取材協力/パパコーポレーション  記事提供元/モト・メンテナンス編集部
※この記事は雑誌『モトメンテナンス』130号P12~13に掲載された内容を再編集したものです。記事の内容は雑誌掲載当時のものです(2017年2月16日発売)
掲載日/2017年7月26日

エンジン性能の向上やエンジンのライフアップ=寿命アップ、また、車体各摺動部の作動性に関して大きな鍵を握っているのが摩擦抵抗だ。しばらく走らせていなかったバイクのエンジン内部には汚れやスラッジが堆積している例が多く、その汚れをしっかり除去しなくてはオイル交換を行っても、早い時期からオイルの濁り=汚れが気になってしまうものだ。ここでは、効果的かつエンジンにやさしい「フラッシング」を実践してみよう。

定期的なオイル交換を無視してバイクを走らせ続けてしまうと、オイル性能が低下し、エンジンパーツを効果的に潤滑できなくなってしまう。「エンジンオイル交換は3,000km走行毎」といった決まりごとがあるが、これは極めて重要であり、交換距離を無視するとエンジンオイルの潤滑性能が著しく低下する。オイル性能が低下すると部品コンディションも低下し、さらに走り続けてしまうと部品は摩耗し始め、その摩耗による汚れや鉄粉がエンジン内部の隅々に回ってしまう。結果として他のエンジン部品にもダメージを与えてしまうのだ。汚れは沈殿しエンジン内壁に付着。結果的にエンジン内は「真っ黒」だ。エンジンを分解したときに内壁や各パーツの汚れが激しいときには、マシンオーナーの保守が悪くオイル交換をサボっていた?と推測できる。

絶版車ブームの影響で数多くの70~80sモデルが里帰りを果たしている。輸出先かの地で乗り続けられていたバイクならメーター積算計は5万キロを超えていても不思議ではない。逆に1万マイル台の走行程度なら、長年に渡って寝ていたとも考えられる。

FLUSHING ZOIL
1,000ml 税別価格◎880円

高純度なナフテン&パラフィン系のベースオイルを組み合わせて開発されたフラッシングゾイル。スーパーゾイル成分を添加することで、高い洗浄能力を持ちながら金属表面を改質再生する働きを持つ。エンジンオイルの汚れを包み込むように排出するのが特徴だ。

エンジン内部が白濁汚れの例もある。これはズバリ、水分混入が原因だ。「ガレージ保管だし、雨天走行もしていないし?」といった車両でも、エンジンオイルは白濁乳化症状という例がある。そんなオーナーさんにお話を伺うと「寒い冬場はなかなか乗れないので、たまにエンジン始動して調子確認している」などと言ったお話を聞くことがある。実は、このお試し始動行為が最悪のケースを招くこともあるので忘れずにいたい。

寒い日のエンジン始動直後は、マフラーから水蒸気が勢いよく吹き出すもの。混合気の爆発燃焼によって排気ガスと周辺には大きな温度差が生じ、それによって内部結露などが発生し、水分がマフラーから吹き出すのだ。しっかり暖機後に走行すればマフラーから水分が吹き飛ぶが、そうしないままエンジン停止するとマフラーやエンジン内部の水分がそのまま残留。エンジンオイルには水分が混ざって白濁乳化、マフラーにも水が溜まり、それが原因で「マフラーにはサビ穴!!」といったケースも珍しくない。要するにエンジン本体とマフラーをしっかり温めない限り水分が残留してしまうのだ。クルマのマフラーから大量の水が流れ出ている様子を見たこと、ありませんか? 暖機過程ではそんなものだ。ちなみにクルマもバイクもステンレス製マフラーが増えているが、これには「サビ対策」の意味も含まれている。

久々にエンジン始動したときや、たいして乗らずにエンジン始動だけを繰り返していたりすると、エンジンオイルに水分が混じり乳化が始まってしまう。オイル汚れや性能低下の原因のひとつだ。

エンジン内部の汚れをしっかり洗浄除去しない限り、オイル交換しても比較的早い時期からオイル汚れが目立ってしまう。「まだ1,000キロも走っていないのに、なんだかオイルが真っ黒のような気がして......」なんてお話を聞くこともあるが、そんな悩みを解決するひとつの手段に「フラッシング」がある。

しかし、一般的なフラッシング剤には「洗剤優先」商品が多く、フラッシング時にエンジンを回し過ぎてしまい「エンジンにダメージを与えてしまった」といったお話を聞くこともある。有機溶剤などの洗浄剤がベースとなっているフラッシング剤は、高い洗浄効果がある一方で潤滑性能が低く、使い方を間違えるとエンジンにダメージを与えてしまうのだ。

そんなフラッシングでお勧めできる商品が『フラッシングゾイル』である。高い洗浄効果を持つナフテンやパラフィン系オイルをベースに金属表面の改質再生効果を持つスーパーゾイル成分を添加。フラッシングによってエンジン内部の洗浄を行いながらも、スーパーゾイル成分によって金属表面を改質再生できる商品なのだ。

今回作業した車両は大柄な帰国子女、スズキGS1000だ。ドレンプラグはクランクケースのオイルパン中央の奥まった部分にあり、周辺はフィンで覆われていた。ネジサイズはM14。

実作業の手順は、エンジン暖機後にオイルとオイルフィルターを取り外し古いエンジンオイルを抜き取る。フラッシングゾイルはレベル窓の「下限」付近で十分だ。今回は倉庫で眠り続けていたスズキGS1000で作業したが、注入量は点検窓下限の3,000ml弱。フラッシングゾイルには有機溶剤が含まれていないため環境にも優しい。また、低速でフラッシング走行できるため、効率良く洗浄できる。一般のフラッシング剤は走行できずアイドリング時のみの使用なので、違った結果を得られるのは想像に難しくない。極低回転域(2500~3,000rpm前後)での走行を厳守すれば、他商品とは違う満足度を体感できる。

エンジンオイルの規定注入量に対して最大でも「下限」で十分。ディップスティックならレベル下限に合わせよう。エンジン始動後は十分に暖機運転を行い、低回転で走行することでエンジン内部の汚れを効果的に落とすことができる。

オイル交換を行った際には、ドレンプラグのガスケットを必ず交換しよう。スパークプラグワッシャーのように潰れるガスケットだったので、プライヤーを併用して取り外し、新品のアルミ製ドレンガスケットに交換した。

クランクケースの前方にエンジンオイルフィルターが組み込まれるGS/GSXの空冷4気筒シリーズ。カートリッジ式ではないのでフィルター交換時にはOリングやガスケットも準備しよう。

古いオイルを抜き取る前にエンジン暖気することで、オイルの流動性が高まりスラッジや汚れも流れ出やすい。フラッシングゾイルを入れたらエンジンをしっかり暖機し、試運転に出掛けよう。

フラッシング後は再度オイルとフィルターを取り外し、新品フィルターに交換してからエンジンオイルを注入しよう。フラッシングゾイルが多少残っていても心配無用だ。排出したフラッシングゾイルを見ると、新品のときとは異なり驚くほど真っ黒になっている。新たにエンジンオイルを注入する際は、スーパーゾイルを規定量添加し、金属表面改質再生効果を是非とも体感してほしい。

始動&暖機後、ガレージ近所をひとまわり。いつもの試運転コースはおおよそ30キロ程度で15~20分の距離。エンジンをブン回さず3,000rpm強でも力強く走るリッターバイク!!