旧フルトランジスタ点火のトラブルシューティング実例

掲載日:2017年02月04日 特集記事&最新情報    

写真・文/モトメンテナンス編集部

エンジン始動時の電気的トラブルシューティング「入門編」

旧フルトランジスタ点火のトラブルシューティング実例

今大人気の絶版車シーンの主役は70~80年代に登場した各メーカーのモデルである。この時期は技術的過渡期だったため、様々なメカニズムが鳴り物入り登場。次のモデルチェンジでは何事もなかったように装備されなかった時代でもありました。ここではトラブル実例を紹介しましょう。

 

本誌ウイークエンドコーナーで現在進行中のカワサキZ550GP。実は購入当初、電気トラブルに気が付き修理した履歴がある。この修理内容は、カワサキミドルフォアのみではなく、他メーカーのモデルにも共通する可能性があるため、ここではその事象をリポートしよう。

車検を取得するまではエンジン始動のみで試運転に出掛けることはなかったが、車検取得直後の試運転中に、そのトラブルが発生した。完全冷間時には絶好調でエンジンが吹けるのに、エンジンが温まった頃、時間にして15分ほど走ると片肺症状になってしまうのだ。トラブル発生当初は、ガス欠? キャブレター? 燃料通路? フューエルコック? などなど疑ったが、調べていくと燃料系では無さそうだ。

気になったのはトラブル内容の確認中にエンジンが冷えると、何事も無かったかのようにエンジンが吹けるように蘇っているのだ。何度か試運転するうちに、これは「電気系の不具合?」だと判断。まずは手元にあった良品の中古のイグナイターに交換。しかし、試運転に出れば同じ症状の繰り返しである。

次に、冷間時のピックアップコイル抵抗値を測定してみた。カワサキ初期のトランジスタ点火車は、永久磁石を埋め込んだローターからピックアップ信号を拾う仕組みで、1個のイグニッションコイルに対して1個のピックアップコイルを持つ設計となっていた。測定するとサービスマニュアルに記載されたデータの範囲内だった。そこでエンジン始動し、テスターをポッケに入れて試運転に出掛けてみた。

15分ほど走るといつもの症状が発生した。路肩にバイクを停めてピックアップコイルのカプラを引き抜き、テスターで抵抗値を計測してみると、2/3番の抵抗値が所定の範囲から大きく外れていた!! 1/4番は冷間時のデータとおおよそ変りはなかった。

点検後、ピックアップコイルを露出させた状態でエンジン始動すると、ピックアップ本体に風が直接当たり効率良く冷えたのか、エンジンは快調そのもの!! そのままカバーを取り外したまま、ピックアップ本体に風に当てながら走ると、今度は何事も起らずしばらく走り続けることができた。

結局、トラブルの原因は2/3番ピックアップコイル本体の不良だった。数日後、壊れていない(と聞いた)中古のピックアップコイルに交換し、カバーを閉じて試運転へ出掛けてみたが、何事も起らず快調そのもので走ってくれた。80年代のモデルでは珍しくないトラブルなので、こんな事象があることも忘れずにいてほしい。

新品部品のように美しい!? という訳ではないが、電気系のメンテナンス時に点火システムパーツをすべて取り外し、各部を点検してみた。冷間時のテスター測定では何も起らなかったが……。

完全冷間時は気持ち良くエンジン始動でき絶好調なのに、15分ほど走ると片肺状況になりスロットルレスポンスが低下した。スペアのイグナイターがあったので交換してみたが、暖機走行後に同じ症状が発生!!

現代はフルデジタル制御のトランジスタ点火を採用しており、ピックアップコイルは1個しか無いが、過渡期はIGコイルの数だけピックアップがあった。不調の原因はこの部品だった。

完全冷間時のピックアップコイル抵抗はメーカー基準で360~540Ωなので437Ωは規定値以内。ところが!! このピックアップコイルが熱を持つと抵抗値がとんでもなく大きくなっていた。

カワサキミドルの2ピックアップコイル式は黒-青が1/4番で、黄-赤が2/3番だ。カプラへの接続を間違えないようにスマホで撮影。こんなときのメモ代わりにスマホで撮影できる現在。素晴らしい。

暖機運転が終わった直後ぐらいにピックアップコイルの抵抗値が大きく変化。スペア部品で頂戴したピックアップコイルはリード線が途中でカットされていたのでハンダで接続することにした。

カワサキミドルフォーのZ400FXを例にすると82年モデルのE4で今回の2ピックアップ式になりそれ以前のE1~3はポイント式だった。Z550GPは81年モデルから2ピックのトランジスタ点火を採用していた。

電気メンテに必要な特殊工具類

電気メンテナンスの際にあると便利なのがこれらの工具。今特集でも各項で実践利用した。フライホイールホルダーやプーラーはポイント式およびCDI点火でもチューニングファンなら是非とも欲しいところだろう。いずれにしても高年式モデルの場合は今特集がほぼ当てはまらないので、対象読者さんは旧車好きの方々になりますね。

これまでに様々なタイミングストロボを利用してきたが、パッテリー電源で動かすものよりも乾電池電源仕様の方が圧倒的に使いやすいし持ち運びが便利だ。でも最近、良い商品が減ってきましたね。残念!!

フライホイールプーラーとホルダーは4スト/2ストエンジンを問わず兼用できるので、バイクいじり好きなら是非とも所有しておきたいSST(スペシャルショップツール)である。

ポイントギャップの調整やタペット調整の際には必要不可欠なシックネスゲージ。ピストンクリアランスの目安に使える0.50mmやタペット調整範囲のゲージが入っている商品を購入しよう。

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