CDI点火方式の点火時期調整と不調時の確認方法

掲載日:2017年02月04日 特集記事&最新情報    

写真・文/モトメンテナンス編集部

エンジン始動時の電気的トラブルシューティング「入門編」

CDI点火方式の点火時期調整と不調時の確認方法

物理的に消耗する要素を持たない無接点点火方式には、定期的なメンテナンスが不要という大きなメリットがある。ただ「メンテ不要」と「調整不要」は必ずしも同一ではなく、点火時期の調整が必要な機種もあることを知っておきたい。必要に応じて正しい調整を行うことで、エンジン本来の能力を引き出すことができる。

 

強制的に一次電流を断続する際に発生するスパークで焼損、摩耗するポイントや、カムと接し続けてポイントを開閉するヒールなど、使用過程で消耗や摩耗が避けられない接点式のポイント点火。これに対してフルトランジスタ式やCDI式の点火は物理的な接点を持たず、一次電流の断続を電気的に行うのが、システム上の特徴である。消耗する接点を持たないということは、メンテナンスが必要なポイントがひとつ減るというわけで、スクーターやミニバイクなど実用車のメンテナンスフリー化には大きな効果がある。中・大型バイクにとってもポイントメンテナンスの手間がないのは利点であり、機械式のガバナーで行う点火進角特性をデジタル制御することでエンジン特性を改善できる利点がある。

バイク用4気筒エンジンの場合、2000年代以前の機種では1、4番プラグと2、3番プラグを同時点火=イグニッションコイル2個装着となり、それ以降は徐々に気筒ごと、プラグごとにイグニッションコイルを装備するダイレクトイグニッション式が普及した。一方、自動車用のフルトランジスタ点火では、ひとつのイグニッションコイルが発生する高い電圧を機械式のディストリビューターでプラグごとに分配する仕組みをかなり近年まで使っていた。ディストリビューターには接点があるため、ポイントを廃して電気的に一次電流の断続を行っても、この接点が摩耗していくことを考えると、バイク用無接点点火の方がメンテフリー化はより進んでいると言えるだろう。

実用上メリットしかない無接点式ではあるが、徹頭徹尾メンテナンスフリーかといえば必ずしもそうとは言えない場合もある。より年式が新しい機種では点火に関わるパーツが「付くようにしか付かない」パターンが多いのも事実だが、中には無接点式でも調整ができる、あるいは調整が必要なモデルも存在する。

絶版車市場で現在も高い人気を誇るヤマハRZ250/350は、CDI方式ながらステーターアッセンブリー着脱の際には点火時期調整が必要な機種である。前ページでフラマグポイント、バッテリーポイントの理屈を解説したとおり、クランクシャフトの回転角度が最適な位置でスパークプラグに電気火花を飛ばすことで、エンジンは快調に機能する。RZが採用するAC-CDI点火の場合、フライホイールの回転によって発電するチャージコイルの電気をコンデンサーに充電し、フライホイール外周の一カ所がフライホイール外側にセットされたパルサーコイルを通過する際の電圧変化によって点火時期が決まる。

RZの点火時期は2000回転時に20度と設定されていて、ステーターアッセンブリーの位置を調整することで点火時期が変化する。したがって、メンテナンスやオーバーホールでエンジン本体からフライホイールとステーターを外した場合、復元時には点火時期を正しく合わせてやる必要がある。この時、エンジンを始動してタイミングライトを使って微調整を行う方法と、上死点前のピストン高さを測定して調整する2種類の方法がある。いずれの場合もステーターアッセンブリーの合いマークと、フライホイールに刻まれたFマークを合わせることが調整作業の要点になる。

「無接点だから何もしなくていい」と油断せず、自分の愛車は点火時期が調整できるタイプか否かを確認して、ベストな点火時期で好調さを維持しよう。

1980年に登場したRZ250、翌81年にデビューしたRZ350とも点火系はCDIを採用したが、先代のRD250/400も最終モデルはCDIだった。CDIは二次電圧の立ち上がりが早く、プラグ汚れに強い。

金属ケースに収まったCDIユニットはリアフェンダー上にセットされる。経年変化によるコンデンサーをはじめとした内部パーツの不良により、突然火花が飛ばなくなるトラブルもあるが、年を追うごとに交換用部品の入手が難しくなっている。一方、ステーターアッセンブリーはコイルが放射状に巻かれており、バッテリー充電用のコイルとCDIコンデンサー充電用のコイルで役割が分担されている。

フライホイールを外す際は、固定用ナットの下に入るスプリングワッシャーと平ワッシャーを忘れず外すこと。ステーターアッセンブリーを外さなければ点火時期は変わらない(既に狂っている際は再調整が必要だ)。

2ストローク車は上死点前のピストン位置で点火時期を決めるのが一般的だ。RZの場合、ピストン頂部でダイアルゲージを0にセットして、上死点前2.0mmが点火時期となる。

フライホイールとステーターベースの刻み線が右端の写真のように一致していなければ、ステーター取り付けボルトを僅かに緩め、ステーターの切り欠き部にマイナスドライバーを引っかけて左右に動かしてマークを合わせる。最終確認はエンジンを始動してタイミングライトを当てて行う。

フライホイール側のFマーク(刻み線)がステーターベースの合わせマークを通過する瞬間に点火するのが正解。マークが一致しないときはステーターの位置をずらして調整する。

AC-CDI方式のRZの場合、点火系にバッテリーは介在しないためヒューズは無関係。だが充電系統や信号、灯火類が正しく作動するにはヒューズの状態を確認することも重要だ。

この写真はスズキRG250Eのステーターアッセンブリーとフライホイールのもの。クランクケースとステーターベースの位置を合わせるマークがある。組み立て時はこのマークが合うようセットする。ベース位置の微調整は可能。

クランクケースとステーターベースの合いマークと別に、点火時期用の合いマークも存在する。エンジンを始動してタイミングライトを照射して、矢印と刻み線が一致するか確認する。

複雑な点火制御を持たないベーシックなCDIユニットの中身は、イグニッションコイルに電気を送るコンデンサーやスイッチ代わりのサイリスタ、逆流を防止するダイオードなどシンプルな構成。だが電流が流れる場所には必ず発熱があり、温度が上がりすぎればトラブルの原因になるので、時々は熱くなりすぎていないかをチェックしてみよう。

経年劣化によってステーター側のチャージコイルやパルサーコイルのコネクターが腐食したり抜け掛かっていると抵抗が増加するので、端子を抜いて磨くメンテナンスも有効。パルサーコイルの加熱や緩みの有無も点検項目として重要だ。

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