掲載日:2019年06月03日 試乗インプレ・レビュー
取材・文/佐賀山敏行 写真/井上 演
LAMBRETTA V125 Special Flex
1947年にイタリアでスクーターの生産を開始したランブレッタは、イタリアン・スクーターのアイデンディティともいうべき「スチール・モノコック」形式のフレームやハンドチェンジによるマニュアルトランスミッションによって、世界中でファンを獲得。1960-70年代のモッズブームでも活躍した。しかし、70年代に工場を閉鎖してからは、スクーター生産からは撤退。ビンテージモデルは、今でも高値で取引されるほどの人気っぷりである。
そんなランブレッタが、2017年に復活。当時を思わせる車体に現代の装備を落とし込み、スクーターの利便性とファッション性を高い次元で融合させたのだ。これにはスクーターファンならずとも注目せずにはいられないはずだ!
ランブレッタといえば、ハンドチェンジによるマニュアルトランスミッションと2ストロークエンジンがまず思い浮かぶが、新生ランブレッタは環境に優しく扱いやすい空冷4ストローク単気筒エンジンを搭載。もちろんトランスミッションはCVTによるオートマチックを採用していて、誰でも扱いやすいものになっている。それでいて、スタイリングは往年のモデルを彷彿とさせるもので、クラシカルとモダンが見事に融合している。
モーターサイクルやクルマの世界では「ヘリテージ」がもてはやされているが、ランブレッタもまさにスクーター版ヘリテージ。過去を尊重しつつも、現代的なテイストの落とし込み方のうまさは流石ヨーロッパ車といったところ。単なる過去の焼き直しではなく、新たなデザインとして、しっかりとオリジナリティーが確立されている。
そして、スクーターといえば利便性の高さも気になるところ。このモデルではシート下トランクはもちろんのこと、ハンドル下のインナートランク、USBチャージャーなども装備。灯火類はすべてLEDとなっているなど、便利で快適な機能が満載となっているのだ。
今回試乗したのは、125ccエンジンを搭載する「V125 Special Flex」。ここで簡単にランブレッタのラインナップを紹介したい。
排気量は3種類あり、50cc、125cc、そして169ccがある。車名はV50、V125、V200だ。さらにそれぞれ「Special Flex」と「Special Fix」に分かれる。前者はフロントタイヤに合わせてフェンダーが動く「可変フェンダー」。後者は車体にフェンダーが固定されている。つまり、排気量とフェンダーのタイプを合わせると、全6種類がリリースされているのだ。そのなかから今回は「125ccエンジンを搭載した可変フェンダー」タイプの「V125 Special Flex」を試乗したというわけである。
またがってみると、見た目から受ける印象ほど足つきは良くない。125ccクラスでも、車高の高いスポーツ系スクーターと同等といったイメージ。車体はV50〜V200まで共通なので、高速道路走行にも耐えうるよう、大きめのしっかりしたボディとなっているようだ。
いざ走らせてみる。空冷単気筒エンジンは振動がやや大きめで、国産のスムースなエンジンに慣れていると面食らうかもしれない。しかし、これも味わいだと思えば納得。スクーターは「普段の足」だと割り切る人も多いかもしれないが、単気筒らしさを感じる吹け上がりは、「やはりランブレッタは趣味の乗り物だ」と思わせてくれる。
しかも剛性感の高いスチールモノコックボディは、ワインディングを不安なく、右に左に曲がらせることができる。ランブレッタ最大の特徴とも言えるスチールモノコックボディは、ルックスに高級感を与えるだけでなく、走りの質も大きく向上させている。スクーターにありがちなフレームの捻りを感じることはなく、「機会があれば、ぜひV200で高速道路も走らせてみたい」と思わせるほど。スクーターと言えども、やはりそこはイタリアン! 乗って楽しむという考え方が染み付いているのだろう。
便利な足が欲しいけれど、所有欲や走る楽しさも満たしたい……ランブレッタ V125は、そんなワガママを叶えてくれる稀有な1台と言えそうだ。