スヴァルトピレン401は、水冷単気筒エンジンを搭載したストリートバイクです。オフロードタイプのハンドルバーを採用し、前後輪にはワイヤースポークホイールとブロックタイヤを装備。いわゆるスクランブラースタイルです。2024年のモデルチェンジでフレームからエンジン、外観デザインまで一新。排気量は従来の373ccから399ccへと拡大しました。また、シート高は従来より15mm低い820mmとなり、足着き性が向上しています。
エンジンはスムーズで扱いやすい出力特性です。最高出力は33kW(45PS)。ライドモードはストリートとレインの2種類で、悪天候向けのレインモードでは穏やかなスロットルレスポンスとなります。また、コーナリングトラクションコントロールや、変速時のクラッチ操作を不要にするイージーシフトも採用。なお、エンジンが従来より軽量コンパクトになったため重量配分が改善し、ハンドリングの向上にもつながっています。
車体重量は159kg(燃料を除く)。スチール製のトレリスフレームとアルミニウム製のスイングアームは、リアショックユニットのオフセンター配置を反映した新設計です。サスペンションはWP製で、ストロークは前後ともに150mm。また、ホイールベースをやや長くすることで安定性の向上を図りました。さらに、トリプルクランプのオフセットを見直すことで、安心感の高いライディングポジションを取れるようにしています。
燃料タンクの形状も新しくなりました。容量は従来の9.5Lから13Lへとサイズアップ、タンク上には荷物を積載可能なラゲッジラックを標準で装備。タンクカバーはライダーの動きを妨げることのないデザインです。そのほか、メーターパネルには5インチのTFTフルカラーディスプレイを採用。ブレーキにはボッシュ製のコーナリングABSを装備。車両価格は消費税10%込みで79万9,000円、発売は2024年の3月となっています。
ホンダのホークシリーズのバリエーションモデルとして、当時注目を集めていたアメリカンのモデルCM250Tが登場した(1980年)。ティアドロップタンクにアップハンドル、低いシートなどは確かにアメリカンだったが、高回転の10,000rpmで最高出力26PSを発揮するロードバイク的なエンジンは、速さよりも乗りやすさを求めるユーザーにとっては『?』マークだった。それを知ってか知らずか分からないが、翌年、すぐさま新モデル250T マスターと250T LAカスタム(今回描いたイラスト)がリリースされた。
空冷 4スト並列2気筒はCM250Tと同じだが、排気量233ccの新エンジンは低回転トルクが太く低速が楽しめる、全く違う個性を持っていた。また軽量設計のダイヤモンド式フレームや各所の軽量化などによって、乾燥重量130kg(マスター)までシェイプ。軽快で取り回しのしやすいボディ、足つきの良いシート、リッター58kmの高燃費エンジン、低価格など、利点が満載。ツーリングに、日常の足代わりに、マルチに楽しめるアメリカンとして人気になった。
オーソドックスなスポークホイール&ドラムブレーキのマスターに対して、LAカスタムはアルミ製のブーメラン型コムスターホイールとデュアルピストンキャリパーのフロントディスクブレーキ、チューブレスタイヤを採用。よりスポーティな内容になっていた。翌年(1982年)には、スポーツバイクでは国内初となるベルトドライブ(ケブラー・コードが組み込まれた)の250TマスターS・Dも加わり3モデルになった。
沖縄発祥のエアロブランドであるクローバーは、当時から斬新なアイデアを元に、様々なデザインを採用したエアロを発売していた。その中でも特徴的だったのが、ハイスペックシリーズだ。これは、ロングホイールベース加工を施した車両を前提として作られた市販エアロで、一般的にはワンオフ加工で対応するような長さやアグレッシブなデザインを、そのままポン付け可能なボルトオンエアロとして発売した画期的な商品だった。
このCJ44系スカイウェイブは、2009年当時の「トランスクーター」誌で表紙を飾った車両である。ブーム到来と共に、各社が似通った雰囲気のエアロを乱発していた状況を冷静に受け止め、一目でクローバーだと分かる独創的なデザインを各部に採用。しかも、他社ではありえないような、「こんなパーツも市販するの?!」といういい意味で驚かされるエアロが商品展開された。その驚きを与えることこそが、クローバーが目指していた揺るぎないテーマだったのだ。
このCJ44系スカイウェイブ用で印象的な製品は、ロングアンダーパーツ、インナーパーツ、リアアンダーパーツ、そしてFRPシートだ。詳細は各写真で解説するが、どの商品もデザイン性だけではなく、実用性から考えられたアイデアエアロであることを強く実感する。エアロメーカーとして本土から離れた土地で勝負するために、いかにインパクトを与え、かつ意味のある商品を世に生み出すか。同社のその情熱を感じ取ってほしい。
NX400は、市街地からフラットダートまで幅広く楽しめるクロスオーバーモデルです。コンパクトで扱いやすい車体に、低中速から力強い水冷2気筒エンジンを搭載。従来モデルの400Xをベースに外観を一新するとともに、装備を充実したのがこの車両です。新しくなった車体デザインは、アドベンチャー色の濃いシルエットです。また、後輪への駆動力を制御するセレクタブルトルクコントロールも採用。滑りやすい路面でライダーをサポートします。
パワーユニットは扱いやすさとパワフルな走りを両立したDOHCの水冷2気筒エンジンです。最高出力34kW(46PS)、最大トルクは38Nm。レバー操作を軽くし、シフトダウン時のショックも和らげるアシスト&スリッパークラッチも装備しています。タイヤサイズはフロントに19インチを採用。ホイールデザインはY字型の5本スポークで、縦方向の剛性を最適化することで路面からのフィードバックと乗り心地に寄与します。
車両重量は196kg、シート高は800mm。アップライトな乗車ポジションによりライダーの視点は高く、風景を楽しみながらのライディングが可能です。また、必要十分な剛性を確保しながらも、適度にしなりを活かしたフレームワークが多様な路面に対応。サスペンションは、フロントにインナーチューブ径41mmのショーワ製SFF-BP倒立フォークを、リアに分離加圧式シングルチューブタイプを採用。安定感のある走りに貢献します。
メーターパネルには5インチフルカラーTFTを採用。豊富な情報の表示は、バー/サークル/シンプルの3タイプのレイアウトから選ぶことができます。また、車両とスマートフォンの連携も可能です。スマートフォンをブルートゥースで接続すれば、ハンドルスイッチやヘッドセットの音声によってマップやミュージックアプリなどを操作できます。
車体色はパールグレアホワイトとマットバリスティックブラックメタリックの2種類。価格は消費税10%込みで89万1,000円。発売は2024年4月18日です。
250ccクラスながらもパワートレインをインラインフォーとしたカワサキ・ニンジャZX-25R。アールズ・ギアもリリースされると直ちにパーツの開発に着手し、製品を送り出した。
「4気筒だから得られる高回転、高出力が特色で、それを活かして魅力を高めるようなパーツを作ってみたいなと思いました」と代表の樋渡治さん。かつて国内全メーカーが250の4気筒をラインナップしていた頃を知っており、実用性だけでは量れない、ロマンを持った心をそそるようなバイクに樋渡さんには映ったのである。
2023年秋のマイナーチェンジモデル用のGPスペックフルエキゾーストマフラー。その名のとおり、排気系を丸ごと置き換えられるために全域でのパワーアップを果たす。
サイレンサーのカラーリングは、上の艶やかなチタンドラッグブルーと、こちらの画像のチタンポリッシュの2種類が用意されている。チタン材による大幅な軽量化もポイントだ。
そして2023年秋にはニンジャZX-25Rのマイナーチェンジが敢行された。中でもマフラーのサイレンサー部分別体になったことが、車両のカスタマイズの観点からはトピックとして上げられる。それによってスリップオンタイプの製品化が果たせたのは大きい。レーシングライクなスタイリングへの変化や、軽量化による運動性能の向上、そして4気筒らしい音質、作り込まれた高い『アールズ・ギアクオリティ』を楽しむことへの敷居が下がったことは、ユーザーにとってのメリットであるだろう。
GPスペックスリップオンマフラー。サイレンサー部分のみの置き換えになるため、リーズナブルにスタイリングのアップやサウンドが楽しめるのもスリップオンタイプの魅力だ。
GPスペックスリップオンマフラーも、カラーリングはフルエキ同様に2種類。デザインは多角形タイプの異形サイレンサーを採用しており、レーシーな雰囲気を高めている。
そして、アールズ・ギアマフラーの真骨頂を味わいたいのならば、排気系を丸ごと置き換えるフルエキゾーストだ!! 込められた性能は2023年の世界耐久レースに参戦するマシンに採用されたマフラーを継承しており、そちらはル・マン24時間耐久レースではデビューウインも果たしている。ニンジャZX-25R用においても、全域でのパワーアップに加えて、フルチタン材による圧倒的な軽量化による運動性能の向上も特筆すべき点だ。ルックス、ポテンシャル共にレーシングライクだが、排ガスや騒音規制にも適合しており、ストリートからサーキットまで走る楽しさが広がるのは大きなポイントであろう。良好なパワー特製に、心地良いサウンド、そしてスタイリングアップと、カスタムマフラーに求められる要素の全てを高い次元で成立させているのである。
こちらはマイナーチェンジ前モデル(適合型式:2BK-ZX250E)用のGPスペックチタンフルエキゾーストマフラー。カウルの間から見えるエキパイも魅力といえるだろう。
■ NINJA ZX-25R SE/KRT EDITION(’23〜) GPスペック スリップオン マフラー
スリップオン(チタンポリッシュ) ¥107,800(税込)
スリップオン(チタンドラッグブルー) ¥113,300(税込)
ニンジャZX-25Rではライディングステップも製品として加えられている。マシニングによってジュラルミンのブロック材を加工してゆく削り出しの行程によって製作されている。企画から設計、試作、量産に至るまでアールズ・ギア社内による一貫製造だ。それによって肉抜き加工などの高い作り込みが可能になっているのである。
工場内には、削り出し加工を行うための手前の最新鋭のマシニングセンタを始めとして3台が稼働している。自社内で設計から量産までを完結できているのが高品質の由来の一つ。
そして特に留意したのが剛性の確保と、その左右のバランスを整えた点にある。改めて言うまでもないだろうが、ステップは単に足を置いておくだけの役割ではない。コーナリングでの倒し込みの際などの荷重のコントロールに大きく関わっており、剛性が低ければライダーの意志が的確に伝わらず、左右で差があれば違和感の原因になってしまう。だからといって、肉厚を上げれば良いかと言えばさにあらず。今度は重量が嵩んでしまう。なので必要外の部分を可能な限り削り取ったりの加工が必要になってくるのだ。
それには代表の樋渡さんのトップカテゴリーでのプロライダーだった知見が生かされており、『レーシングコンセプト』のネーミングに相応しい製品になっている。機能的には高い操作フィーリングなどのフルスペック的な内容だ。
ニンジャZX-25Rに装着された状態のブレーキ側のレーシングコンセプトライディングステップ。こちらは表面処理を素材感を味わえるクリアシルバー仕上げとしている。
そして、機会があったら是非とも実物を御覧頂きたい。仕上がりが実に見事なのだ!となるとカラーチョイスはいかに?素材感を感じさせるクリアシルバーなのか、あるいはシックなブラック?それとも存在を主張するオレンジゴールドにするのか?悩ましいけど楽しい問題であろう。
ブレーキ側のレーシングコンセプトライディングステップを真横から見た状態。いずれのカラーもヒールプレートに『R'S GEAR Racing Concept』のロゴが入れられている。
こちらの画像は、ブレーキ側のレーシングコンセプトライディングステップを斜め後方から見た状態。カラーリングは3種類が展開されており、こちらはシックなブラック仕上げ。
チェンジ側はKQS(カワサキクイックシフター)非装着車には、別途オプション品(品番(AC-01-0100-BKP3)の購入が必要になる。画像はクリアシルバー装着車両。
チェンジ側の真横。ステップの位置は左右共に選択可能なマルチポジションタイプ。ベアリングが採用されており、スムースで心地良いシフトフィーリングも実現している。
左側のオレンジゴールドのレーシングコンセプトライディングステップを、斜め後方から。随所に施された肉抜き加工が見える。本品はZX-4Rにも装着可能になっている。
今後のニンジャZX-25R用パーツの展開について尋ねると「将来的にはハンドルを手掛けてみたいですね」と樋渡さん。マフラーやステップの作り込みや仕上がりの美しさを見れば、こちらもアールズ・ギアらしいクオリティを持った製品となるのは間違いなく、質や楽しみが高まったライディングシーンとなるに違いないのだ。
■ Racing Concept ZX-25R・ZX-4Rライディングステップ
適合車種:ZX-25R(’20~’22)(’23~)/SE/SE KRT EDITION
ZX-4R SE(’23~)、ZX-4RR(’23~)/KRT EDITION/40thANNIVERSARY EDITION
ブラック
オレンジゴールド
クリアシルバー
アールズ・ギア
住所:三重県亀山市能褒野町62-9
電話:0595-85-8778
営業時間:9:00~18:00
定休日:土、日、祝日
https://www.rsgear.co.jp
Vespa GTV
オードリー・ヘップバーン主演の名作映画『ローマの休日』や松田優作のドラマ『探偵物語』などでのベスパの活躍の話をしたところで、イマドキのヤングにはピンとこないだろうが、実車を目の前に差し出してあげれば「おおっ! なんてカッコいいスクーターなんだー!!」と思わず卒倒するに違いない。これがピアジオが生み出したイタリアを代表するスクーター(バイク)、かのベスパであるぞ。
元々航空機メーカーであったピアジオが、第二次世界大戦後に復興を掲げて造り上げた初代ベスパの誕生は1946年のこととされている。足を揃えてボードに乗せることで雨風を防げることはもちろん、スカート姿の女性からも支持されるなど、ベスパは世界中の人々に愛されて大ヒット。スクーターの代名詞的な存在となったのだ。
そんなベスパ GTVの最新バージョンは75年以上にもなるベスパの魅力を凝縮したかのようなルックスで纏められており、さらにベスパ史上最強パフォーマンスである約24馬力を絞り出す278ccエンジンを搭載するスポーティなモデルとなっている。
昭和52年製である私のバイク人生をよくよく振り返って考えてみると、ベスパという存在が近かったかと言うとそうでもないことに今さらながら気づく。
16歳で免許を取得してすぐは、もはやブーム末期となっていた中古のレーサーレプリカを手に入れて日々峠道に通うことからはじまり、ネイキッド、ジャメリカンチョッパー(ジャパニーズアメリカン)、TW、ビグスクなどの流行を横目にバイクメディア業界に入り、そこから外車ブランドにどっぷりと浸かった。そのような流れの中でベスパというのはいつも憧れの存在ではあるものの所有することはなかったというのが現実だ。
それでもベスパが気になってやまないのは、やはりスクーター=ベスパという図式がDNA的に頭脳に組み込まれているからに違いない。ただ最近はそれも我々世代くらいまでの話なのかもしれないと思うようになってきた。そもそも私が子どもの頃にはハイテステルほど日本中に原付スクーターが溢れかえっていた。その原付スクーターが誕生した源流を辿るとベスパといういわゆる始祖的な存在にぶつかる。まあモッズカルチャーのことを知ってからさらにベスパに興味が湧いたし、バイク雑誌を手掛けている頃はしばしば広報車両を借り出すこともあったが、どちらかと言えば多くの人々にバイク=ハーレーダビッドソン、自動車=フォードやメルセデス・ベンツのような代名詞的な認識として感じられていた時代があったことなどと同類のイメージで私もここまで来てしまったのである。
そんな重要な存在であるにも関わらず、現在街中でベスパを見かける機会はほとんどないと言っていい状況だ。天邪鬼な性格である私は思わず「イマでしょ!!」とベスパに触手を伸ばしたと言うわけである。セレクトしたのは昨年登場したGTVの最新モデルでベスパ屈指のホットモデルだ。
ベスパのラインアップはどれを選んでもベスパだと直感的に伝わってくるデザインで纏められているのだが、その中でもGTVは他と一線を画す特徴的なスタイリングが与えられている。例えば「ファロバッソ(ローヘッドランプ)」と呼ばれるフロントフェンダーに取り付けられたヘッドライトや、ノーカバードタイプのバーハンドルなどがソレであり、正統派クラシックでありながらモダンなエッセンスも織り交ぜたデザインはひと目見ただけでメロメロになってしまう。
セルスターターを押すとすぐにエンジンは目を覚ました。そのサウンドはシングルエンジン特有の歯切れの良さを持ちながらも優しく響き渡る。軽くスロットルを開けると車体は元気よく前へと進み始めた。ビンテージモデルと比べれば樹脂パーツを採用している部分も増えてはいるが、総じて質感は高いと思えるものであるし、何よりも車重が軽く感じられる。さらに最高出力23.8馬力、最大トルク26Nmというハイポテンシャルエンジンと、長年熟成されてきた自動エンジンクラッチの絶妙なセッティングで想像以上に速く感じられるのだ。
シート高こそ790mmとロードスポーツ的な数値であるが、いわゆるビッグスクーターのようにシートやボディが横に広がって足つき性をスポイルするようなことがないのもポイントだ。前後12インチのタイヤサイズは現代的には小径に思えるが、ホイールベースの短さと相まって小回りが利く、だからストリートステージで敵無し状態で快走を楽しめるのである。
大戦後、まだ荒れた道路状況で生まれたベスパは、タイヤパンク時に容易に交換することができるよう考えてフロントホイールを片持ち支持にしたと言われているが、この独特な懸架装置によるフロントタイヤの接地感がすこぶる良く、ワインディングロードなどツイスティな道でもヒラヒラとパスすることができた。
日本ブランドでの250ccオーバーのスクーターとなると、そのほとんどが実用性や快適性を追い求めたスタイルになってしまいがちではあるが、GTVはサーキットに持っていってスクーターレースでも挑戦してみようかなという気にさせる。このスポーティな味付けはお国柄と言うか国民ライダーのニーズの相違が出ているのだろう。
見た目のカッコよさや走らせた時の爽快感、これにはベスパに太刀打ちできるモデルは少ない。街中ではどこに置いても通行人から注目を浴びるし、ちょっと離れたところから眺めてはニヤついてしまう。それに加えてバツグンの気軽さがあるので、広報車の借用期間中は用事もないのについつい乗ってしまっていた。ベスパ GTVは老若男女問わずモテるバイクである。これは確実であり私自身借用期間が終わっても車両を返却したくないと本気で思った。
最後に。返却時にちょっとした出来事があったので付け加えておく。今回テストに使用したベスパ GTVはシミー現象が感じられた。ハンドルを握っている時に手に伝わってくる程ではないのだが、ハンドルから手を離すと左右にブルブルとハンドルが振られるアレだ。まあ別にバイクを走らせる限りこのような症状が出ることもあるのであまり気にしていなかったのだが、タイヤの空気圧もチェックしたが改善されなかった。おそらくはタイヤのバランス調整やベアリング関係の問題なのだと思われる。症状が出るのは全車両ではないだろうし、原因を追究ししっかりと対応しているショップもある。その点を理解してハッピーベスパライフを謳歌して欲しい。
スズキのオフロードバイクの代表と言えば2ストの「ハスラー」だった。シンプルな構造、軽量、ハイパワーなど利点の多い2ストだが、70年代の終わりごろから排気ガス等の問題などによって、主流は4ストへと移ろうとしていた。
4ストの波はオフロードバイクにも波及。ホンダXL250R、ヤマハXT250、カワサキKL250……4ストバイクが続々登場、残るはスズキだけとなった。2ストをメインに作っていたスズキも、モトクロッサー人気に後押しされ、ついに4スト250ccのデュアルパーパスモデル、DR250Sをリリースした!
新たに開発された、最高出力22PSを発揮する250ccの4サイクル空冷単気筒SOHCエンジン。4バルブのメリットを生かしたTSCC(2渦流燃焼室)エンジンで、クイックネスなスロットルレスポンスとフラットなトルク特性が特徴。さらに優れた吸入効率と燃焼効率により高燃費(テスト値で56.2km/ℓ)を実現していた。約38kgの軽量エンジンを軽量ダイヤモンド型のフレームに搭載、乾燥重量は114kgにまで抑えられていた。
もう一つの特徴はモトクロスレースでその高性能を実証していたフルフローターサスペンションの採用。非常に優れた作動性を持ったサスペンションで、腰が強く、長時間のハードランでも高い安定性を誇っていた。そしてタイヤはオフロードで強力なグリップ力を持つ新パターンのタイヤを装着。林道やダートでその実力を発揮した。
デザイン的な派手さはなかったが、実用的で扱いやすくオフロードに強いことから、ツーリングや林道愛好者からの支持は高かった。
電動キックボードは元々原付と同じ扱いだったが、2023年7月1日に道路交通法の一部が改正され、特定小型原動機付自転車に分類された。これにより16歳以上は免許不要、走行場所は車道・自転車レーン・歩道(条件付き)と範囲が広がり、自転車に近い感覚で移動できるようになった。今回紹介する電動キックボード、Jasion J-Boardも法改正が適用された車両の一つ。アメリカで電動自転車の販売を拡大している「Jasion」が新たに発売したもので、日本では正規輸入販売店Jasion Japanで買うことができる。
そのスペックを見ると、500Wのハイパワーモーターを搭載し、傾斜角度20°の坂道も楽に登ることができる。また、歩道用のエコモードと公道用のパワーモードの2つの走行モードがあり、それぞれの最高速度はエコモードが5km/h、パワーモードが19km/hとなっている。制限速度より1km/h低い設定にすることで、法改正に対応するだけでなく、走行時の安全性を高めている。バッテリーの充電時間は4.5時間で満充電で最長35km継続して走ることができるという。タイヤサイズは大型の10×2.5インチと大型かつワイドで、前輪にはドラムブレーキを、後輪にはディスクブレーキを装備している。
また、バックミラー・クラクション・フロント/リヤウインカー・フロントライト・最高速度表示灯・後部反射器・テールランプ・ブレーキランプという、公道走行に必要な付属品が全て標準装備されているため、自分で部品を追加購入したり、取り付けないといけないという心配もない。
最大の特徴は折りたたみやすさと、そのコンパクトさだろう。折りたたみ方は前輪上部についているロックレバーを外して折りたたみ、ハンドルについている金具を後輪部分にひっかけるだけ。その時間は約1秒。工具も使うことなく、簡単に折りたたむことができ、家での収納や車への積載に手間がかからない。
折りたたみサイズは1130×590×520(mm)。フォルクスワーゲンのゴルフヴァリアントのトランクに入れて、このサイズ感だ。車に積んで運ぶことで、旅先や出張先での移動の足として、またアクティビティとして活用することができる。
さらに細かく見ていこう。アクセルは一般的な電動キックボードと同じ。握った時に右手の親指が当たる部分にレバーがついており、これを下に押すことでアクセルが開く仕組みだ。一方、ハンドル左側にはウインカーとクラクションのスイッチがある。位置は少し低めのため、グリップから手をずらして操作することになるだろう。なお、ブレーキ操作は自転車やスクーターと同じで、前後ともにブレーキレバーで操作する。
ディスプレイでは速度や走行モードなどが確認できる。USBポートが付いているため、ナビやマップを起動させながら走行する時も、スマホの電池の減りを気にせずに使用することができる。
ステップの幅は18cmと広め。表面には滑り止め加工がされているため、凸凹している道やコーナーでもしっかりと踏ん張りが効き、安定感を感じられるだろう。
バッテリーは着脱式。専用の鍵を使ってロックを解除し、取り出すことができる。マシンに装着したまま充電をすることはもちろん、バッテリーをコンセントのある場所に持って行って充電することもできる。
実際に乗ってみてまず感じたのは、加速のスムーズさだ。モーター特有のダイレクトなトルク感というよりは、徐々にパワーが高まっていくスムーズな加速感のため、初めて電動の乗り物に乗る人でも安心してアクセルを開けられる。とはいえ、操作がダルいわけではなく、アクセルのスロットル開度に対してリニアに反応してくれるため、加速の感覚が掴みやすく、アクセル開度に対して予想以上のスピードが出るというような、感覚のズレによる怖さを感じることもなかった。モーターのパワーをより実感するために、あえてスピードを落とした状態から傾斜が20°ほどある坂道を登ってみたが、登り始めでもたついたり速度が落ちるということもなく、スイスイ登っていくから驚いた。なお、歩道ではエコモードに切り替えて走行する。最高速度の5km/hは思った以上に遅く感じるが、スピードが遅いことで車体が不安定になることはなかった。
フロントにドラムブレーキ、リヤにディスクブレーキを採用しているため、ブレーキの制動力が高いのも安心できるポイントだ。ただし、制動力がある分、少しレバーを握っただけで強めにブレーキがかかるため、乗り始めはゆっくりとレバーを握り、感覚を掴むと良いだろう。
大径の10インチタイヤを使用しているため、凸凹した道でも安定感がある。段差も2cmほどの高さまでなら問題なく乗り超えることができた。また、ステップ幅が広いため、足場を窮屈に感じることはなかった。
J-Boardの総重量は21kg。腕力のない私でも、折りたたんだ状態で持ち上げることができた。電動キックボードは街中だけでなく、旅先や出張先、キャンプ場などでの足としても活用できるため、どこへでも持ち運びやすい軽さは魅力的だ。また、マシンを押して歩く時もさほど重さを感じることはなかった。街中で気になる場所を見つけたら、キックボードを降りて押しながら散策してみるという楽しみ方もできるだろう。
なお、専用輪行バッグに収納することで電車内などにも持ち込むことができる。折りたたむ構造上バッグからミラーが飛び出す形となるが、バックのおかげでかなり持ち運びやすくなる。
気になる一般販売予定価格は14万9000円(税込)と、なんと15万円以下で手に入れることができる。現在は一般発売にあたりMakuakeにてクラウドファンディングが行われている。超早割はすでに完売しているが、早割では52%オフの7万2000円(税込)で、マクアケ割なら46%オフの8万1000円(税込)で購入可能。今なら割引を使ってかなりお得に手にいれることができる。いずれも2024年6月末までに手に入るという。移動の足として電動キックボードを検討している人はこの機会をぜひ掴んでほしい。
Jasion J-BoardのMakuakeページを見る >>
KTM 390 DUKE
MotoGPやダカールラリーなど、トップカテゴリーのレース界で活躍するKTM。そのアグレッシブなイメージのままに進化を続けるDUKEシリーズが2024年モデルで一新された。KTMにとって2024年はDUKE誕生30周年という記念すべき年であり、第3世代となった390DUKEも相当気合が入ったものとなっている。エンジンと車体、外装を含む全体の90%のコンポーネンツを新設計とするなど、従来モデルとは別物と言っていい進化を遂げた。
デザインは従来のストリートファイター風から、より洗練されたスポーツ純度の高いデザインへと見直されている。フューエルタンクは形状を改め表面の質感をアップ。タンクスポイラーも鋭くシェイプされた。新しくなったLEDヘッドライトやTFTディスプレイが高級感を醸し出している。
エンジンも次世代型へと進化した。LC4c(コンパクト)と名付けられた軽量コンパクトな水冷単気筒の排気量を399cc(従来は375cc)までアップ。シリンダーヘッドとギアボックスを新設計し、従来から1psアップの最高出力45psを実現しつつEURO 5+にも対応している。
シャーシも新設計となり、フレーム剛性を最適化したスチール製トレリスタイプと軽量アルミダイキャスト製サブフレームの2ピース構造とし、トリプルクランプを含めたディメンションも見直された。
サスペンションは前後ともトラベル量150mmを確保したWP製APEX倒立フォークに同じくAPEX製リアショックを採用。スポークの数を減らした軽量ホイールと改良された軽量ディスクブレーキ(フロントφ320mm+4P、リアφ240mm+2P)によりハンドリングを向上。湾曲スイングアームに合わせてマフラーをコンパクト化、オフセットされたリアショックによるエアボックス配置の最適化などにより、従来モデルに比べてシート高を10mm低く設定するなど全面的にリファインされている。
また、3種類のライドモード(ストリート/レイン/トラック)に加え、最新バージョンのスーパーモトABSとコーナリングMTC、ローンチコントロールを標準装備。オプションでクイックシフターを用意するなど電子制御も上級モデル譲りだ。さらにKTMコネクトアプリを介した音楽プレーヤーや着信応答、ナビゲーションなど便利な機能も新たに搭載。まさに新世代のマシンに相応しい仕様となっている。
明らかにDUKEなのだが、よく見ると従来モデルと同じところがない。スタイルだけ見ても、足長のモタード風だった初代(2014~)からファイター風の先代(2017~)を経て、新型はより正統派のスポーツネイキッドへと洗練させた。従来モデルから引き続きインド生産になるが、ディテールの作りも含めて非常にクオリティが上がっている印象だ。
今回、新たに投入されたLC4cエンジンはパワフルかつ洗練されていて、荒々しいというよりは緻密な感じ。加速しながら滑らかなタッチのクイックシフターでギアをかき上げていく高速コーナーが最高に気持ちいい。臆せずにスロットルを思い切り開けられる快感はこのクラスならではだ。その意味で初心者から扱いやすく、ベテランの好奇心も満たしてくれるポテンシャルも十分にある。回転上昇がスムーズで気持ちよく、排気音もよりレーシーな抜け感のあるサウンドになった。一方で従来モデルの中速域での弾けるトルク感がやや薄らいだ気がするのはユーロ5+の影響だろうか。KTMの開発者によると、環境性能を追求しつつ馬力を稼ぐためにも排気量拡大が必要だったらしい。
ハンドリングは軽快かつシャープで安定感があり、狙ったラインを正確に切り取っていく走りはKTMならでは。車体はカッチリしてサスペンションはしっとり。ブレーキも強力で入力に対する効きもリニアでコントロールしやすい。従来モデルに比べて走りの面でトータル的にワンランク余裕が増した感じだ。本気で走らせれば相当スポーティで、腕に覚えのある猛者なら限界まで攻め込んでみたくなるポテンシャルを持っていると思う。否そういうコンセプトで全面刷新してきているのだ。
ライポジの自由度も上がった。シートが低くなったがウレタンは逆に厚みが増して快適性もアップ。また座面がフラットかつ長くなり前後に動ける余裕ができたおかげで、加速時に腰を引いて伏せたり、ハングオフしたときに自然なフォームが作れるようになった。結果的にリラックスして乗れて、長距離も疲れにくくなったことも大きなポイント。ちなみに流れの速い欧州の高速道路でもストレスなくクルーズできた。
車重が153kgから165kgへと増えているのが気になったが、そう感じさせない軽快なハンドリングだ。理由としてはトリプルクランプのオフセット量の見直しと軽量ホイールの採用。加えて標準装着の「ミシュラン・パワー6」が軽いことも奏功していると思う。ちなみにパワー6は埃っぽいスペインの峠道でも常に信頼感のあるグリップで応えてくれた。街中でのUターンでも十分なハンドル切れ角があり、人が歩く程度のスピードでも回転数とトルクが安定していて扱いやすさは変わらなかった。
タンク容量も1.5L増えて15Lになったことで航続距離も400kmに届くとか。楽なライポジと合わせてスポーツツーリングも楽しめると思う。見た目のグレード感も増して、本気を出せばクラス最強級に速いし、それでいてアクセルを開けても使い切れるパワー。搭載された電子デバイスも400ccクラスとは思えない充実度だ。KTMの心意気を感じるマシンである。
2024年1月26日に日本国内で発売された普通二輪免許で乗れる中型セグメントのモダンクラシックモデル、新型「Scrambler 400 X」。マーケットで話題のこのモデルは、英国のヒンクレーで企画・設計されており、トライアンフらしい徹底した作り込みと上質な仕上がりを誇るクラスを超えた本格派スクランブラーだ。
78万9,000円(税込)という同セグメントの国内モデルとも十分戦える価格も魅力的であるが、Scrambler 400 Xの真の価値はそこにはない。伝統の「Trophy」をオマージュした4バルブDOHCシリンダーヘッドの水冷398cc単気筒「TRシリーズエンジン」は、フィンガーフォロワーロッカーアームや、フリクションを低減するDLCコーティングの採用などにより、吹け上がりの軽さと扱いやすさを実現。6速トランスミッションを搭載し、最高出力40ps/8,000rpm、最大トルク37.5Nm/6,500rpmを発揮する。
サスペンションには43mmビッグピストン倒立フロントフォーク、リザーバー付きモノショック式リアサスペンションを装備。車両重量は180kg、シート高はスクランブラーの特性を活かすため、835mmと高めではあるが、絞り込まれたシートとスリムな車体の恩恵により足つき性は数値のイメージよりもよい印象だ。軽快に吹け上がるTRエンジンは6,000rpmを超えたあたりから本領発揮。エグゾーストサウンドも非常に魅力的。ワイドハンドルバーによる操作性の高さとスクランブラー特有のアップライトなポジションにより、市街地からちょっとしたダート走行までストレスなくこなすことができる、これぞスクランブラーの真髄と言える隙のないマシンに仕上げられている。
1918年にアメリカのオレゴン州ポートランドで創業された世界最高峰との呼び声が高いワークブーツメーカー「WESCO(ウエスコ)」。100年以上の歴史に裏付けられたそのクオリティーは、他の追随を許さない本物のワークブーツとしてハードワーカーから絶大な支持を得ている。メイドインアメリカにこだわり続け、熟練した職人の手により生み出されるタフなウエスコブーツは、一生をかけて付き合うに値する人生の相棒にもなりうるワークブーツであり、バイクギアとしても十分に機能する。事実、スタイルにこだわるバイク乗りからも高い評価を得ており、ハーレーを中心としたビンテージモデルや、メーカーを問わず現行のモダンクラシックモデルなどに乗るライダーからの注目を集めている。
ウエスコの代表的なレースアップブーツと言えば「JOBMASTER(ジョブマスター)」が挙げられるが、今回取り上げるのはスマートな印象が強い「WARREN(ウォーレン)」である。その要因は、アッパー部分にハードな印象のヘビーステッチを使わず、存在感を抑えたライトウエイトステッチだけで縫い上げられていることにある。これにより防水性能も高まりバイクライドに非常に適したモデルとなっている。
レースアップブーツ最大の特徴であるホールド感は、バイクの操作性に直結する。足元が守られているという安心感もあり、バイクライドに集中することができる。マシンのヒールグリップも容易になり、コーナリング時のステップワークやシフト操作、フットブレーキに関してもブーツのほどよい重さにより軽く踏み込むだけでブレーキの効き具合を調整することが可能。ソールのグリップ力により停車時の安定感も増し、特に雨天時はその恩恵を実感できるはずだ。
数多くのモデルをラインナップするウエスコブーツは、レザーカラーやその組み合わせ、ソールやハイト、つま先の形状などのカスタムにより、用途に応じた理想の一足を作り上げることができる。ここで今回使用したウォーレンのカスタムメニューを紹介させていただこう。
踵から履き口までの高さはショートタイプの8インチ(スタンダードは10インチ)としている。レザーはたっぷりとオイルが染み込まされているブラック・タイ・ドメインで、水弾きもよく防水性にも優れているのでバイクライドには最適なレザーと言える。ソールはクッション性と耐久性、耐油性を誇る#100 VIBRAMで、踵の高さを抑えたロワーヒール仕様とされる。
つま先の形状は丸みを帯びたラウンド・トウ、シューレースブーツの顔となるレーシングパターンはレギュラー・トウ、アイレットはオールニッケル(フックもアイレットに変更)とされる。ステッチはレザーカラーに合わせてオールブラック、シューレースはブラックナイロンレース、バックステイのループは見た目をシンプルにする目的で排除されている。
今回のウォーレンは、レザーからすべてのステッチ、シューレースなど徹底的に黒にこだわり装飾的な要素は皆無。ニッケルアイレットのシルバーカラーのみがワンポイントとなっている。シンプルかつソリッドなスクランブラー400Xとの組み合わせも申し分なし。引き算の美学で製作されたこのウォーレンは、流行やトレンドとは無縁であり、この先何十年と履き続けても決して廃ることはない。
2001年8月に、ヤマハよりTMAXが発売開始されてから、今年で23年目を迎える。ヨーロッパでのビッグスクーターでの需要増加に伴い、既存の250cc車両の快適性や便利さと、スポーツ走行を楽しむという要素を両立させる。そのために、排気量499ccの水冷4ストロークDOHC4バルブ並列2気筒エンジンを採用し、それをフレームに搭載したことで、スイングアームが存在。フロントフォークもトップブリッジとアンダーブリッジで支える正立式テレスコピックを採用と、既存スクーターとは全く異なる、むしろ一般的なオートバイと同様の構造で生まれたのが、このTMAXだった。その後、フルモデルチェンジを繰り返し、現在は2020年に発売開始となった6代目、いわゆるSJ19Jが新車として発売されている。
日本国内のビッグスクーターカスタムと言えば、ローダウンにロングホイールベースという、見た目優先のドレスアップが主流だった。しかし、このTMAXが登場しその面白さに気付いたユーザーが全国的に増えたことで、TMAXのカスタムも本格化。その結果、250ccクラスとは異なる、TMAXならではの走りを追求したスタイルが、流行していったのだ。
今回紹介するこちらの車両は、神奈川県茅ケ崎市にあるプロショップウェーブが、2009年に製作した1台になる。映画「ワイルドスピード」で流行した4輪のスポーツコンパクト系のスタイルや、ドリフトで人気だったバイナルスタイルが、いつしか“湘南系”と呼ばれるように。このマットブラック&レモンイエローのTMAXも、そんなカテゴリーに組み込まれる車両だった。
外装類は、TMAXと言えばココ!というほど、多彩なラインナップで有名な弥生製エアロや自社オリジナルを使いつつ、各部にはダクト加工を施すなどして、当時の話題のアイテム&テクニックを満載。マフラーは、走りにわずかなヤンチャさをミックスしたカチ上げ系。そして僅かなローダウンと、速さを楽しむための駆動系チューニング。見た目は渋ハデ。でも、峠ではスポーツバイクに劣らない走りが可能。日本のTMAX文化は、このルックスと共に、今でも世界中から注目されていることを知ってほしい。
同社の主力製品である絶版車2ストロークモデル用チャンバーや現行4ストロークモデル用マフラーは、ライダーとしての経験やスキルを存分に発揮しながら、最高出力ばかりを追求するのではなく、公道での使用を前提とした常用領域での扱いやすさを重視しているのが特徴だ。
2スト好きにとってはチャンバーブランドとしてのイメージが強いケイツー・テックだが、実は創業以来4ストロークスクーター用のスポーツマフラーの開発にも定評がある。原付二種の125ccクラスや軽二輪の150~160ccクラスは市場の大きなアジア諸国の主力クラスとなっており、スポーティモデルからラグジュアリーモデルまでバイクメーカーも積極的な機種展開を行っている。
スクーターはヘッドライト周りをはじめとした外装パーツのデザインによって車体全体のイメージが大きく変化するが、エンジンや駆動系は複数モデルで共有され、マフラーに関してはあくまで排気系統の一部として処理されていることも多い。一方、ケイツー・テックのスクーター用マフラーラインナップは、単なる排気装置ではなく明確な個性を与えるカスタムパーツとして開発されているのが大きな特徴である。
可変バルブタイミングを採用した新世代のブルーコアエンジンを搭載した125ccのヤマハシグナスグリファスとNMAX、同じく155ccブルーコアエンジンを搭載したヤマハNMAX155とX FORCE用に開発されたGP-R(ジーピーアール)シリーズは、シリンダーヘッド部からサイレンサーに向かう手曲げならではの美しい曲線を描くステンレス製エキゾーストパイプと、コンパクトながら音量を抑えつつ重厚感のある低音を響かせるサイレンサーの2ピース構造を採用。純正マフラーに比べて圧倒的にコンパクトなサイレンサーは、素材やデザインが異なる4タイプがあり、ユーザーの好みに応じたスタイルを実現可能。
気になる走行フィーリングは、街中で使われることが多いスクーターの特性に合わせて、スロットルを開けた際にレスポンス良く追従し、中間加速を重視した味付けとなっている。スポーティなスタイリングと低音中心の迫力あるサウンド、さらに実用域でストレスのない走りを楽しめるGP-Rシリーズは、シグナスグリファス、NMAX、X FORCEのカスタムにとって欠かせないマフラーとなることだろう。
スクーターの純正マフラーはサイレンサーの容積が大きく、エキゾーストパイプの存在感が希薄なのに対して、ケイツー・テックのGP-Rシリーズはシリンダーヘッド部分からスイングアーム上方まで長くレイアウトされたパイプが特徴だ。
エキゾーストパイプを曲げるにはNCベンダーを使った機械曲げと、バーナーで加熱したパイプを人間の手で加工する手曲げがある。機械曲げの方が製造効率は高いものの曲げ部分に角ができるのに対して、手間と時間は掛かるが入り口から出口まで曲線がなめらかにつながるGP-Rシリーズの手曲げエキゾーストパイプは、スペシャルパーツとしての大きな見せ場にもなっている。
ステンレス製手曲げエキゾーストパイプからテーパー状に拡大するメガホンサイレンサーは外径φ90mm、テーパー長250mmでバッフルを内蔵。
シグナスグリファス(2022~)用 価格52,800円
NMAX(2021~)用 価格52,800円
NMAX155(2022~)用 価格52,800円
X FORCE(2022~)用 価格52,800円
エキゾーストパイプからつながる140mmのテーパー部分と、外径φ86nn、筒長140mmのストレート部分、エンド部分に3分割の輪切りパイプを組み合わせた3ピースエンドタイプ。
シグナスグリファス(2022~)用 価格52,800円
NMAX(2021~)用 価格52,800円
NMAX155(2022~)用 価格52,800円
X FORCE(2022~)用 価格52,800円
エキゾーストパイプからつながる140mmのテーパー部分と、外径φ86nn、筒長140mmのストレート部分、スラッシュカットのエンド部分を組み合わせたM1エンドタイプ。
シグナスグリファス(2022~)用 価格52,800円
NMAX(2021~)用 価格52,800円
NMAX155(2022~)用 価格52,800円
X FORCE(2022~)用 価格52,800円
外径φ86mm、筒長280mmのオーソドックスな円筒サイレンサーの後端に3分割の輪切りパイプを組み合わせた3ピースエンドタイプ。
シグナスグリファス(2022~)用 価格48,400円
NMAX(2021~)用 価格48,400円
NMAX155(2022~)用 価格48,400円
X FORCE(2022~)用 価格48,400円
外径φ86mm、筒長280mmの円筒形サイレンサーの後端にスラッシュカットのエンド部分を組み合わせたM1エンドタイプ。
シグナスグリファス(2022~)用 価格48,400円
NMAX(2021~)用 価格48,400円
NMAX155(2022~)用 価格48,400円
X FORCE(2022~)用 価格48,400円
レーシーで美しい焼き色が特徴的なチタンサイレンサーは外径φ86mm、筒長280mmの円筒形で、3ピースエンドタイプはサイレンサー後端に3分割の輪切りパイプを組み合わせたスタイル。
シグナスグリファス(2022~)用 価格57,200円
NMAX(2021~)用 価格57,200円
NMAX155(2022~)用 価格57,200円
X FORCE(2022~)用 価格57,200円
外径φ86mm、筒長280mmの円筒形チタンサイレンサーの後端にスラッシュカットのエンド部分を組み合わせたM1エンドタイプ。チタンならではの焼き色が個性的。
シグナスグリファス(2022~)用 価格57,200円
NMAX(2021~)用 価格57,200円
NMAX155(2022~)用 価格57,200円
X FORCE(2022~)用 価格57,200円
通勤や通学といった実用性に加えて、デザインの良さからカスタムユーザーからも大いに支持された、ヤマハの125ccスクーターを代表するシグナスXシリーズ。2003年に登場した初代はキャブレター仕様で、2007年にモデルチェンジを受けたシグナスX/SR以降はフューエルインジェクションを採用している。両モデルとも現在でも中古車市場で高い人気を維持しており、ケイツー・テックでもさまざまなデザインのマフラーをリリースしている。
輪切りピースを溶接したステンレス製エキゾーストパイプから一体的なデザインでつながるメガホンサイレンサーが特徴。街乗りで扱いやすい中間加速を重視した特性で、外径φ90mm、テーパー長250mmのサイレンサーは低音が響くサウンドを実現。シグナスXには年式によってO₂センサーの有無があるため、注文時にバリエーションを選択。メガホンサイレンサーのデザインは同一ながら、ステンレス製手曲げエキゾーストパイプを採用したGP-Rメガホンも用意されている。
Volta(ボルタ)メガホン シグナスX(1・2・3型) 価格50,600円
GP-R(ジーピーアール)メガホン シグナスX(1・2・3型) 価格50,600円
輪切りピースを溶接したステンレス製エキゾーストパイプに、140mmのテーパー部分と、外径φ86mm、筒長140mmのストレート部分からなるサイレンサーを装着。テールエンドは3分割の輪切りパイプ、またはスラッシュカットのM1エンドを選択可能。年式によってO₂センサーの有無があるため、注文時にバリエーションを選択。エキゾーストパイプはステンレスの輪切りピースを溶接したVoltaとステンレス手曲げのGP-Rが用意されている。
Volta(ボルタ)テーパー シグナスX(1・2・3型) 価格50,600円
GP-R(ジーピーアール)テーパー シグナスX(1・2・3型) 価格50,600円
外径φ86mm、筒長280mmの円筒形サイレンサーを使用したSTDタイプには、エキゾーストパイプの違いによりステンレスの輪切りピースを溶接したVoltaと、ステンレス手曲げのGP-Rがある。VoltaはGP-Rよりエキゾーストパイプが短いため、マフラー全体としてもショートスタイルとなる。サイレンサーエンドは3分割の輪切りパイプを組み合わせた3ピースエンドかスラッシュカットのM1タイプが選択できる。Volta、GP-Rともにチタンをラインナップ。
Volta(ボルタ)STD シグナスX(1・2・3型) 価格46,200円
Volta(ボルタ)STDチタン シグナスX(1・2・3型) 価格55,000円
GP-R(ジーピーアール)STD シグナスX(1・2・3型) 価格46,200円
GP-R(ジーピーアール)STDチタン シグナスX(1・2・3型) 価格55,000円
輪切りピースを溶接したステンレス製エキゾーストパイプから一体的なデザインでつながるメガホンサイレンサーが、洗練された車体デザインにマッチする。マフラー特性は街乗りで扱いやすい中間加速を重視し、外径φ90mm、テーパー長250mmのサイレンサーは低音が響くサウンドを実現。メガホンサイレンサーのデザインは同一ながら、ステンレス製手曲げエキゾーストパイプを採用したGP-Rメガホンも用意されている。
Volta(ボルタ)メガホン シグナスX SR 4型/5型(2015年11~) 価格50,600円
GP-R(ジーピーアール)メガホン シグナスX SR 4型/5型(2015年11~) 価格50,600円
外径φ86nn、筒長140mmのストレート部分と140mmのテーパー部分を組み合わせたのがテーパータイプ。エキゾーストパイプはステンレスの輪切りピースを溶接したVoltaとステンレス手曲げのGP-Rがあり、サインレンサーエンドは3分割の輪切りパイプを組み合わせた3ピースエンドかスラッシュカットのM1タイプが選択できる。
Volta(ボルタ)テーパー シグナスX SR 4型/5型(2015年11~) 価格50,600円
GP-R(ジーピーアール)テーパー シグナスX SR 4型/5型(2015年11~) 価格50,600円
外径φ86mm、筒長280mmの円筒形サイレンサーを使用したSTDタイプには、エキゾーストパイプの違いによりステンレスの輪切りピースを溶接したVoltaと、ステンレス手曲げのGP-Rがある。VoltaはGP-Rよりエキゾーストパイプが短いため、マフラー全体としてもショートスタイルとなる。サインレンサーエンドは3分割の輪切りパイプを組み合わせた3ピースエンドかスラッシュカットのM1タイプが選択できる。
Volta(ボルタ)STD シグナスX SR 4型/5型(2015年11~) 価格46,200円
GP-R(ジーピーアール)STD シグナスX SR 4型/5型(2015年11~) 価格46,200円
チタンならではの美しい焼き色が個性的なサイレンサーは外径φ86mm、筒長280mm。ステンレス製のエキゾーストパイプは輪切りピースを溶接したVoltaと手曲げのGP-Rがあり、VoltaはGP-Rよりエキゾーストパイプが短いためマフラー全体としてもショートスタイルとなる。サインレンサーエンドは3分割の輪切りパイプを組み合わせた3ピースエンドかスラッシュカットのM1タイプが選択できる。
Volta(ボルタ)STDチタン シグナスX SR 4型/5型(2015年11~) 価格55,000円
GP-R(ジーピーアール)STDチタン シグナスX SR 4型/5型(2015年11~) 価格55,000円
1390スーパーデュークRエボは、クロモリ鋼管のフレームに水冷V型2気筒エンジンを搭載したKTMの新型フラッグシップネイキッドです。エンジンはシリンダーの内径を従来型より2mm大きくすることで、排気量を1,301ccから1,350ccへと拡大。最高出力は8kW向上して140kW(190PS)に、最大トルクは5Nmアップの145Nmとなりました。また、最新の電子制御サスペンションを採用した足まわりも、同車の大きなセールスポイントです。
外観スタイルはアグレッシブなイメージです。タンクスポイラーは新しくなり、エアロウイングレットが追加となりました。燃料タンクも新設計となり、容量は従来型より1.5L増しの17.5Lに。LEDヘッドランプまわりのデザインもユニークです。周囲の明るさに応じて照度を自動調整するデイタイムランニングライトも採用。テールまわりは、ブレーキランプをターンシグナルと統合しました。車両重量は200kg(燃料を除く)、シート高は834mmです。
サスペンションには、第3世代のWPセミアクティブテクノロジーを搭載。電子制御磁気バルブによる減衰力の調整で、ストリートからサーキットまで幅広く対応します。フロントブレーキには、ブレンボ製STYLEMAの4ピストンキャリパーを採用、マスターシリンダーはラジアル式のブレンボMCSです。また、クラッチのマスターシリンダーもブレンボ製となり、フルードのエア抜きが不要なセルフベンディングシステムが備わります。
エンジン特性やトラクションの制御などを選択できるライドモードも搭載。デフォルト設定のストリートモードは、フルパワー、安定したスロットルレスポンス、トラクションコントロール、そしてウイリー制御という組み合わせです。そのほか、スポーツモードとレインモード、オプションとしてパフォーマンスモードとトラックモードも用意。車体色はブラックとオレンジの2種類、車両価格は消費税10%込で269万9,000円。発売は2024年3月です。
サハラ砂漠を舞台に走る「パリ・ダカール・ラリー」という名のラリーを知っていますか? フランスの首都パリをスタート、アフリカ大陸の砂漠地帯を駆け抜け、セネガルの首都ダカールにゴール。総距離1万キロを超える“世界一過酷なレース”として名を馳せていた。1978年から始まったこのレースは通称「パリダカと呼ばれ、その後も南米、サウジアラビアと舞台を変えながらいまも続いている。
1982年、パリダカで総合優勝を果たしたXL500R改をモチーフに作られたのがXL250Rパリダカール。ラリーバイクのレプリカ版で、通称「パリダカ」と呼ばれていた。ベースとなっているXL250Rは最高出力22ps、6速ミッション、空冷4スト単気筒OHC4バルブエンジンの走破性が高いオフロードバイクで、フロントにエアアシストサスペンション、リアにはモトクロッサーに使われていた「プロリンクサス」を装着している。
そんなXL250Rに、長距離ラリーのパリダカの象徴である、トリコロールカラーの21リットルサイズのビックタンクをセット。一瞬で戦闘的な雰囲気を漂わせるラリーバイクに変貌した。燃費が良いことから、当時は「満タンにしたら東京~青森を無給油で走れちゃうぞ!」と自慢する人もいたとか。
他にも泥跳ねを考慮した大型オーバーフェンダー、たくさん荷物がつめる大型リアキャリア、便利なタンクバックなど、パリダカらしさが満載。パリダカとならどんな悪路でも、いくつもの国境を越えて、遥か彼方まで走って行ける……そんな気持ちにしてくれた。男のロマンをくすぐる、まさにDreams come trueバイクなのである。
GSX-S1000GXは、スポーツツアラーにアドベンチャーの要素を取り入れたクロスオーバーバイクです。乗車ポジションはアップライトで疲れにくく、ハンドルも幅広でコントロールしやすい形状です。車体は、フロントカウルや3段階で高さ調整が可能なウインドスクリーン、ハンドルグリップ部のナックルカバーなどでエアロダイナミクスを追求。フロントカウルの構造は、走行風の巻き込みを抑制するレイヤードデザインとなっています。
車体コンポーネンツは、スーパースポーツモデルGSX-Rの流れを汲んだエンジン、フレーム、スイングアームをベースとして使用。排気量998ccの水冷直列4気筒は、低回転から高回転までの全域で豊かなパワーを発生します。最高出力110kW(150PS)/11,000pm、最大トルクは105Nm/9,250rpm。出力特性はパワーモードセレクターで3つのモードから選択可能。また、スマートTLR(トラクション、リフト、ロールトルク)コントロールも装備します。
サスペンションは、SHOWA製のフロントフォークとリヤショックをGSX-S1000GX用にセッティングして装備。ダンパーの減衰量を電子的に制御するSAES(スズキ・アドバンスド・エレクトロニック・サスペンション)となっています。このSAESは、路面変化に対応して追従性と快適性を向上させるほか、速度に合わせて減衰力を最適化。また、ブレーキによる姿勢変化をスムーズに収束させる機能も搭載。さまざまな走行シーンで安定した乗り心地を提供します。
ほかにも、双方向クイックシフトやスマートクルーズコントロール、モーショントラックブレーキ、スロープディペンデントコントロールなど、盛りだくさんの電子制御機能を採用。国内モデルではETC2.0車載器も標準装備です。車体色は「トリトンブルーメタリック」「グラススパークルブラック」「パールマットシャドーグリーン」の3種類。メーカー希望小売価格は消費税10%込みで199万1,000円。発売は2024年1月25日です。
CAKE Kalk&
CAKEは2016年にスウェーデンで設立された電動バイクメーカー。ゼロエミッション社会の実現をミッションに掲げ、北欧らしいデザインの電動2輪車を複数ラインナップしている。日本での輸入販売はゴールドウインが行っており、公道走行可能なモデルとしては4車種をラインナップ。「Kalk&」はそのフラッグシップに位置付けられる多目的オフロードモデルだ。元々アウトドアスポーツに親しんでいた創立者が排気ガスや排気音を出すことなく自然を楽しむというコンセプトで開発されたモデルで、スウェーデンでは森林パトロールなどにも活用されているという。販売価格は298万610円(税込)。
「Kalk&」は軽二輪(250cc)にカテゴライズされ、定格出力5.8kW、最高出力10kWを発揮するモーターを搭載。リアタイヤで発揮されるトルクは252Nmと電動バイクらしく非常に強力だ。搭載されるバッテリーは51.8V/50Ah(約2.6kWh)の容量を持つリチウムイオンで、連続走行時間は約3時間。航続距離にすると都市部での走行で約86km (WMTC タイプⅡ)、 高速度での走行 (時速70km):で約35kmとされている。充電は家庭用の100V電源で0〜100%までは約5時間、80%までで約3時間かかる。
車体デザインは、エンジン付きのオフロードマシンから余計なものを削ぎ落としていったようなシンプルさ。北欧デザインの家具のような引き算の美学を感じさせる。水平基調のシートは前後の着座位置変更がしやすそうだが、シート高が910mmとかなり高いのが気になるところだ。ただし、車重はバッテリー込みで79kgとおそろしく軽量なので、片足で支えるのにそれほど気を使う必要はなさそう。ホイール径は前後とも19インチで、動力伝達にはカーボン製のベルトを採用。サスペンションは前後ともにオーリンズ製となっている。
高さのあるシートなので恐る恐るまたがったが、幅がかなり細身なので数値から予想するほど足付き性は悪くない。お尻を少しズラして足を付くオフロードマシンの乗り方ができれば、軽い車体もあって不安に思うことはないだろう。シート座面はフラットで長いので、前後のポジション変更は非常にやりやすい。ただ、ガソリンタンクがないため、ニーグリップをしようとしても膝が当たる部分がなく、内腿で車体をホールドするかたちになる。車体が軽いため、それでも十分にホールドは可能だが、慣れないうちはやや戸惑った。
電源をONにして、走行可能な状態となっても当然のごとくエンジン音はない。走行モードは3種類選ぶことができるが、最も穏やかなモードで走り出しても車体を押し出す力は十分にパワフル。それでいて、その力のコントロールがとてもしやすく、低速域では後輪の回転を右手で操っている感覚が面白い。エンジンをアクセルで操り、そのエンジンが駆動輪を回すエンジン付きバイクとのフィーリングの違いが明確で、滑りやすい路面などではこちらの方がコントロールしやすいと感じた。
一方で、最もパワフルなモードにすると、そのダッシュの鋭さに驚かされる。軽量な車体が蹴り出されたように加速するので、アクセル操作にやや気を使うほどだった。ただ、コントローラブルなフィーリングは変わらず、右手を捻るだけでどこからでも車体を加速させられるのはかなり気持ちいい。最高速度は90km/hだが、そこまでは全く鈍ることなく加速感が続くのも電動マシンらしいところだ。
オフロードマシンのようなルックスだが、ホイールが前後19インチで同径のためか、ハンドリングはオンロードマシン的。舗装路ではリーンアウトよりも少し腰を内側にズラしてリーンインのようなフォームの方が、気持ち良く曲がれると感じた。ライディングポジションの自由度が高いので、着座位置やフォームを色々と工夫しながら乗るのも楽しかった。
オフロードも走ってみたが、アクセルで後輪のトラクションを緻密にコントロールできるので、滑りやすい路面でも不安なく走れる。ただ、ハンドリングがオンロードマシン的なので、未舗装路でのコーナリングを楽しむには少し慣れが必要。攻めた走りをするよりは、無音で走れる特徴を活かしてトレッキング的に自然を楽しむライディングの方が向いているだろう。
70年代の後半、スピードを競うロードバイクとは違う、雄大な大地をゆったりクルージングするスタイルのバイク、「アメリカン」が日本で注目を集めるようになった。80年代に入ると日本のメーカーが続々とアメリカンバイクをリリース。
いま見ると本場のアメリカンとは程遠い、いわゆる「なんちゃってアメリカン」なのだが、ツーリング志向のライダーを中心にその地位を徐々に確立して行った。
ヤマハでは「SPECIAL/スペシャル」という名前でアメリカンモデルを展開。78年にXS650&XS750スペシャル、80年に原付のRX50スペシャル、XS400スペシャルが登場。同年に生まれたのが今回紹介するXS250スペシャルだ。エンジンやフレームなど大部分はベースのロードモデルGX250を流用。アメリカンの象徴である手前にグリップを引き寄せたプルバックハンドル、前後で段差のあるキング&クイーンシート、タイヤサイズを変更することなどでアメリカンにアレンジ。
翌年にはエンジンやマフラー、フェンダーなどをブラック塗装、エンブレムやホイールがゴールドメッキとされたミッドナイト仕様車が限定販売された。1982年にはフルモデルチェンジ、デザインも一新(今回のイラスト)された。エンジンはDOHCにグレードアップ。前輪タイヤサイズの大型化(18→19インチ)によってハンドルが高い位置になり、前シートが沈み込んだデザインにしたことで、よりアメリカンらしくなった。ヤマハの250㏄アメリカンはXS250スペシャルがラストモデル。その後のエンジンはⅤ型となり、XV250ビラーゴへ引き継がれて行った。
スクーターブームの当時は、ヤマハ系正規ディーラーとして活躍していたのが、千葉県市川市にあるバイクショップクリーンだ。並み居る専門のカスタムショップとは異なり、ディーラーとしての安全性や実用性重視による車両作り。それが、クリーンのカスタムスタイルだった。
ここに紹介するヤマハ・マジェスティ(4D9)は、2009年当時に同店が作り上げたもの。オリジナル商品として各車種のエアロパーツも手掛けてきたクリーンが、当時の現行車であった4D9用のフロントフェイスを開発し装着した車両だった。それ以外の外装は基本的にノーマルのまま。インナーカウルをブルーにペイント。また、わずかにロングホイールベース加工とローダウン加工を施しているが、非常にシンプルな構成で完成。見た目のインパクトなどは皆無だが、カスタムへの満足感と実用性をしっかりと両立させた、ディーラー系ショップならではのスタイルだった。
ビッグスクーターと言えば、どうしても大掛かりな加工が伴うハード系車両のイメージが多いことだろう。実際にこの企画でも、そのような車両を数多く紹介しているため、そういう影響を与えてしまっていることは自覚している。しかし、当時クリーンが作り上げたこのマジェスティのように、お金をかけすぎずにカスタムを楽しむアイデアはたくんさんあるのだ。エアロもローダウンもフレーム加工も、ほどほどに留めてバランスさせる。ビッグスクーターカスタムの初級者には、このお金をかけ過ぎないバランス感を最初に養って、そこから自らがどの方向へと進むのか? このまま楽しむか、それとも更なる高みを目指していくのか? そういう選択肢の基準となるこのライトテイストの存在を、覚えておいてもらいたい。
YAMAHA XSR125
2023年12月、これまでXSR700やXSR900といった大排気量モデルのみのラインナップだったヤマハXSRシリーズに125ccクラスのニューモデルが登場。同時期にはYZF-R125とMT-125もリリースされ、ヤマハは125ccクラスのバイクの幅を一気に広げた。
この背景には、入門モデルとなるはずの250ccバイクの値上がりがあり、手を出しやすい価格設定の125ccバイクを揃えることで若者にも気軽にオートバイに乗ってほしいという思いがある。3車種の中でもXSR125は日常使いを意識しており、通勤・通学からツーリングまで幅広く楽しめる扱いやすさが特徴的。加えてXSRシリーズの”ネオレトロ”なデザイン性を引き継いだ見た目も魅力の一つだ。
エンジンは水冷4ストロークSOHC4バルブで、吸気カムが7,400rpmを境に切り替わる可変バルブ機構「VVA(バリアブル・バルブ・アクチュエーション)」を搭載。高回転域最高出力は11kW/10,000rpm、最大トルクは12Nm/8,000rpmを発揮し、カムが切り替わることで低中回転域の加速感と、7,400rpm以降の高回転域のパワーをダイレクトに体感できるのが特徴だ。
さらに、A&S(アシスト&スリッパー)クラッチを採用。これは、低荷重クラッチスプリングを使用したもので、一般的なスポーツバイクと比べて少ない力でクラッチ操作ができるようになっている。また、走行速度にギアが合っていない場合や、過度なエンジンブレーキがかかる時も車体が暴れにくいため、初心者でも扱いやすく、スムーズな乗り心地が感じられるだろう。さらに、ヘッドライトやメーターは丸形を採用し”ネオレトロ”なデザインを演出。扱いやすさとデザイン性の高さを追求したバイクと言える。
XSR125は初めてバイクに乗る初心者をターゲットとしているということで、4歳からモトクロスを始めた私ですが公道走行初心者なので、ぴったり当てはまるコンセプトだった。乗ってみて最初に感じたのは、加速のスムーズさ。エンジンは力強いが、スロットル開度に合わせてリニアに加速していくため、最初の一歩目ですでに乗りやすさを実感し、マシンをコントロールできた気分になる。
また、低中回転域の加速感がスムーズで安定感があるだけでなく、高回転域の伸びも良くパワーを十分に感じることができた。これは7,400rpmで吸気カムが切り替わる可変バルブ機構「VVA」の効果だろう。今回は平らな街道から峠道まで様々なシーンで乗ったため、その性能を堪能することができた。
特に峠道は上り坂かつ急カーブがいくつもあったが、コーナー前で減速をしてもスロットルを開ければパワーがしっかりとついてくる。また、エンジンブレーキを使ってスピードを落としてみたが、マシンが暴れて身構えることはなく、強くブレーキをかけても倒立フォークがグっと踏ん張ってくれる感覚があり、街中はもちろん峠の下り坂の怖さも軽減してくれた。
マシンの足つきは身長159cmの私にはつま先が着くくらいだった。シート高810mm、車体の幅が815mmとサイズは大きめのため、扱い切れるかが心配になったが、実際に乗ってみるとその取り回しのしやすさに驚いた。XSR125の車重は137kgと軽量で、マシンを支えられないかもしれない……という不安はあまりなかった。
さらに、車幅が広いと感じていたが、燃料タンク両サイドの絞り込みによってニーグリップがしやすく、マシンコントロールも容易。峠道などのコーナリングでも安心してマシンを倒すことができる。また、ハンドルバーがシートから遠目にセットされているため、ライディング姿勢としてはゆったりとしたポジションになる。シートは全長にも余裕があるため、小柄なライダーから長身のライダーまで窮屈に感じることはないだろう。気張らず街乗りに使えるし、ツーリング時もリラックスしながら走ることができた。
【この記事の目次】
■実は内側がすごい、牛久大仏
■爽やかな風を感じながら走る、霞ヶ浦
■冷やし焼き芋が有名な「焼き芋仙人」
■約1000本の梅の木が広がる、筑波山梅林
■絶景が望める、筑波山大御堂
■関東平野を眼下に走る、筑波スカイライン
■つつじヶ丘レストハウス
■ひときわ存在感を放つ、ガマランド
つくば市は茨城県の定番ツーリングスポットの一つ。広大な関東平野だけでなく、筑波山にある筑波スカイラインなど、景色もワインディングも楽しめるツーリングが可能です。今回は少し足を伸ばして牛久市にある牛久大仏を出発地点とし、筑波山に向かいます。なお、今回ツーリングに使ったマシンはヤマハのXSR125。高速道路は乗れませんが、首都圏から牛久大仏までは下道で走れる距離感のため、出発から帰宅まで一日かけてゆったり楽しみました。
牛久大仏
住所:〒300-1288 茨城県牛久市久野町2083
拝観時間:平日9:30〜17:00/土日祝日9:30〜17:30(3月〜9月)
平日/土日祝日 9:30〜16:30(10月〜2月)
牛久大仏は首都圏からバイクで1時間ほどの場所に位置しており、圏央道の牛久阿見ICや阿見東ICが開通したことでアクセスしやすいのが魅力の一つ。牛久阿見ICからはおよそ8km、阿見東ICからなら、およそ2kmで到着できます。
牛久大仏は胎内と呼ばれる内側の参拝も出来るということで、今回は外も中もじっくりと参拝していきます。1995年に建てられた牛久大仏の全長は、なんと120m。ブロンズ製の大仏の中で世界一高いとしてギネス世界記録に登録されています。実際、高速の上からでも街の中を走っていても見えるので存在感があり、近くで見るとその迫力は圧巻です。
足元に近づくにつれてその大きさを実感します。よく見ると、顔や指、身に纏っている服のしわなど細かな部分まで作り上げられていて、その技術の高さにも驚きます。
胎内は全部で5階。入口を入るとまず真っ暗な「煩悩の世界」があり、通り抜けると「光の世界」に入ります。暗闇は煩悩、光は慈悲を表しているとのことです。初めて胎内へ足を踏み入れましたが、このような世界観が表現されているとは露知らず、すぐにその空気感に圧倒され、気が引き締まりました。
5階まではエレベーターで向かいます。1階からエレベーターに向かうエリアでは、実物大の右足親指の先端が置いてあったり、建設の歴史がパネル展示されています。
5階は「霊鷲山の間」と展望台スペースになっています。仏教の開祖、釈尊のご遺骨が安置されていたり、展示されているパネルからは釈尊の生誕から入滅までを学ぶことができます。展望台は大仏様の胸部あたりで、高さは地上85m。東西南北の4方向を見渡すことができ、天気が良い日には東京スカイツリーや富士山が見えるとのこと。
景色を堪能したあとは、3階へ。ここは「蓮華蔵世界」と呼ばれ、永代供養することができます。壁一面には奉安された胎内仏が並んでいて、これがもう圧巻の景色。思わず見惚れてしまい、ツーリングの時間を忘れてゆっくりと過ごしてしまいました。なお、2階は「念仏の間」で書き初め体験や写経ができます。
牛久大仏から筑波山に向かう道中に霞ヶ浦があります。霞ヶ浦は日本で2番目に大きい湖。外周はおよそ140kmあるため、霞ヶ浦を一周するコースも人気です。しかし今回の目的地は筑波山。霞ヶ浦の景色を堪能したら、次の目的地に向かいます。
焼き芋仙人
住所:〒305-0024 茨城県つくば市倉掛889−1
茨城県はさつまいもの産地で、筑波の名物にもなっています。普通の焼き芋の人気はもちろん高いのですが、中でも冷凍した焼き芋が有名なお店があるというので行ってみることに。しかし、目的地の「焼き芋仙人」に到着してみると、残念ながら本日は期間限定の休業中でした。ここはまた次の機会に食べに来たいと思います。
いよいよ筑波山へ。道中、段々と山が大きく見え始め、山肌がくっきりしてきます。筑波山に近づいている! と実感しながら走るのは、とても気分が上がります。
筑波山梅林
住所:住所:〒300-4353 茨城県つくば市沼田4
筑波山中腹には梅林があります。4.5ヘクタールと広大な土地に、約1,000本の梅の木が植えられています。標高約250メートルに位置しており、バイクや車、ハイキングがてら坂を登って上部まで行くことができます。梅林上部には展望台「展望四阿」があり、梅林全体と、山麓に広がる田園や学園都市の街並みを見渡すこともできます。
取材時は1月中旬だったため、梅の開花時期としてはまだ早いタイミングでした。しかし早咲きの花はすでに咲き始めていて、少し早めのお花見を満喫できました。なお、2024年2月17日〜3月17日の期間に筑波山梅まつりが開催されるとのこと。周遊イベントや期間限定のグルメ企画なども楽しめるため、時期に合わせてツーリングを企画することをおすすめします。
筑波山大御堂
住所:〒300-4352 茨城県つくば市筑波748
筑波山梅林からバイクで4分ほど移動したところにある筑波山大御堂です。1400年間、霊峰筑波山に千手観音菩薩をご本尊とする歴史あるお寺です。
今年の初詣がまだだったため、今年は筑波山大御堂にて参拝しました。
お参りした後はおみくじを引いて今年の運勢を占ってみたところ……結果は吉。何はともあれ今年も安全に健康に過ごせますように!
なお、山の中腹に位置する拝殿からは麓の街並みが一望できます。近くにはカフェやお土産屋さんがあるため、ここで一息つくことができます。
筑波山ツーリングの目玉といえば、「筑波スカイライン」でしょう。この道はわずか1.7kmしかありませんが、低速ワインディングを楽しめたり、道中で眼下に関東平野を見ることができたりと、ライディングを楽しめるツーリングスポットとなっています。なお、筑波スカイラインは19時~翌8時までは二輪通行禁止です。また、同じ峠から南に下る表筑波スカイラインと、湯袋峠へ下る道は終日二輪通行禁止なので間違えないよう注意しましょう。
スカイラインを走り切ると、突き当たりにつつじヶ丘駐車場があります。駐車場手前で折り返すことができるため、中には入らず峠を降りることもできますが、同じ場所にはレストハウスや売店、筑波山山頂へ行くロープウェイがあるため、筑波山をさらに楽しむことができますよ。
つつじヶ丘レストハウス
住所:〒300-4352 茨城県つくば市筑波1
営業時間:9:30~17:30(季節により変更あり)
つつじヶ丘にはお土産・お食事処としてレストハウスがあります。ここでは、筑波山のご当地メニューである「つくばうどん」をはじめ、丼ものや定食など種類豊富なメニューが揃っています。
今回は、筑波山名物という単語に惹かれてつくばうどんを注文。つくばうどんは、「つくば」の頭文字にちなんで筑波茜鶏の「つ」くね、地元産のしいたけやゴボウなどの「く」ろ野菜、ローズポークの「ば」ら肉を使用しています。うどんは地産小麦とレンコンパウダーを使用しているとのことで、実際に食べてみると麺の風味と具材の旨味が相まってとても美味しかったです。汁は甘めの味付け。ここまでずっと外にいたので、風に当たって冷えた身体を温めてくれます。
駐車場には遊園地「ガマランド」が隣接しています。現在は稼働していないエリアが多いですが、昭和の時代で時が止まっているかのような外観はB級スポットとして注目を集めています。ここで気になるのが、園内にいくつも置かれているガマガエルの像です。写真で確認できるだけでも3匹の巨大ガマガエルがいて、異色の存在感を放っています。
実は筑波山とガマガエルには深い関係があるそうです。筑波山のハイキングコースには見た目がガマガエルに似ている「ガマ石」があり、この石の前で伝統芸能の口上「ガマの油売り」が生まれたと言われています。
ガマランドから見る景色は絶景で、山の麓までしっかりと見えます。どこを向いても必ずガマガエルが視界に入りますが、それも趣があって良いでしょう。
ハイキングコースの手前には、鳥居よりも存在感のあるガマガエルが鎮座しています。この大きさと、独特の世界観はぜひ現地で感じていただきたいです。
さらに、非常に興味をそそられる見た目をした「ガマ洞窟」というスポットもありました。中に入って暗い洞窟を10分ほど進むらしいのですが、残念ながらこちらは閉鎖されていました。
つくば市周辺には、牛久大仏や霞ヶ浦、梅林や筑波山と自然を満喫できるスポットが多くあります。また、関東平野の広大さを感じる街道や、筑波スカイラインのような峠道など、走っていて気持ちが良い道が多いのも魅力の一つ。ぜひ訪れてみてください。
]]>2023年の国内販売台数が4,100台を超え、日々躍進を続けるトライアンフモーターサイクルズ。数多くのモデルをラインナップするトライアンフの中でも、絶大な人気を誇るベストセラーモデルと言えば、モダンクラシックシリーズの「スピードツイン900」がその筆頭に挙げられる。
スピードツイン900は老若男女を問わず、ビギナーからエキスパートまで幅広い層から高い支持を得ている。街乗りからツーリング、そしてワインディングも楽しめる懐の深いスピードツイン900は、真の意味でのオールラウンダーだ。
スピードツイン900に搭載される排気量900ccの水冷SOHCバーチカルツインエンジンは、最高出力65ps(48kW)/7,500rpm、最大トルク80Nm/3,800rpmを発揮。シート高は765mmで足つきも良好。サスペンションにはカートリッジ式フロントフォーク&プリロード調整可能なツインリアショック、フロントブレーキにはブレンボ製4ピストンキャリパー、トルクアシストクラッチも装備。ライディングモー ドは「ロード」と「レイン」の 2タイプを搭載している。スタイリングはブリティッシュツインのお手本とも言えるトラディショナルなもので、トライアンフの伝統を継承する美しいフォルムを形成している。
今から100年以上も前の1918年、米国オレゴン州ポートランドで創業された世界最高峰のワークブーツメーカー「WESCO(ウエスコ)」。創業以来、メイドインアメリカを貫き続ける米国でも数少ない老舗メーカーである。熟練した職人の手により製作されるウエスコブーツは、大量生産品とは対極に位置するアナログ製プロダクトと言える。それゆえにウエスコブーツには作り手の温もりが感じられ、人の五感に訴えかける得もいわれぬ魅力が宿っている。
優れたバイクギアの第一条件は、その信頼性にある。ヘルメットやウエア、ブーツなどのバイクギアには、どんな過酷な状況下でもライダーを守るという高い信頼性が求められる。つまり優れたバイクギアを身に着けることにより、純粋にライディングに集中できる理想の環境を作り出すことができるのだ。ウエスコが手掛ける100年を超える歴史に裏打ちされたタフなワークブーツは、その本来の高い機能性と信頼性により、バイク乗りから絶大な支持を得ている。
ウエスコの代表的モデルのひとつである、レースアップブーツの「JOBMASTER(ジョブマスター)」。その名の通り、アメリカでは林業従事者や消防士などのハードワーカーからドラッグストアのスタッフに至るまで幅広い現場で愛用されている非常に汎用性の高いモデルだ。トラディショナルなスピードツイン900とのマッチングも申し分なし。シューレースを締め上げ足首のホールド感を高めると、足元が守られているという安心感と同時にバイクの操作性が飛躍的にアップする。コーナリング時のステップワークやフットブレーキの入力においても精度の高い操作が可能。さらにウエスコブーツのほどよい重量と、ソールの高いグリップ力により、足つき性と停車時の安定感がワンランク増す印象だ。
ウエスコブーツはレザーカラーやソールなどのカスタムにより、世界でただ一足のブーツに仕上げることができる。愛車のイメージに合わせてカスタムすることも可能だ。ここで今回使用したジョブマスターの仕様を紹介しよう。
踵から履き口までの高さはスタンダードモデルの10インチ。レザーカラーはVamp(つま先部)とCounter(カカト部)、Backstay(アキレス腱部)はブラウン、Quarter(筒部)はシボ感が特徴のブラウンペブルを使用。ソールは通称ハニービブラムソールの#100H VIBRAMが取り付けられている。
シューレースブーツの顔となるレーシングパターンは、つま先近くまでアイレットが設置されたLace-To-Toeを採用。ヘビーウエイトステッチは標準のホワイトであるが、ライトウエイトステッチはバイクのタンクカラーであるコンペティショングリーンに合わせてジャパンリミテッドのシューグリーンをチョイス。一見しただけでは誰も気づかないような、なんとも控えめなコーディネイトではあるが、オーナーの満足度は決して小さくないはずだ。さらにポイントとなるのはシューレース部の保護とフィット感向上を目的としたフォルスタンが取り付けられている点である。
立ち姿が美しいこともウエスコブーツの大きな美点である。玄関に無造作に置いてあるだけでも絵になり、思わず見惚れてしまうことなどざらにある。バイクにも同じことが言えるだろう。もちろん乗って満足できることは、バイクというプロダクトの根源として必須であるが、眺めても満足できるかどうかということも決して外せないはずだ。「機能美」という言葉があるように、美は機能に宿るものだ。ウエスコブーツを端的に表すなら、「機能美」というこのひと言に尽きる。
ニンジャe-1は、スポーツスタイルの電動モーターサイクルです。400ccクラスに匹敵する本格的な車体に、優れたレスポンスと大きなトルクが魅力の電動モーターを搭載。静かで俊敏な走りを実現します。バッテリーは取り外し可能なバッテリーパックを2つ装着。1充電あたりの走行距離は55km(ROADモード、60km/h定地走行値)、定格出力は0.98kW、車両の区分は原付二種です。また、クラッチレバーはなく、発進はスロットル操作だけで行います。
最高出力9kW、最大トルクは40Nm。ライディングモードは通常走行用のROADモードのほか、速度を制限して航続距離を伸ばすECOモードも選択可能。また、加速性能を約15秒間向上させるe-boost機能を搭載。追い越しなど一時的な加速で重宝する便利な機能です。さらに、駐輪時に便利なリバース機能付のウォークモードも注目です。 ウォークモードでスロットルを開ければ歩行速度での前進となり、スロットル全閉からさらに奥へと回せば微速で後退することができます。
バッテリーパックは車両に装着したまま充電することも、取り外して充電することも可能です。バッテリーパック1個当たりの充電時間は、残20%の状態から85%になるまでの部分充電で約1.6時間、20%から100%で約3時間、0%から100%のフル充電で約3.7時間(2個で最大7.4時間)です。なお、バッテリー装着位置の上側には、レインウエアやグローブ、小物などを収納できる容量約5Lのストレージボックスが設けられています。
車体骨格は高張力鋼を使ったトレリスフレームです。車両重量は140kg、シート高は785mm。制動装置はABSシステム搭載のディスクブレーキを前後輪に装備。走行中のスロットルを戻した際に発生する減速エネルギーをバッテリーに充電する回生システムも採用しています。車体色はメタリックブライトシルバー×メタリックマットライムグリーンの1種類のみ。価格は消費税10%込みで106万7,000円、2024年1月13日発売です。
ハイスピードで最新テクノロジーのレーサーレプリカが、絶対的な人気を誇っていた時代。ホンダのベテランエンジニアたちが「自分たちが乗りたくなるバイクを作ろう!」と企画、開発されたのがGB250クラブマンだった。
フォークブーツに一文字ハンドル、60年代のレーサーを彷彿されるスタイリングのクラブマン。各部の素材や仕上がりにこだわりが詰まっていたものの……当時の250㏄スポーツの購入者の中心は若者、時代を逆行するような古いスタイルのGB250が支持を得られるのか? 開発中の社内での評価は千差万別だった。
ところが発売された途端、その不安は一掃された。速さを求めないベテランライダーはもちろん、ビギナーや女性からも「クラシックなスタイルがかっこいい!」「硬派なバイク」と高評価、幅広い層から支持を得たのだ。
ちなみにエンジンはCBX250RSと同じRFCV を採用したDOHC4バルブ単気筒を搭載。セッティングとマフラーによって小気味よい排気音と心地いい振動を実現していた。各部の造りは凝っていたが、基本的なところをシンプルにすることで、ユーザーのカスタマイズを可能にしていた。アクセサリーも豊富で、オプションのシングルシートカバーやニーグリップラバーなどは人気が高かった。
1987年にモデルチェンジ、一本出しマフラーに大径キャブを採用することでシングルならではのトルク感を強調。エンジンの塗装やメッキの質もUPした。その後もバージョンアップを繰り返し、1997年まで継続販売。ホンダ屈指のロングセラーとなった。
YAMAHA YZF-R15
インド、タイ、ベトナム、中国などアジア圏では125〜200ccのバイクが人気を集め、大きなマーケットを形成している。日本のメーカーも現地法人を設立し、多くのモデルをアジア向けに開発。精力的に販売を行っており、この度日本で発売されたYZF-R15も2008年にインドで発売されて人気を博しているモデルだ。
日本の法規制に照らし合わせると125のように原付2種免許で乗れるメリットはないが、代わりに高速道路を走ることもでき、街乗りや通勤・通学だけでなく県を跨いだツーリングも楽しみたいというユーザーに向けた、YZF-R125とYZF-R25の中間に位置するモデルとなっている。
YZF-R15はヤマハのハイエンドスポーツモデルであるYZF-R1の遺伝子を受け継いだ入門スポーツモデルとして、ワインディングやサーキット走行、レースまで楽しめるモデルとなっている。同時に発売された兄弟車のYZF-R125と比べると、シリンダーのストローク量はそのままにボアを拡大することで排気量向上を果たしている。
車体は完全に共通かと思いきやそうではなく、YZF-R15の方が全長が40mm短くなっており、排気量が異なるにも関わらず重量は同じ141kg。また、リアスプロケットはYZF-R125の52丁に対し、48丁を装着することでファイナルはロングレシオに振られており、125に比べてマイルドなパワー特性を実現している。
さらに驚くべきことに150ccクラスにしてVVA(Variable Valve Actuation:可変バルブタイミング機構)を備えており、アシスト&スリッパークラッチにトラクションコントロールまで搭載している高機能ぶりで、価格は税抜50万円ジャスト。まさに普通自動二輪免許を取得した若者がバイクデビューするのに最適な一台と言えるだろう。
そんなYZF-R15を千葉県にある茂原ツインサーキットの西コースで試乗する機会を得た。1周700mのショートコースは155ccにはちょうど良く、125ccだと2速で吹け切ってしまうホームストレートだったが、155ccだとシフトアップなしでも2速で最後まで引っ張ることもできたし、逆に3速固定でもタイトコーナーをエンストせずにクリアすることができ、スムースライディングを楽しむこともできた。本来、排気量の大きさはそのままエンジンの懐の深さに通じるため、155ccという小排気量でありながら低回転から高回転までトルクフルな特性に仕上げることは難しい。これは搭載されているVVAによる恩恵が大きいだろう。
ハイエンドモデルのYZF-R1だけは特別だが、小排気量モデルでも上位モデルに通じるデザインやサイズ感、ライディングポジションを実現している点にも注目したい。YZF-R25/R3やYZF-R7などと比べても遜色のない、少しだけゆとりのある前傾姿勢でスポーツライディングの基礎を学ぶことができ、141kgという圧倒的な軽さからくる倒し込みや旋回性の良さはこのクラスならではのものだろう。
せっかくサーキットで試乗できるのだから、コーナー手前で回転を落とさずにシフトダウンして、アシスト&スリッパークラッチの効果を体験してみた。小排気量かつ軽量ということもあるのだろうが、結果は上々。本来受けるはずのエンジンブレーキの衝撃はほとんど感じられず、スムースかつ安全なコーナリングができた。正直、技術説明会でこの説明を受けた時には“155ccクラスにアシスト&スリッパークラッチはオーバースペックなのではないか”と思ったのだが、スポーツ走行時には疲労軽減に繋がるし、ツーリングでも急制動など危険回避のための安心材料となる。トラクションコントロールについても同様のことが言えるだろう。特に雨の日の滑りやすいマンホールや新品タイヤに履き替えた直後など、初心者が転倒しやすいシチュエーションにこそ効果を発揮してくれるはずだ。
僕が普通自動二輪免許を取得した20年前は125ccや150ccクラスが今ほど多くなく、“スポーツバイクは250cc以上”という印象が強かったが、125ccや150cc、200ccクラスのスポーツバイクがこれだけ普及してきている現代でこの考え方はナンセンスと言えるだろう。今回の試乗会では国道や高速道路を走行することはできなかったが、サーキットを走行して感じたパワーは250ccクラスと一緒にツーリングをしてもほとんど遅れを取らないはずだ。免許を取り立てのライダーのデビューバイクとしても、熟練のライダーのセカンドバイクとしても見逃せない一台と言えるだろう。
なんとなく野暮ったいから、長いスクリーンはカットして、タンデムバックレストを外してみる。その次は、市販されているボルトオンパーツを使って、マフラーやハンドルを交換する。そして今度は、サスペンションを換えて、ノーマルよりもちょっとだけ低くする。カスタムというのは本来、ちょっとしたポイントを自分好みに仕上げて、カッコよくなった愛車を見てはニンマリしながら自己満足の世界に浸る、という純粋さから始まるものだと思う。そんなライトカスタムの楽しさを、今回は提案したい。
このスズキ・ジェンマは、パーツメーカーのウイルズウィンが2008年に製作した車両だ。同社は、マフラーやサスペンション、ハンドルやミラーなどの汎用パーツをリーズナブルに提供するメーカーとして、当時からライトカスタムユーザーに支持されてきた。そして現在も、スクーターに関しては原付からTMAXまで、新しめの車両のパーツもしっかりと開発販売を続けている老舗である。そのため、新しくスクーターの世界に足を踏み入れたユーザーが、最初にお世話になることが多いメーカーとも言える。
このジェンマで交換されている部位は、マフラー、ミラー、サスペンション、サイドスタンド、タンデムバー、フェンダーレスキットのみ。カスタムのファーストステップとしては、これだけ変更できれば充分満足できる内容と言える。しかも、これら全パーツの合計金額が10万9450円(現在の価格/税込)というのだから驚きだ。専門店で取り付けをお願いすれば、ここに工賃が追加されるのは当然だが、それでもライトカスタムとしては合格点のカスタム内容が、この価格で楽しめるということは注目に値する。
誰もがマネできないハードカスタムの存在価値とは対極に位置するライトカスタム。それでも、ノーマルから変わったことで得られる満足感というものは、カスタム内容の程度には一切関係無いのだ。
1987年世界耐久選手権第5戦、鈴鹿8時間耐久レース(7月26日決勝)は、ついに最後の勝負を迎えた。トップを走る#45のヨシムラは、タイヤ交換、ガスチャージ、ライダー交代(G・グッドフェロー→高吉)を順調の終え、メカニックたちに勢い良くプッシュされピットアウト。暗くなる最終スティントに備え、高吉はヘルメットのシールドをクリアに交換していた。
辻本聡がAMAスーパーバイクシリーズに挑戦する関係で、ヨシムラの全日本TT-F1/TT-F3は若い2人のライダーに託された。エースはヨシムラ2年目の大島行弥(1965年1月30日福岡県生まれ)で、前年は全日本TT-F1で辻本聡に次いで見事ランキング2位となっていた。もう1人の高吉克朗(1963年5月12日鹿児島県生まれ)は、ヨシムラ1年目で、前年はアマチュアライダーの祭典・鈴鹿4耐で優勝していた。そのときのチームは、ヨシムラのマイナーリーグ的存在のミラージュ関東で、マシンはヨシムラチューンのスズキGSX-R400。POPは孫のように若い2人(高吉とペアの石上均)を出迎え、大喜びしていた。
1987年の全日本TT-F1には、前年は6月の鈴鹿200kmまでしか参戦していなかったホンダ(RVF750)がフル参戦し、カワサキ(ZXR-7)も全戦ではないもののファクトリーチームを送り込んできて、1985年から参戦しているヤマハ(YZF750)に加え、正にファクトリー激突の時代に突入したと言えた。
それもこれも同じTT-F1で行われる鈴鹿8耐が異常な盛り上がりを見せ、各メーカーが必勝を期して臨んでいるからに他ならなかった。また、TT-F3にもホンダとヤマハのファクトリーチームが参戦していて、マシンもTT-F1並み(ホンダRVF400、ヤマハYZF400)で、世界で最もレベルの高いミドルクラスレースとなっていた。というわけで全日本のTT-F1もTT-F3も世界最高峰のプロダクションレースであり、4ストロークレースとしても世界一であった(2ストロークマシンも混走するが)。
だが、ヨシムラのエース大島は全日本TT-F1クラスの第1戦から第5戦(内TT-F1クラス開催は3戦)まで、3戦して7位が1回と、波に乗れなかった。一方、高吉は3位表彰台1回と7位1回、ルーキーとしてはまずまずの成績を残していた。
大島は鈴鹿8耐前哨戦の鈴鹿200km(全日本第6戦・TT-F1の4戦目・6月7日)で、ついに力を示した。予選も決勝も、ヤマハファクトリーのケビン・マギー(世界GP500にスポット参戦中)に次いで2位を獲得したのだ。K・マギーは全日本第1戦鈴鹿2&4(3月8日)でトップを走り、それを追う大島が転倒して敗れた因縁の相手だった。
さらに続く全日本第7戦筑波(6月28日)で、ついに大島はシーズン初優勝を果たした。そして鈴鹿8耐前の全日本第8戦菅生(7月12日)でも優勝して2連勝。鈴鹿8耐(7月26日)後も大島の好調は続き、世界選手権TT-F1菅生(8月30日)で2位となり、全日本第10戦菅生(9月13日)で優勝して、これで全日本3連勝を飾った。続く全日本第11戦鈴鹿(9月27日)で2位に入り、ついにランキングでトップに立つと、全日本最終戦(第12戦・11月8日)筑波で3位表彰台に立ち、念願の全日本TT-F1チャンピオンに輝いた。中盤からの6戦(全9戦)は、すべて表彰台という強さだった。一方、高吉は、3位が1回でランキング9位になった。
全日本TT-F3は、高吉が大活躍。ホンダRVF400やヤマハYZF400などファクトリー勢を相手に全9戦中優勝1回、2位1回、3位2回、ポールポジション1回で、ルーキーイヤーながらランキング3位を得た。大島も優勝1回、2位2回、3位2回でランキング5位と健闘した。こうして全日本TT-F1&TT-F3は、若い2人が大きな成果を上げたのである。
そして、歴史に残るレースがあった。世界耐久選手権第5戦、鈴鹿8耐だ。
ヨシムラは#12 ケビン・シュワンツ/大島がエースで、#45 ギャリー・グッドフェロー/高吉はセカンドチームという体制で臨んだ。そのオーダー通りに予選ではホンダRVF750勢に続いて、#12 K・シュワンツが3番手につけた。予選1-3番手はワイン・ガードナー、ニール・マッケンジー、そしてK・シュワンツと世界GP500ライダーが占めることとなった。
K・シュワンツはAMAスーパーバイクが本業だが、’86年、’87年と世界GP500へ精力的にスポット参戦し、次期スズキのエースと期待されていた。4番手の#21 ヤマハ(テック21チーム)もマーチン・ウイマー/K・マギーで、世界GP250ライダーと世界GP500スポット参戦ライダーの組み合わせだ。
決勝レースは、あっけない幕開けだった。わずか19ラップで、エース#12 K・シュワンツがリタイアしたのだ。切れるはずのないカムチェーンが切れた(それまで1度も切れたことはなく、以後も油冷機では同様のトラブルはない)。好調の大島は、1度も決勝を走ることなく静かにレースを終えた。これでトップを走る#1 W・ガードナー/ドミニク・サロン(ホンダRVF750)に迫るチームはいなくなった。
ところが、4時間過ぎ、103ラップ目に#1 D・サロンが転倒。その隙に逆転してトップに立ったのが、ヨシムラのセカンドチームでノーマークだった#45 G・グッドフェロー/高吉だった。2番手は#21 M・ウイマー/K・マギー(ヤマハ・テック21)、3番手は#7 コーク・バリントン/ロブ・フィリス(カワサキZXR-7)になった。このカワサキはチームグリーンと登録しているものの、実質的なカワサキファクトリーチームだった。が、エンジントラブルを起こし、110ラップでリタイアしてしまった。
大きなリードを保ってトップを走る#45 ヨシムラ、それを追う#21 テック21ヤマハ。その構図は最終スティントになっても続いていた。#21 テック21ヤマハは、追い上げの作戦としてK・マギーに2連続スティントを任せた。#45 ヨシムラは、スケジュール通りG・グッドフェローから高吉に交代した。午後6時43分だった。その差、約20秒。2連続スティント作戦では、ライダーのタフさはもちろん、夕闇になっても速いことが条件で、過去にもグレーム・クロスビーやW・ガードナーなど南半球出身のライダーが、最終スティントの2連続に起用され成功していた。
ラップタイムは#45 高吉が2分22~23秒。対して#21 K・マギーが2分22秒。ラップダウンの処理などの影響で2者のラップタイムは2~3秒前後したが、平均すると#21 K・マギーの方が若干速く、その差は徐々に詰まってきていた。その状況にPOPは焦っていた。
「アップのサインを出せ!」
けれどもヨシムラピットは、なかなかペースアップのサインボードを出さなかった。高吉はルーキーで鈴時8耐も初めてだし、まして夜間走行だ。疲れもピークに達しているだろう。何よりトップを走っている重圧は相当なものだ。それにリードは、逃げ切るには充分にあるように思えた……。
が、#21 K・マギーとの差が9秒まで縮まった時、ヨシムラはついに#45 高吉にペースアップのピットサインを出した。矢印はそれまでの斜め上から“真上”(明らかにペースアップを意味している)に変わり、“+9”(2位#21 K・マギーに対して9秒のリード)と示されていた。#45 高吉はそれを確認し、「ああ、やっぱり」と思った。
「ペースを上げなくては………!」
残り5分、あと2ラップだろう。#45 高吉が1コーナーへ進入すると、ラップダウンの車両が見え、「2コーナーでインサイドから抜こう」と考えた。が、相手は思ったよりも速く、#45 高吉のフロントフェンダーが相手のリアタイヤに接触。そのまま追突し、左(アウト側)にひっくり返った。グランドスタンド上部からもヨシムラのブルーのヘッドライトが、2コーナーで妙な向きで止まっているのが見えた。
実はこの転倒の数ラップ前、#45 高吉は2分22秒台で走っていた。ヨシムラピットはそれを2秒落ちの2分24秒台と勘違いしたのだ。サインボードには2位との差(秒単位で表記)と、矢印の向きでペースアップ/キープ/ダウンしか示されなかった。それで#45 高吉は、ペースアップしてしまったのだ。それにサインボードは、1ラップ前の情報しか伝達できない(現在ならデジタルのダッシュボードにリアルタイムのラップタイムが表示される)。
ところが、9秒差まで迫っていた#21 K・マギー(テック21ヤマハ)は、この時点でトップの#45 高吉を追うのを諦めていた。2者のラップタイムはほぼ同じで、残り時間は少ない。もう追いつくのは無理だし、ここで無理やり追いつこうとして転倒でもしたら2位表彰台を逃してしまう。テック21ヤマハは参戦2年目。結果を残したかった……。
テック21ヤマハが諦めてペースダウンしたのを知らず、自分のラップタイムを2秒遅いと勘違いしてペースアップを試みた#45 高吉。その焦りなのか、単なる偶然かもしれないが、#45 高吉はラップダウンの処理を間違え、転倒した。結果論だが、#45 高吉はペースアップする必要がなかったのだ。
鈴鹿の2コーナーはランオフエリアのグラベルが広いが、#45 高吉は、その奥の方まで転がってはいなかった(ほんの10数mの地点だった)。身体は何とか大丈夫だったが、マシンは深い砂利に埋まり、重く起こしにくかった。
マシンのダメージは深刻であったが、ある意味ラッキーであった。スクリーンは割れて無くなり、アンダーカウルは外れかかっていた。一番心配だったのはフロントブレーキだった。マスターシリンダーは大丈夫だったが、リザーバータンクがハンドルの前の方に落ちていた。幸いブレーキは、効いた。再スタートする……少しでもバイクを寝かすと、外れかかっているアンダーカウルが路面に擦れ、直線では真っ直ぐ走れず、車体が右に取られる。でも、何としても、このままチェッカーフラッグを受けるしかない……。ヨシムラピットと#45 高吉は神に祈った。
「早く……早くチェッカーフラッグを振ってほしい」
#21 K・マギーは、#45 高吉の転倒の瞬間を見ておらず、2コーナーの現場を通過しても、#45 高吉の転倒に気付かなかった。#21 K・マギーが、自分がトップになったことを知ったのは、メインストレートに戻ってサインボードを見た時だった。
#45 高吉は2位だった。優勝した#21 テック21ヤマハと唯一、同一周の200ラップで、遅れること1分19秒176だったから、ほぼ半周遅れだった。#45の車両を受け取ったヨシムラメカニックたちは呆れた。これでよくブラックフラッグを振られなかったものだ、と。
ウィニングランを終えて高吉は、オフィシャルに抱きかかえられてコントロールタワーへ運び込まれ、ソファーに仰向けに寝かせられた。脱水症状と、疲労と、極度の緊張からの解放……。
「高吉、よくやった、すごいぞ……」(POP)
「……ありがとうな、いいレースをやってくれたな……」(スズキの横内悦夫部長)
「克朗、がんばったね、本当によくがんばったね……」(高吉の母)
高吉は呼吸が乱れ、小さな身体は痙攣していた。それから10分ぐらい経って高吉は、G・グッドフェローとともに2位表彰台に上がった。POPも表彰台に来た。本当に嬉しそうだった。大波のように押し寄せる観衆。それを高い表彰台から眺める。先輩の辻本は、最高の景色と言ったが、高吉にはその景色が見えていたのだろうか。その表情に生気はなく、視線の先は定まらず、焦点はどこにも合っていないようだった。
表彰台を下りて高吉は、また倒れてしまった。表彰式が終わり、本当に解放されたからなのか。感謝の言葉と、涙を流すヨシムラスタッフ……と感動の場面なのだが、ほっこりするちょっとした真実が後になって明らかになった。実は、高吉は喉が渇いていて表彰式でシャンパンをがぶ飲みしてしまい、急に酔いが回って倒れてしまったのだった。
それにしても鈴鹿8耐の女神は、トップを走る者に対して厳しい。1985年のケニー・ロバーツ/平忠彦の午後6時58分のエンジンブローといい、この1987年の残り5分の#45 高吉の転倒といい、勝者よりも美しい敗者の物語が、ときどきある。
営業/9:00-17:00
定休/土曜、日曜、祝日
Royal Enfield SHOTGUN 650
ニューモデルラッシュのロイヤルエンフィールドが、またしても新型車を発表。クルーザーモデルとプラットフォームを共有するも、ネイキッド的な軽快なモデルに仕上がっていた。
2023年春、ロイヤルエンフィールド(以下RE)はクルーザーモデル/スーパーメテオ650の発売をスタートした。他のRE650ccモデル同様の、排気量648ccの空冷並列2気筒SOHC4バルブエンジンを採用。最高出力や最大トルクは共通ながら、低中回転域の出力特性を力強くすることで、クルーザーというモデルのキャラクターに合わせたパワー感を造り上げていた。そのエンジンを、低重心化と高剛性を目指して開発した新型フレームに搭載。直進安定性と快適性を高め、同型エンジンを搭載しながら英国スタイルを貫いた他の650モデルとは異なる世界観を造り上げていた。「ショットガン650」は、そのスーパーメテオ650と同じエンジンとフレームを採用。しかし前後ホイールサイズやサスペンションなど、足周りのセッティングを大幅に変更して、ネイキッドバイクのようにキビキビと走る「ショットガン650」オリジナルのキャラクターを造り上げている。
「ショットガン650」が搭載するエンジンは、スーパーメテオ650と同じ。エンジンをコントロールするECUやフューエルインジェクションのセッティング、ギア比や排気系も同じである(サイレンサーのみ変更)。
大きく違うのは前後足周りだ。ホイールサイズは、フロント18インチ/リア17インチ。フロント19インチ/リア16インチのスーパーメテオとは大きく違う。このホイールサイズの変更だけで、クルーザーからネイキットバイクへとキャラクターが変わったと理解できるほどだ。
しかし変更はそれだけではない。フロントフォークは、左右のフォークでダンパー機能とスプリング機能を分け、ビッグピストンによる高い減衰力特性を持つSHOWAのSFF-BPを引き継ぐが、フロントフォークそのものを30mm短くし、フォーク内にセットするスプリングや減衰力特性を「SHOTGUN650」の車体特性に合わせて変更している。そしてステアリングヘッドとフロントフォークの距離を示すフロントフォークオフセットは4mm短い42mmとし、それによってトレールは17.1mm短い101.4mmとなっている。またリアショックは、SUPER METEOR650から30mm長くなり、ストローク量は7mm増えている。もちろん、その変更に合わせてスプリングレートや減衰圧特性も変更されている。さらにはスイングアームのアクスルスライダー部分の切り欠きを車体前側に移動。フロント周りのアライメント変更に加え、リアタイヤを車体前側にセット出来るようにすることでショートホイールベース化も実現している。
外装類も「ショットガン650」オリジナルだ。燃料タンクは容量を1.9リットル減らし、角張ったデザインを採用。そのデザインとリンクするように、サイドカバーやリアフェンダーのデザインも変更されている。また、足周りの変更と、フローティングシートと呼ばれる宙に浮いたサドルシートのモダンデザイン版とも言える新型シートの形状によってシート高が高くなり、幅の狭いバーハンドルに加え、ステッププレートの取り出し位置を変更し、よりライダーに近いミッドコントロールを実現。それらの変更によって、ネイキッドバイクのようなライディングポジションへと変貌している。
前後足周りの変更による車体の姿勢変化は、「ショットガン650」に跨がっただけで感じられる。シートは高く、ステアリングヘッド位置が低く、ステップ位置がライダー側にグッと近くなったことで、ライディングポジションが前傾し、プルバックしたクルーザー的ポジションからネイキッドバイク的ポジションに変わっているからだ。
クラッチを繋いで車体を走らせれば、その変化はさらに明確になる。いくつか交差点を越え、混雑した街中を走らせると、とにかく軽快で車重が240kgもあることを忘れてしまう。フロント19インチ/リア16インチのホイールを採用し、リア下がりのサイドシルエットを採用していたスーパーメテオ650は、リアヘビーの重心バランスを採用することで直進安定性を高めていたが、「ショットガン650」は前後サスペンションの変更で車体姿勢を水平に近い状態に変更している。その姿勢変化と、それに合わせたディメンション変更がこの軽快感を造り上げているのだ。
そしてその軽さは、ワインディングで一気に華開く。ハンドリングは非常に素直で、ハンドルをこじったりしなくても車体の傾きに合わせてフロントタイヤはドンドン向きを変えていくし、コーナー出口でアクセルを開けてもフロントタイヤが大回りするようなこともない。ミッドコントロールとしたことで、ステップは比較的早めに路面に接地するが、例え接地しても車体の安定感は変わらない。
今回の試乗コースは、バリエーションに富んだコーナーが楽しめるワインディングが多く含まれていたが、舗装路面が荒れていたりバンピーなコーナーがあったりして、進入/コーナー/起ち上がりと、コーナーリング中のあらゆる場面でサスペンションが大きく速く動いて、車体姿勢を乱すことがあった。しかしその動きは最低限で収まり、そのことによる安心感は絶大で、引き続きワインディング走行を楽しむことが出来たのだ。これは前後サスペンションのアライメントとセッティングを、徹底的に造り込んだ証拠だろう。
REは、この安定感とスポーツ性のバランスを造り上げるのがとてもうまい。モデルキャラクターによってそのバランスを変えながらも、スポーツに重心を置いてもその反応は神経質になりすぎず、安定感に重心を置いても退屈になりすぎない。彼らは“ピュアモーターサイクリング”をブランドコピーに使用している。それは様々な解釈があるが、バイクの根源的な魅力を追求することも含まれている。どんなスタイルを持ち、どんなカテゴリーに属していようとも、バイクである以上、乗って楽しくなくてはなららならい。シンプルだが難しい、そんな課題に全力で取り組んでいるのがREなのだ。これまでのREモデルの伝統とは異なる「ショットガン650」の楽しさもまた、REが求める“ピュアモーターサイクリング”のひとつなのである。
バイクメディア業界に身を置いていることもあり、耳に入ってくるニュースや情報のほとんどは新型車にまつわる事柄が多い。でも実を言うと私は新車でバイクを手に入れたことは人生で二度しかなく、それ以外はすべてユーズドバイクだったりもする。
ユーズドバイクを選ぶことのメリットとしては、例えば現行モデルであっても新車よりは若干安価で手に入れることができたり、型落ちならさらにお手頃なプライスが貼られていたり、さらには高根の花だと諦めていた憧れのモデルに手を出せるかもしれない……などなど、多数挙げることができる。
とはいえ、新車ディーラーがずっと面倒見てきたものならいざ知れず、市場流通しているもののほとんどは、どこの誰がどのように使っていたのか不明である。特にネット通販が一般的に普及したここ15年くらいは売買や取引後の状態に関するトラブルも散見するようになった。
そんなユーズドマーケットに流通している車両を浄化しつつ循環させる取り組みを『バイク王』では行っている。
『バイク王』というブランドに対しては、バイクの買取を行っている会社というのが多くの方々の認識だろう。それはそれで正解である。買取業界の巨人であるバイク王は取扱台数も群を抜いており、その分、適正価格で買い取ってもらえるというのも売り手からすると大きなポイントだ。
ただ知ってほしいのはその先にあるのだ。バイク王が買取入庫した車両はそのまま店頭に並べられたり業者オークションなどの流通に回されるのではなく、一度状態をチェックし、車両によっては軽整備と磨き上げをしてから店頭に陳列されている。そして成約後、安心して乗れるように整備され、納車される。これが『バイク王』がユーザーはもちろんユーズドバイク業界全体のことを考えて取り組んでいる“愛車循環”という理念なのである。
さらにバイク王で注目したいのは、その企業努力にもある。例えばメンテナンス技術をさらに向上させるために、全国に点在するメカニックチームによって定期的に整備コンテストも行われていたり、バイク王で車両を手に入れたユーザーが気持ちよくバイクライフを楽しんでもらえるように、細やかな整備を施して最長7年の保証と認定中古車も提供している。
四輪業界の話ではあるが、最近は新車製造メーカーであれ中古車取り扱い企業であれ不祥事が社会問題となりそういったことばかりが目立ってしまっている感じがあるが、一方で様々なことに率先して取り組み、業界全体を、そして顧客をより良くしていきたいと考えているバイク王という存在もあるというのは、世の中捨てたものではないと思わせてくれるものではないだろうか。
『バイク王』が行っている愛車循環という取り組み。これは車両を手放す売り手から、次にその車両を手に入れて楽しむ買い手という存在を気持ちよくつなぐ大きな輪だ。その事を題材とした新CMが現在放映中だ。
沢山の思い出が詰まったバイクを手放すというのは、オーナーとして寂しい気分になるものだ。その気持ちを汲み取りつつ、次のオーナーの元へとバトンを回す。そんな大切な役目をバイク王では真摯に受け止めてやり遂げる。そんな心構えが伝わってくる感動的なCMに仕上がっている。
この新CM放送にちなんで、長年バイク王のイメージキャラクターを務めている“つるの剛士”さんがバイク王へと売却したヤマハ・WR250Rを進呈するというキャンペーンも実施される。
キャンペーンの内容は、2024年1月19日(金)~2月22日(木)の期間内に、当該キャンペーンに応募された対象者の中から1名様を事務局にて選考し、バイク王のイメージキャラクターのつるの剛士氏が売却されたWR250Rを進呈するというもの。
応募資格は、
1、つるの氏の想いを引き継いで大切にしてくださる方。
2、日本国内にお住まいの方で、AT限定を除く普通自動二輪免許、または大型自動二輪免許をお持ちの方。または、これらの免許を現在取得中の方(教習所に通学中であることを証明が必要です)。
3、バイク王会員の方(会員登録は無料で可能)。
となっている。
バイク王公式サイトの専用フォームから参加できるぞ! このチャンスを見逃さずに!!
「つるの剛士さんWR250Rプレゼント」応募フォームはこちら >>
世界中のクルマファンが来場する「東京オートサロン2024」が、1月12日から14日の3日間に渡って、千葉県千葉市にある幕張メッセで開催されました。このイベントは、日本最大のチューニングカー&カスタムカーの祭典で、国内外の自動車メーカーやタイヤ、ホイールメーカーをはじめ、各ジャンルのチューニングやドレスアップパーツメーカーが参加。今年は合計378社が出展し、893台ものデモカーが展示され、3日間合計で約23万人が来場。コロナ禍の影響も減少し、今年は特に海外からのファンが多い印象でした。
基本的にはクルマが中心の「東京オートサロン」ですが、毎年、バイク関連の展示もちらほらと目にすることができます。早速ですが、今年会場で目撃したバイク情報をご紹介しましょう!
390デュークは、スチール製のトレリスフレームにコンパクトな単気筒エンジンを搭載したミドルクラスのネイキッドバイクです。この2024年型ではフルモデルチェンジが行われ、エンジンから車体まわり、エクステリアにいたるまで全てが新しくなりました。エンジンは従来の373.2ccから398.7ccへと排気量を変更、トレリスフレームも新設計です。外観はエアインテークを強調した長いタンクスポイラーが印象的なスタイリングとなりました。
パワーユニットは、LC4cと名付けられた軽量コンパクトな新世代のエンジンです。進化したギアボックスやシリンダーヘッドにより、EURO5.2排出ガス規制に適合。最高出力は33kW(45PS)、最大トルクは39Nm。5インチTFTディスプレイで切り替えるライドモードは、デフォルト設定の「ストリート」、悪天候時向けの「レイン」のほか、サーキット走行向けの「トラック」モードも用意。トラックモードではローンチコントロールも使用可能です。
新設計となった車体骨格は、スチール製のメインフレームにアルミダイキャスト製のサブフレームを組み合わせた構造です。加えて、オフセットを見直した新しいトリプルクランプの採用によりハンドリング特性が向上、優れたコントロール性と安定性を提供します。足周りにはWP製のAPEXサスペンションを装備。フロントはコンプレッション、リバウンドともに減衰調整が可能、リアはリバウンドの減衰とプリロードの調整が可能です。
車両重量165kg、シート高820mm。ブレーキはフロントに320mm径のディスクと新開発の4ピストンラジアルキャリパーを採用。リアは240mm径のディスクと新開発の2ピストンキャリパーです。また、コーナリングABSとスーパーモトABSも標準で装備。車体色はアトランティック・ブルー、エレクトロニック・オレンジの2種類。メーカー希望小売価格は消費税10%込みで78万9,000円。予約販売開始時期は、2023年11月22日です。
70年代の終わり頃から、排出ガス問題を受けて各ジャンルのモデルが4ストへ移行していった。2ストを中心に展開していたヤマハ、オフロードバイクといえばDTだったが、1980年ついにヤマハが4ストオフ車のXT250をデビューさせた。
ダイヤモンド型フレームに最高出力21馬力を発揮する、パワフルな空冷SOHC2バルブ単気筒エンジンを搭載。当時、オフ車のリアサスペンションはツインショックが定番だったが、XT250はモトクロッサーYZ250で圧倒的な成績を収めていた、ヤマハ独自のモノクロスサスペンションを採用。(ロードバイクのRZ250などにも使われる)。まさに最新鋭のオフロードバイクだった。
また低速トルクの厚い、扱いやすい出力特性を持ったエンジンで、バランサー内臓により振動も抑えられていた。足回りのフロントフォークは205mmのロングストローク、114kgの軽量ボディ、軽快なハンドリングなどによって高い走破性を発揮。高い支持を受け、ダート走行や林道ツーリング、エンデューロレースなど様々なオフロードで大活躍。多くのライダーを魅了した。
その後、1982年3月には新開発のSOHC2バルブ単気筒124ccエンジンを搭載したXT125。4月にはXT400。8月には125の車体に196ccエンジンを載せたXT200が登場。XTはヤマハのオフロードバイクの中心的存在になっていった。
ちなみに最初にXTの名が付いたバイクは76年に発売された、ビックシングルのXT500で、その後超ロングセラーバイクとなるSR400のルーツでもある。
ビッグスクーターが大流行していた時代に、沖縄本島で孤軍奮闘し、本州に住むスクーターファンに向けて様々な情報を発信し続けていた専門店があった。その名は「クローバー(CLOVER)」。元々はFRP製品を手掛けるエアロブランドだったが、沖縄本島ではビッグスクーターのカスタムを専門的に手掛けるお店が無いという理由で、自らカスタムなどを手掛けるショップとしての機能も開始。エアロメーカーとしては、海を越えることでの運送費高騰という逆境も跳ね除けて、本州のプロショップと共に業界を盛り上げていた。
現在は、クルマや船舶などのマリン製品、さらには児童施設用設備なども手掛けており、本来の会社名とブランド名を併用した、オクトコーポレーション&クローバーという名義で活動を継続している。
クローバーの特徴は、各車種に対して、様々なエアロを多数ラインナップしていることだ。例えば、ここに紹介しているスズキ・スカイウェイブ(CJ43用)のフロントフェイスだけでも、数タイプのデザイン違いを用意。また、他では見られない斬新なアイデアを採用した、オリジナリティに富むパーツが溢れるほど用意されていた。沖縄にいながらも、メーカー&ショップとしての存在感は全国規模で認知されていた。
今回登場したスカイウェイブは、2009年に製作された1台。フロントフェイス、サイドカウル、リアスポイラーといった定番パーツは当然だが、フロントから一体化されたアンダーカウルや、乗車側とタンデム側を区別したFRP製一体型シート。また、その下側に隠れるシート下インナーボックスなど、普通だったらワンオフ加工の一点ものとなりそうな品々が、ボルトオン装着可能なエアロとして商品化されたことが話題になった。また4輪ホイール装着のための3穴から4穴への変換ハブも、ワンオフ品ではなく市販化できるよう努力するなど、ユーザーに対して「ハードなスタイルをできるだけ手軽に」という作り手の意思を、強く感じ取れる車両だった。
流行に左右されながらも、沖縄でしっかりと生き抜いてきたクローバー。FRP職人としての腕と頭脳は、健在だ。
2023年10月開催の「第26回カフェカブミーティングin青山」でございます。ホンダ本社ビルの建て替えを控え、この空間での開催は今回の第26回で一区切り。青山一丁目の交差点にカブがズラリと並ぶ光景を心に焼きつけておきましょう。参加や見学の方々も胸アツだった特別な二日間です。
さて、今回は「カフェカブin青山」の一日目。まだまだ翌日の二日目があるので次回に続きますよ~♪ でもって2024年もどうぞ「ゆるカブ」をごひいきにお願いいたします。
]]>