カブ生活

第八回「ラムネが似合うカブ」

掲載日:2012年06月15日 原付漫遊記松本よしえのゆるカブdays    

え・文・写真/松本よしえ

梅雨入り前のからりと晴れた休日。目の前にカブがあれば出かけたくてウズウズします。携帯とカメラ、お財布があればOK! 雨の確率は0%だけど、もし降られても雨宿りするか濡れて帰ろう。そんな身軽さで走り出せるのがカブのいいところです。

せっかくならカブの似合う街へ行ってみよう。そう思い巡らせて向かったのは都内にある雑司が谷の 鬼子母神! かいわいは池袋駅の喧騒からたった500メートルほどの近さなのに、都内で唯一の路面電車、都電荒川線の一両電車が住宅街をトコトコと走り、荒川線の「鬼子母神前」停留所から鬼子母神にかけてはケヤキ並木の深い緑に縁取られ、石畳のプチ参道になっています。中ほどにはギャラリーを兼ねた案内所や、古民家を改装した小さなカフェも! カブならば小回りがきいて散策にもピッタリなのです

ところで今回のお供は最新の“スーパーカブ110”です。わたしは今春のモーターショーの会場で跨って以来、初めて実車に乗りました。新しくなったカブはフロントのライトとウィンカーが一体化。これまでの女子受けしていた丸っこい見た目から四角くて直線的なデザインになりました。セル一発でエンジンが始動できるのはバイクに初めて乗る人も安心です。わたし、最初にアクセルを開けたとき、あまりにスルスルッと静かに動くのでビックリしました。自前の90年代カブはギアをガチャンガチャンとチェンジしながら走るのが気に入っているけれど、最新カブはウルトラスムーズ。好みで意見は分かれそうですが、ギアチェンジを負担に感じずに乗れて、スクーターに近づいた気がします。

さて、話を戻します。すっかり旅行気分に浸って、ようやくたどり着く鬼子母神様。由来を拝見すると…その昔、鬼子母神は母でありながら子どもを食べる鬼女だったのが、お釈迦様の深~い導きによって改心し、安産と子育ての女神になったとあります。そのドラマチックな由来やお名前とは裏腹に、現在の鬼子母神像は赤子を抱き、慈愛に満ちた優しそうなお姿をしているのが興味深いところ。縁起をたどれば室町時代までさかのぼる、由緒正しいお寺なのです。緑深い境内には樹齢700年ともいわれる大イチョウが悠然と枝を広げ、すぐ隣には駄菓子屋の「上川口屋」が店を構えています。こちらもなんと江戸時代創業。店主のお母さんは13代目で、「お天気しだいで店を開けます」という、ゆるゆる加減が地元でしっかり定着しています。この店先で飲む、ごく当たり前のラムネが2倍も3倍も美味しく感じるのはなぜでしょう。冷たいラムネにノドを鳴らしながら、カブを巡る妄想がフツフツと浮かんでは消えます。

「鬼子母神」へと向かう石畳の参道はケヤキの緑が涼しげ。18本のケヤキのうち4本は樹齢400年を越えるそうです。この参道は短いながらもバイクで走ることができますよ。

鬼子母神境内の「上川口屋」は1781年創業。おそらく都内で一番古い駄菓子屋です。休日は大人買いの人が続出!

“スーパーカブ110”は1958年に元祖スーパーカブの“スーパーカブC100”が発売されて以来、初のフルモデルチェンジ。新カブは「これからも、愛される1台へ。」をキャッチフレーズに中国の天津から逆輸入されています。

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