カブ生活

第十五回「カブの聖地へ」

掲載日:2013年03月11日 原付漫遊記松本よしえのゆるカブdays    

え・文・写真/松本よしえ

「兵隊家」は田園調布の閑静な住宅街にあるお蕎麦屋さん。この店の名前を聞いてカブとの繋がりにピンッとくる人がいたら、なかなかのカブ通です。

じつはこの店、「スーパーカブ」の一般週刊誌(全国誌)向け広告第一号が撮影されたロケ地なのです。発表されたのは1960年だから、いまから53年前のこと。写真でご覧のとおり、広告の内容は一遍の物語のようです。長野から上京して東京の蕎麦屋「兵隊家」で働く青年が、田舎の両親に宛てて書いた手紙という設定でしょうか。純朴な青年がカブに乗って働くのを誇りにしている様子がヒシヒシと伝わって、モノクロ写真を手にする親の手元が泣かせます。いまでこそ蕎麦屋の出前といえば誰もがカブを思い浮かべますが、働くバイクとしての知名度を上げた影にはこんな広告もあったのですね。当時、日本は戦後の復興を経て高度成長期に突入したところ。4年後には東京五輪が開催され、希望に満ち溢れた時代でした。

ところで、こんなメモリアルな店だけに、世のカブ愛好家の間ではちょっとした人気スポットになっているのです。店の前で記念撮影をしたり、仲間で蕎麦を食べるオフ会を開く人もいるそうです。2008年にはスーパーカブの誕生50周年を記念して、「日本縦断タスキリレー」を企画した愛好家がいて、この店が記念すべきスタート地点になりました。ちなみにこの企画は2月にスタートして11月の「カフェカブミーティングin青山」の会場にゴールしました。mixiのコミュニティをきっかけに企画を発案したTONYさんの話では、150人のカブ乗りがタスキをリレーし、応援者も含めると580人が関わるイベントになったそうです。以来、毎年2月には必ず「兵隊家」でのオフ会が開かれています。

こんな風にカブへの思いを込めてやって来たり、オーナー同士が繋がれる場があるのは素敵なことです。今年の2月、タスキリレーのオフ会は5回目。わたしも参加させていただいたのですが、珍しいCM91や現行のリトルカブ、個性あふれるカブの仲間が集まって蕎麦をすすりました。初めてでもオーナー同士が打ち解けて話せるのはカブのチカラ。カブ好きな人をひき付ける磁力がある「兵隊家」は、紛れもなく“カブの聖地”のひとつなのでしょうね。

手打ちそば 「兵隊家」

東京都大田区田園調布3-14-10
TEL/03-3721-3406
営業時間/11:00~20:00
木曜定休

お店に隣接する別館にはカブの広告のレプリカが飾ってあります。2006年に記念として広告制作会社より贈られたものです。よ~くご覧くださいませ。暖簾の左端の屋号が「兵隊屋」になっています。

カブで訪ねたら、お店の前でぜひ記念写真を! 暖簾の手前の女性は女将さんです。にこやかな笑顔で見送っていただきました。

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