取材協力/塗料のオカジマ 取材・文/絶版バイクス編集部 記事提供 / 2012年3月17日発行 絶版バイクス別冊 ライブライド・カワサキZ

掲載日/2012年11月16日

欲しい色を作ってくれる頼もしい存在
調色を得意とするオカジマの「技」

全身再塗装のフルレストア車ならともかく、平均的なコンディションの絶版車を所有するオーナーなら、気になる塗装のくすみや褪色が?一?つ二つはあるはずだ。できればもっときれいにしたいが、自家塗装では色が合わないからと二の足を踏む人も少なくない。

 

そうしたユーザーに対して、色合わせ=調色を行っているのが神奈川県横浜市の塗料のオカジマだ。ここでは作業の?一?例として、ラッカーペイントでカワサキの半ツヤ黒を作ってもらった。黒なんて簡単な色だと思うかもしれないが、市販の缶スプレーは大半がツヤあり黒とつや消し黒の2種類のいずれかで、半ツヤ色は皆無なのだ。いくつかの原色から目的の色を作り出す調色では、ツヤあり黒をベースにフラットベースを混合して光沢を抑制しながら、黄色や酸化鉄色(簡単に言えば赤サビ色だ)を混ぜてサンプルに近づけていく。クルマやバイクに使われるブラックにはたいていが複数の色が混合しているそうだ。

 

プロの目で調色された塗料をテストピースに吹き付けて色が合ったら、缶スプレーに充填して完成だ。ラッカータイプのペイントなので、手軽に補修用途に使えるのが魅力だ。

 

ここではベーシックな半ツヤ黒を紹介したが、キャンディペイント以外のソリッドやメタリック色であれば外装色の調色も可能だ。また、スプレーガンを持っていてウレタン塗料をスプレーできる環境があれば、ラッカーペイントよりサンプル色の再現性がさらに高められるウレタン塗料の調色もやってもらえる。それなりの経年変化もいいが、やはりきれいにしたいというオーナーにとって、オカジマの調色は魅力的なはずである。

耐熱温度200℃でエンジン本体の塗装に使える、オキツモ製黒色塗料は税込1890円(200g)。希釈率20%の専用シンナーは税込735円。オカジマではカワサキ車のエンジンに多い半ツヤ黒の耐熱塗料も開発中。

 

ガンマー600の耐熱温度は600℃。鉄製集合マフラーのお色直しに最適。スプレーガン用なので、パイプが入り組んだ集合部もペイントしやすい。つや消し黒200gで税込1890円、専用シンナーは200㏄で税込420円。

カウル無しが多い絶版車ではライトケースは目立つパーツだが、メーターケーブルやハーネスが擦れてペイントが剥がれている場合が多い。目立つ部分だけにツヤありでもつや消しでも違和感が出てしまうので、純正風味の半ツヤ黒でペイントしたいというのがマニアックな絶版車好きに共通した意見である。

調色が完了した塗料をエアゾール缶に詰めてもらえば、使い勝手の良い缶スプレーとして活用できる。費用は、500gの塗料を使って調色する料金が3300円(税別)、これを缶スプレー1本に詰める料金が1800円(税別)となる。500g調色すると、スプレー缶3本に充填できる量になる。スプレーガンで吹きつけを行うウレタン塗料の調色も可能で、スプレー缶用のラッカーペイントより原色の色数が多いため調色での精度や再現性が高まるそうだ。

  • 市販の黒色がツヤありとつや消しだけなのに目を付けて、塗料のオカジマでは塗料メーカーにオーダーした半ツヤ黒を販売している。各部のステーやカバー類をペイントするとシックに仕上がる。

  • 塗料の必要量が僅かでも、極端に少量だと色の変化幅が大きくなって調色しづらいので、オカジマでの調色最低量は500gとなる。まずはメインのツヤあり黒を調色カップに取り出す。

  • ツヤを抑えるフラットベースと呼ばれる成分を添加する。添加量はスタッフの長年の経験から判断するが、いきなり大量に加えず少しずつ様子を見るのは調色の常道だ。黒だけでなく、赤や緑などでもつや消し塗料を作ることができる。

  • 色味を確認するため頻繁に比較を行う。調色依頼が多いオカジマでは、そのたびに塗り板(塗装確認用の金属板)を使うのは不経済なので塗料の吸い込みが悪い広告紙で代用。フラットベース添加でツヤ加減が変わってきた。

  • ソリッドカラーで調色を行う際は、塗り板に塗った塗料をヒートガンで乾燥させる。だがフラットベースを加えて強制乾燥させると、本来の仕上がり状態とは異なるツヤ加減になるため、自然に乾燥させる。

  • ほとんどの人は、黒と言えば黒一色で成り立っていると思っているのではないだろうか? だが「赤っぽい黒」「黄が入った黒」など複雑な構成になっていることも多い。今回も黄や白を加えながら黒の色調をサンプルパーツに近づけていった。

  • 塗り板代わりの紙片に試し塗りを繰り返しながら、30分ほどで納得できるレベルで調色が完了した。フラットベースを入れた時の変化は明確で、それ以外に色を加えた際は顕著な違いが分からなかったが、原色と比べると調色の成果は大。

  • スプレー缶に充填した後に、塗り板にスプレーして色味を確認する。狙い通り、原色のツヤあり黒よりも光沢が抑えられて、僅かに赤みが入った。ライトケースやウインカーステーに用いても、これなら純正相当のしっとり感を得られるだろう。

  • 主成分に相当するツヤあり黒に加えて、これだけの材料で調色を行った。狙った色に近づけるには、調色作業者の目と経験が頼りであり、この作業プロセスを見ると塗装のプロでも調色は苦手、という人が少なくないのもよくわかる。

一斗缶での塗料購入や、作業や材料に関する相談でプロも御用達の塗料のオカジマ。こうしたショップにはアマチュアが近づきづらいイメージがあるが、同店では個人向けに容量の小さいペイント資材も積極的に販売しており、自家塗装派に役立つ情報が得られる。

■住所/神奈川県横浜市港北区樽町2-8-45
■電話/045-543-5855
■URL/http://www.paint-okajima.co.jp/

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