ASウオタニ製SPⅡフルパワーキット&フルパワーコイルの実力

掲載日:2017年02月04日 特集記事&最新情報    

取材協力/ASウオタニ  写真・文/モトメンテナンス編集部

エンジン始動時の電気的トラブルシューティング「入門編」

ASウオタニ製SPⅡフルパワーキット&フルパワーコイルの実力

点火時期とギャップを合わせることで、ポイント点火車もスムーズで快適な走行を楽しめる。だが30年、40年前に比べるてあらゆるパーツが高性能化している。そんな中でも効果が明確で確実に性能アップできるパーツとして広く知られているのがASウオタニ製SPⅡフルパワーキット。強力着火が実現する理由を解説しよう。

ASウオタニ製SPⅡコントロールユニットは、機種ごとのノーマル点火特性をベースに独自のマップを製作しており、キャブレターにスロットルポジションセンサーが付く車両は三次元マップに対応する。写真はカワサキゼファーχ用キットで税込価格は6万3270円。

 

「適切なタイミング」で「強い火花」が飛ぶことが、エンジンを好調に保つ重要な要素である。点火時期に関しては、ポイント点火車ならFマークを正確に合わせ、無接点車でも点火時期を調整できるタイプならちゃんと合わせることで最適なタイミングとなる。では強い火花を得る手段とは? お手軽なのは高効率タイプのプラグコードや高性能プラグへの交換だろう。前者はコイルで発生する高電圧をロスなく伝達し、後者は低い電圧でも大きな種火を作って着火力を向上させる。

これらがイグニッションコイルより「先」の対策なのに対して、もっと「手前」で強い火花を作り出すのがASウオタニ製SPⅡフルパワーキットだ。始動性向上や加速時のトルク感アップ、高回転時のレスポンスなど、絶版車から現行車に至るまで、ほとんどのユーザーが明らかな効果が実感している。プラグやプラグコードと比較すると高価だが、理論的に考えたとき、SPⅡキットの性能の高さが理解できる。

イグニッションコイルには一次側と二次側の2種類のコイルが巻かれており、一次側が電源に、二次側がスパークプラグに接続されている。一次側の電流を断続することで自己誘導と相互誘導という作用が起こり、一次側の電圧が大幅に昇圧されるという仕組みは、これまでのページで解説してきた。二次側コイルの電圧を上げるには、一次側の電圧か電流を大きくすればよく、フラマグポイント点火やCDI点火では実際に一次側に高い電圧を加えている。ところが12Vのフルトランジスタ点火の一次側電圧は12Vであり、二次側のエネルギーを大きくしたいなら電流を大きくするしかない。

電圧と電流、抵抗値の間には「電流=電圧/抵抗値」の関係があり、電圧が一定でも抵抗値を下げれば電流は大きくなる。多くのトランジスタ点火車の一次コイルの抵抗値が3Ω前後なのに対して、SPⅡハイパワーコイルの抵抗値は1Ωなので、仮に電圧を12Vとすれば純正コイルは4A、SPⅡコイルには12Aの電流が流れ、結果として大きな電気エネルギーが発生することになるわけだ。

それならイグニッションコイルのみ低抵抗タイプに変更しても良さそうなものだが、通常の3Ωタイプのコイル向けに開発された純正イグナイターに大電流を流すと内部のトランジスタが破損してしまう。SPⅡコントロールユニットには大電流の断続に耐える容量があり、なおかつ一次側電圧を瞬間的に切断できる特性を持つトランジスタを採用している。

抵抗値の低いイグニッションコイルと大電流を流せるコントロールユニットを組み合わせたSPⅡフルパワーキットはノーマル、チューニングを問わず力強い点火火花でエンジン性能を引き出してくれるパーツである。

今となってはクラシカルなポイント点火車はもちろん、コストと性能をギリギリでバランスさせている純正トランジスタ点火車でも、SPⅡフルパワーキットの効果は明確。ユニットはサイドカバーやタンクの下に隠れるので、旧車のレストアにも最適だ。

SPⅡコントロールユニットには、レブリミットと点火マップを変更できるスイッチが付いている。スパークプラグの着火力強化と同時に、チューニングでコンプレッションを変更した時にも点火時期変更でエンジン仕様に対応できる。

純正コイルへの配線はギボシ端子や平端子を使う例が多いが、SPⅡは防水カプラーで接続する。反対側の端子は純正ハーネスの点火コイルにつながっていた部分に差し込む。ブルーアルマイトのプレートは機種別に寸法を合わせてある。

新車時に装着されるイグニッションコイルはお世辞にも高性能とはいえないもので、SPⅡとの差はコイル単品の重量を比較するだけで分かる。内部抵抗値が同じでも、SPⅡは使用するコイルの量が圧倒的に多いため重いのだ。

プラグコードとキャップはユーザーが用意するのが基本で、コイルに挿入するカシメ金具と分厚いゴムブーツが付属する。機種によっては最近、プラグコードとキャップ付きのキットが新製品として加わった。

CDI点火用イグニッションコイルの一次側抵抗値は純正パーツでもフルトランジスタ用コイルより低く、SPⅡハイパワーコイルを単体で使用できる。ギリギリの性能で開発された純正コイルに比べて、明らかに強力な火花が発生する。

CDI点火用イグニッションコイルの一次側抵抗値は純正パーツでもフルトランジスタ用コイルより低く、SPⅡハイパワーコイルを単体で使用できる。ギリギリの性能で開発された純正コイルに比べて、明らかに強力な火花が発生する。

シリンダーヘッドにプラグを当ててクランキングした時に出る火花が、純正では「パチパチ……」なのに対してSPⅡだと白くて太い「バチバチ!!……」に変化する。高性能コイルの性能は素晴らしい。

自社内一貫生産で高品質!!
完全なる日本製が大きな魅力!!

海外製が主体だった点火系チューニング市場に「国内開発、国内生産」で挑むのがASウオタニだ。機種ごとに異なる純正点火特性を解析したオリジナルマップ製作や、大電流を即断できるトランジスタユニットなど、独自に開発したノウハウは膨大で、絶版車から現行車まで幅広い機種でボルトオンキットを生み出している。

機種ごとのマップを書き込んだチップを配置した基板をコントロールユニットの筐体に収めてモールディングしたり、機種別キット用ハーネス製作も社内で行っている。トラブルや不具合の発生は非常に少ないが、万が一調子が良くない場合でも開発者が直接ヒアリングして解決方法をアドバイスしてくれる。これも輸入品との大きな違いである。

絶版車向けの開発は、市場での現存台数やユーザーからの要望によって優先順位がつけられる。純正パーツが販売終了になった機種ではSPⅡに対する期待と要望が極めて高いそうだ。

新社屋と新工場が稼働し、シャシーダイナモを用いた開発が社内で可能になった。長年の経験の蓄積によりマップ製作はラボ内で可能だが、実走フィーリングは車両に装着して行うのが確実だ。

純正イグナイターの点火特性を解析した上で、独自の味付けを施した点火マップを作成してコントロールユニットにセット。完全デジタル制御なので、進角遅角やスロットルポジションセンサー対応の三次元マップも思いのまま。強い火花を思いのままにコントロールできるのがASウオタニの強みだ。

ASウオタニ
http://www.asuotani.com/
〒750-0313 山口県下関市菊川町田部 474-1
Phone 083-288-2088 土日祝祭日定休

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