水が流れ出ている

白糸の滝は、滝壺をぐるっと取り囲むように周囲の壁から水が幾筋も流れ落ちているのが特徴。涼しいぞ~!!

白糸の滝のすぐ近くにある音止めの滝は、1本の川がドドド、と流れ落ちる豪快系。水の音で会話ができないほどのド迫力

穴に高原、そして湖
どんどん涼しくなる旅!!

駐車場へ戻ると再び熱波が襲ってきて、たちまち汗地獄。標高は約500mほどのはずだけど、まだまだ暑い。こうなるともっと涼しいところへ行きたくなる。今度は国道139号線の東側を通る県道71号線にスイッチして北上、「穴」を目指すことにした。富士山の周辺には風穴とか氷穴といったいわゆる溶岩洞窟が、有名無名を含め、大小さまざま、いくつも存在する。その中で、今回向かったのはその名も「人穴」。なにやらオドロオドロしい名前だけど、戦国時代から江戸時代初期にかけて長谷川角行という人物がここで修行して創唱した富士山信仰、いわゆる富士講の聖地なのである。

目指す穴は、人穴浅間神社の脇にある。急な階段を下りていくと、中は真っ暗。よく見ると洞内には石仏が安置されていて、ローソクの様子を見ると今でもお参りに来る人が絶えないようだ。そしてこの洞窟内が、とんでもなく涼しい。なんと、息を吐くと真冬のように真っ白。白糸の滝の風が扇風機だとすると、ここはエアコン級、いや、冷蔵庫クラスといえる冷たさだ。汗が急速に冷やされ、ずっと中にいると寒いぐらい。外に出ても、先ほどまでのように汗が噴き出てこない。それもそのはず、このあたりの標高は700m前後、気が付けばずいぶん上ってきたものだ。

かなり過ごしやすくなったところで再びマシンにまたがり、走り出す。県道71号線は、ゆるやかなカーブを描きつつ高度を上げ、樹林の中を抜けると牧草地帯へと続く。いつの間にか標高は800mを越えている!? この辺りはすでに朝霧高原エリアで、適当な細い脇道に入り込めば、まるで北海道のような牧草地帯が広がっていたりする。肝心の富士山が雲に隠れてほとんど見えないのは残念だけど、原付でうろうろとお気に入りの景色を探すのが楽しくて、ついつい時間の経つのも忘れて走り回ってしまった。気が付けば、午後も遅めの時間。身も心もすっかり涼しくリフレッシュしたところで、そろそろ恒例のお茶タイムとしますか。というわけで、国道139号線に出て、一気に本栖湖に向かうことにした。

左/県道71号を北上すれば、河口湖、鳴沢方面へと抜けられる。樹海あり、牧草地ありの爽快ルートだ 右/県道沿いの牧場で子馬を発見。とても人懐っこく、バイクに興味津々で寄ってきた

上り坂の国道でまたまた高度を稼ぎ、到着した本栖湖の標高は約900m。夕方が近づいてきたという時間的なこともあり、真夏なのに周囲の空気はひんやりとしている。湖に近づける場所を見つけ、コーヒーを淹れることにした。今回持参したのは、タリーズのお手軽ドリップタイプ。飲むならアイスがいいな、と一日中思っていたけど、かなり涼しくなったので、ホットで飲むことに。湖面を渡る爽やかな風に乗って、コーヒーの香りが周囲に広がる。いつもながら、贅沢な時間だなぁ。

左/人穴は由緒ある聖地であり遺構だが、一部で怪奇スポットとしても有名。人穴浅間神社の鳥居も、車でくぐると帰りに事故に遭うという噂も 右/人穴の入り口。中央の緑の部分に急な階段があり、洞窟へと降りられる

穴の内部は涼しい、というか息が白くなるほど空気が冷たく、寒いぐらい。洞窟内の温度は年中一定なので、冬来れば暖かいはず

左/朝霧高原で絶景を探していたら、一瞬、雲の合間から富士山が頭だけを見せてくれた 右/バイク業界で有名なエッセイスト、三好礼子さんの営む「フェアリーカフェ」も朝霧にある。残念ながらこの日はお休み

左上/朝霧高原には牧草地を貫く爽快な道が何本もある。雄大さはまるで北海道みたい 右上/まるで緑の海を眺めているかのような、広大な牧草地。標高が高く、夏でもだいぶ涼しい 左下/本栖湖畔でコーヒータイム。いつもこんな感じで淹れてます 右下/今回持参したコーヒーは、タリーズのドリップマグ。香りも苦味も深く、本格的

それにしても、スタートの灼熱地獄がウソのように涼しい。大型バイクではためらうような細い道脇道も原付なら気軽に走れるし、メインルートに戻れば観光施設やドライブインも多く、飲食にも困らないし飽きることもない。富士山周辺は、お散歩ツーリングにもぴったりのエリアだね。あぁ、それにしても下界には戻りたくないなぁ……。さて、次回はどこでchacha茶しようかな!?

日も傾き始め、湖面を渡る風はかなり涼しく、心地いい。今回も素敵な場所で、おいしいお茶が飲めて感謝です!!

今回のマシン
【ホンダ APE100 TypeD】プチインプレ

原付の中では絶滅寸前の、マニュアルクラッチ&5速ギアを装備したマシンがAPEだ。なかでもディスクブレーキやアルミキャストホイールを装備したTypeDは、キビキビとしたスポーツライディングが可能。ワインディングなどで、シフトを自在に操れるのはやっぱり楽しい。メットインスペースなんかなくても遠くまで行きたい!! と思わせてくれるバイクだ。

ツーリングプチ情報

■食事スポット

お宮横丁

富士宮やきそば学会のアンテナショップのほか、ご当地グルメの店舗が軒を連ねる。

所在地/静岡県富士宮市宮町4-23

営業時間/10~17時30分

定休日/各店により異なる

参考HP/富士宮やきそば学会

■食事スポット

お~それ宮

NEW鱒バーガーをはじめ、富士宮の名産を使ったグルメが食べられるアンテナショップ。

所在地/静岡県富士宮市大宮町8-3

営業時間/10~17時

TEL/0544-28-6770

HP/http://umya-fujinomiya.com/

■ご当地アイドル

TEAM M II

富士宮の市制70周年を記念して結成されたご当地アイドルグループ。

TEL/0276-61-2038

公式HP/http://miya70.com/

杉永真惟さんのブログ/http://rodent.jugem.jp/

■観光スポット

白糸の滝

富士山の雪解け水が、高さ20m、幅200mにわたって湾曲した絶壁から流れ落ちる名瀑。

所在地/静岡県富士宮市上井出

※2012年8月27~2013年12月まで、工事のため滝壺には降りられないので注意。

HUB倶楽部
プロフィール
野岸“ねぎ”泰之
神奈川在住のフリーライター。バイクツーリング雑誌を中心に、防衛問題からデジタルグッズまで、興味の赴くままに幅広く執筆。原付バイクによる島旅も多くこなす。グッズからグルメまで、B級と名のつくものが大好物。愛車はヤマハTDM850、TT250レイド、カワサキKSRⅡ。好きな言葉は「人生は祭りだ!」。HUB倶楽部の主宰メンバーでもある

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