ヤマハ EC-03
ヤマハ EC-03

ヤマハ EC-03 – ヤマハが提案する未来の2輪

掲載日:2010年09月09日 試乗インプレ・レビュー    

構成/バイクブロス・マガジンズ編集部

ヤマハが提案する未来の2輪
ゼロエミッションを実現したEC-03の走りとは

ついにヤマハのエレクトリックコミューター「EC-03」が街中を走り始めた。シンプルで洗練されたデザインはいかにも同社らしい仕上がりで、恐らく女性ユーザーからも支持を集めることだろう。しかし、この未来的な2輪車を正しく認識するには、そのコンセプトを理解しておく必要がある。このEC-03でヤマハが目指したのは “スマート・ミニマムコミューター”。いわゆるゼロエミッションを実現しつつ、性能的には都市部半径5キロメートル圏内の移動に軸足を置いているのだ。このレンジはガソリンエンジンの原付を利用しているユーザーの移動範囲と重なる部分も大きいが、完全な代替とはなりそうもない。しかし、ニーズがそのコンセプトに合致するユーザーにとっては、高い経済性や排気ガスを一切排出しないクリーンで知的な仕事ぶりが他にはない魅力となるはずだ。PassolやEC-02で既に電動バイクを市販してきた経験を持つ同社だけに、EC-03への期待は一際大きい。果たして、ヤマハが提示する“スマート・ミニマムコミューター”の実力は如何に。じっくりと味わってみることにした。

ヤマハ EC-03の試乗インプレッション

ヤマハ EC-03の画像

無音・無振動で走る驚き
まったく新たな乗り物EC-03

キーを挿入し、電源をオンに。右グリップを捻るとEC-03は優しく地面を蹴り始めた。発生している駆動力は、はっきり言うと車体の安定を保ちつつ前進するのが精一杯という感じだ。しかし、キューンという僅かなモーター音以外はほぼ無音、振動もなく滑るように走る感覚は実に新鮮。思わず「これは楽しい」と呟いてしまった。スタートして幹線道路に出るためには人通りの多い路地を抜けなくてはならず、無音ゆえこちらの存在に気付いてくれない歩行者に注意しなくてはならないが、それを除けば低速では「これで十分なんだ」と思えてくる。歩行者を威嚇しないという意味でも極めて平和的な乗り物である。惰性で走行する自転車に乗っている感覚に近いのだが、右手を少し捻ると音も振動もなく加速。ウインカーやブレーキなど操作はバイクと同様なのに、余りにスムーズで静かな走りっぷりに感覚が混乱してしまう。それほどこのEC-03の走行感覚は新しい。もちろん電動アシスト自転車ともまったく違う乗り心地だ。

ようやく幹線道路に出たので右手を大きく捻ってみたものの、加速性能はかなり限定的だ。平地で引っ張り続ければ時速50km弱までは出るようだが、性能的には原付1種の制限速度内がEC-03を快適に運転できる範囲と見て間違いない。もちろんそれで良いのだが、流れの速い幹線道路では他の交通の邪魔をしないようにスタートして加速することもかなり困難だと感じる。混雑した都市部では周囲の交通に十分注意して走行する必要があるだろう。ブレーキは前後ドラム式でタッチはやや硬めだが、利き・コントロール性ともに悪くはない。足回りは前後とも単なるスプリングという感じでダンパーは利いていないが、EC-03の運動性能にとっては十分。駆動力が弱い分、車体の安定性には配慮されたようで、むやみにフラつかないのも美点である。車体は軽く例の2段階右折をしなくてはならない場所でも、フットワーク軽く移動することが可能だ。

ヤマハ EC-03の画像

今回のテストコースはEC-03にとって不利な状況ばかりだった。人ごみ、交通量が多く流れの速い幹線道路、そして2段階右折のオンパレード。はっきり言って、1台の「バイク」として評価してしまえばEC-03で褒められる点は軽さぐらいなものだ。しかし、自分が住んでいる郊外を想像すれば、これほど素晴らしい乗り物は他にないと感じたのも事実。比較的空気がきれいな郊外では、車やバイクが撒き散らす排気ガスが気になるときも多い。ベビーカーを見たときはできるだけ静かに走りたいとも思う。自宅と駅の往復や、ちょっとした買い物などに供するのであれば、漕がないでも前に進んでくれるだけで十分だ。このような要求をEC-03は全て満たしているし、なによりもこうした環境負荷の小さい2輪車が街を走り始めたという事実が重要なのだと感じた。

ヤマハ EC-03の特徴は次ページにて

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