体感できる高性能を実現する広島高潤のバイクオイル
取材協力/広島高潤株式会社  取材・写真・文/淺倉恵介  構成/バイクブロス・マガジンズ編集部
掲載日/2017年3月31日

エンジンを保護、そしてポテンシャルを極限まで引き出すための重要なファクター、それがエンジンオイルだ。巷には無数のオイルブランドが存在しているが、口コミでその性能が伝わり、知る人ぞ知る高性能オイルとして静かなブームを呼んでいるオイルがある。それが”Hiroko”こと、広島高潤のオイルだ。

INTERVIEW

独自のノウハウで作り出される
超実戦型高性能オイル

オイルメーカーは、大きく2種類に分けられることを知っているだろうか? ひとつが石油会社や油脂会社といった、石油や科学物質からオイルそのものを作り出すメーカー。そして、もうひとつがオイルのブレンダーだ。ブレンダーは、ベースオイルと呼ばれるオイルの原料となる素材に、様々な科学成分を加えることで、狙った特性のオイルを作り出す。Hirokoもそうしたブレンダー系のオイルメーカーのひとつだ。

オイルのブレンドは企業秘密の塊だ。加える添加剤(ここでいう添加剤とは、オイルの製造時にベースオイルに混合する素材全般のことで、いわゆるアフターケミカルの添加剤ではない)の成分や分量次第で、オイルの性能や特性は変わってくる。また、同じ添加剤を配合する場合でも、混ぜ込む順序を変えると完成品のオイルの性能や特性が変わるのだ。つまり、オイルの性能はブレンダーの知識と経験、ノウハウの有無で決まるものなのだ。

Hirokoのオイルは、同社代表の飯盛直人さん自らブレンドを手がけている。長年、ブレンダーを務めてできて得た経験値は膨大。何を、どのように配合すれば、どういったオイルが生まれるかは、全て頭脳に刻み込まれている。だが、飯盛さんは経験だけに頼らない。オイル開発時には、必ず自分自身がテスターとしてオイルを実際に使用。そこで得たデータを製品にフィードバックすることを欠かさない。そうした地道な努力が、Hirokoのオイルの高性能と信頼性を支えている。飯盛さんは、Hirokoのオイル開発ポリシーをこう語る。

体感できる高性能を実現する広島高潤のバイクオイル

右の人物が、広島高潤代表の飯盛直人さん。異業種からオイルの世界に飛び込み、叩き上げで技術を磨き上げてきた”オイル職人”。左が営業スタッフの藤原慎也さん。トライアルスーパー国際A級で活躍する、現役のトップライダー。

「机上の計算だけで、良いオイルが作れるとは思えないんです。長くオイル開発に携わってきましたから、配合を考えるだけで、ある程度は狙った性能を出すことはできます。ですが、やはり実際にエンジンにオイルを注ぎ込み、自分で走ってみなければ本当のところはわからない。オイルによって、エンジンのパフォーマンスは確実に変わります。その変化を、誰もが体感できなければいけないと考えています。だから、自分自身で走って確かめるんです。ですが、性能の極限を試すことは自分では難しいですから、様々なモータースポーツに関わりトップライダーにテストをお願いしています」。

そう、Hirokoはレース活動にも積極的だ。ロードレース、モトクロス、トライアル、カートレース他、あらゆるカテゴリーのトップコンテンダーと協力し、オイルの性能を磨き上げているのだ。そうしたテストライダーの一人である、トライアルライダーの藤原慎也選手にも話を聞いた。藤原さんは国内トライアル競技の頂点であるスーパー国際A級クラスで活躍するプロライダーであると同時に、Hirokoの営業スタッフでもある。

オイルのブレンドは、職人技の世界。意外なことに手作業に頼る部分が多い。飯盛さんはオイルブレンドの達人、その指先からHirokoの高性能オイルが生み出される。

「トライアルは繊細なマシンコントロールが求められる競技です。特にクラッチ操作が重要で、そのクラッチの性能を支えるのがミッションオイルです。国際A級に昇格してから、満足できるミッションオイルが見つからず困っていました。そんな時にHirokoと出会い、協力して新しいミッションオイルを開発することになったんです。自分の希望する特性を伝えたら、すぐ新しいオイルを作ってきてくれたのは驚きました。その、プロトタイプのオイルもかなり好印象だったのですが、気になる点の改善をお願いしたら、すぐに対応してもらえて嬉しかったですね。そうして開発を続け、製品化されたのがFK75Rです」。

現在FK75Rは、トライアルの世界で幅広いスキルのライダーから熱烈な支持を得るに至っている。また、さらに性能を突き詰めた上級者専用ミッションオイル「SHINYA SPECIAL」も登場。商品名にある“SHINYA”は藤原さんの名前から取ったものだ。藤原さんは、Hirokoの高い技術力と柔軟な企業姿勢に惚れ込み、メーカーとサポートライダーという関係を経て、Hirokoに入社することになる。現在も、トライアルの第一線で戦いながらオイル開発を行っているのだ。

ここまでお話しを伺ってきて、Hirokoのオイルに対する真摯な姿勢を感じ取ることができたように思える。そこで、以前から気になっていたことを訊ねてみた。オイルの謳い文句といえば、”高い耐久性””優れたエンジン保護性能”といった言葉が定番だ。オイルの機能や基本性能を表す重要なポイントであるわけだが、Hirokoのwebページやパンフレットにはそうした記述が見当たらない。その理由はこうだ、Hirokoにとって耐久性や保護性能といったオイルの基本性能が優れていることは当たり前で、今更述べることではないと考えているようなのだ。いやはや、オイルについての考え方と、追及している性能の次元が違う。豊富なノウハウと、徹底したテストを欠かさない実践主義。だからこそ、Hirokoのオイルは確かな高性能を持つ。一度、使って、その違いを体感してほしい。

藤原さんは、国内でわずか15人ほどしかいない、トライアルスーパー国際A級ライダー。トップレベルのテクニックと、プロライダーならではの厳しい視点をもって、Hirokoオイルの開発に携わっている。

PICKUP PRODUCTS

豊富な製品ラインナップと
細やかなユーザー対応

Hirokoのラインナップは実に豊富。4st用オイルだけでも、用途や対象とする車種が異なる30種類近くが存在する。2st用オイルに関しても幅広く対応。1984年に発売した、初の自社製品が2st用オイルであったこともあり、2stユーザーが居る限りは供給を続けたいと考えているそうだ。また、Hirokoではオイルのオーダーメイドにも対応してくれる。現在使用しているオイルの不満な点を伝えると、まずは既成のラインナップから適したオイルを紹介してくれる。それでも納得がいかない場合、ユーザー個々の要望に合わせて専用のオイルをブレンドしてくれるのだ。オリジナルブレンドのオイルを作る場合でも、ベースに使用する既成品+追加する添加剤の価格となるので、驚くほど高価になるというわけではないという。興味があったら、一度問い合わせてみよう。

01オイルは配合する成分と、その配合方法によって性能が変わる。Hirokoのファクトリーでは、用途の異なる様々なベースオイルや添加剤を常備している。

02出荷を待つオイル達。Hirokoのオイルは、ほとんど作り置きされない。ラインナップが厖大なため、注文を受けてから生産されるものが多い。常にフレッシュで劣化の心配がないのもポイントだ。

03飯盛さんと会話しているのは、2017年ヨシムラのライダーに大抜擢された濱原颯道選手。2016年の鈴鹿8耐で、戦闘力の劣るSSTクラスのマシンで、驚異の2分9秒台を叩き出した濱原選手のマシンには、Hirokoのオイルが使用されていた。

04Hirokoの4st用エンジンオイルの最高峰「M4」。ベースオイルに、最上級のエステルを100%使用したプレミアムオイル。強靭な油膜保持性を誇り、トルクフルでレスポンスに優れた走りを提供する。粘度は6種類が用意され、あらゆるエンジンに対応。

05Hirokoでは、現在も2st用オイルの開発を続けている。「感性」は、ベースオイルに100%エステルを使用した化学合成油。トライアルから、ミニバイクレース、モトクロスから旧車のベスパまで、あらゆる2stエンジンに適合。混合、分離、両方で使用可能。

06これは汎用2stエンジン用のオイル。Hirokoでは、バイク用だけでなく幅広い分野のエンジンオイルを製造しているのだ。

07エンジンオイル以外にも、バイク用の油脂類をラインナップ。これはDOT5.1をクリアした、高性能ブレーキフリュード。フロントフォークオイルも高い評価を得ている。

08HEAT CUTはエンジンオイルに添加することで、油膜を強化し熱ダレやオーバーヒートを防止するケミカル。中速域のトルク増大も見込めるという。サスペンションオイルやギア&デフオイルに使用しても効果がある。

BRAND INFORMATION

広島高潤株式会社
住所/広島県広島市南区字品海岸3-8-55-10
TEL/082-255-0015

性能重視の商品開発によって「(違いを)体感できるオイル」としても知られる高性能オイルメーカー。ライダーのニーズに応じたワンオフオイルの製造から、愛車の好調を保つためのストリートユースのオイルまで、シーンに応じたオイルをラインアップする。