ミシュラン「アナキーアドベンチャー」が問う 道、旅、遊び、その欲望のダイバーシティー。Part2
掲載日/2019年2月26日
取材協力/日本ミシュランタイヤテクニタップ
文/松井 勉
写真/関野 温、日本ミシュランタイヤ
世界の2輪市場で人気の高いアドベンチャーバイクにマッチするタイヤ、ミシュランの新製品「アナキーアドベンチャー(ANAKEE ADVENTURE)」の試乗会へ行ってきた。Part2ではモーターサイクルジャーナリストの松井 勉さんが様々なシーンでアナキーアドベンチャーをテストライド。試乗インプレッションをお届けする。

タイヤをアナキーアドベンチャーへ
交換後からすぐ解った、そのちがい

今回、取材用に使用したのはBMW R1200GS アドベンチャーだ。30Lを飲み込む燃料タンクと水平対向エンジンを搭載したモデルで、その重量は満タン時で270kg弱。このクラスでもヘビー級だ。しかし走らせると一体感があり軽快な走りが自慢の一台だ。 このバイクの標準装備タイヤこそアナキー3。

多くのタイヤテストをしていたので、直前まで履いていたのは別のタイヤだったが、タイヤショップでミシュランのアナキーアドベンチャー(ANAKEE ADVENTURE)へと交換し、走りはじめた瞬間、その軽快な動きに驚いた。まるで燃料が少ない時のように左右に寝かすのが軽い。どっしりした印象だったアナキー3とはかなり違った印象だ。

ミシュランの新作タイヤ「アナキーアドベンチャー」。サイズはフロント19インチ(110/80 R19 59V、120/70 R19 60V)、21インチ(90/90 -21 54V)とリア17インチ(150/70 R17 69V、170/60 R17 72V)、18インチ(150/70 R18 70V)。

こう書くとタイヤが地面と点あたりしているかのような印象を持たれるかもしれない。しかし、そのタイヤの接地感は潤沢。広い面積で路面とコンタクトしている印象なのにハンドリングに重さは皆無。どっしりしているが接地面はもっと少なく感じたアナキー3とも印象が異なる。新作は寒くても安心感が高い。

テストコースまで高速道路を走ったときも、直進から追い越しのためにレーンチェンジ、そしてまた走行車線に戻るための動きも軽く決まる。タイヤトレッドが肉厚の新品というところを考慮しても、乗り心地は上質。大型トラックの重量で路面に掘れた轍にはやや敏感かな、という程度。基本的に直進性は上々だ。

駆動系メーカーの意地悪コースで
アナキーアドベンチャーの実力を試す

目指すは栃木にあるGKNドライブラインのテストコース。高速周回路やハンドリングコースとウエットコースなどがあるほか、砂利舗装ルート、登坂路などのオフロードコースもあり、タイヤテストにはもってこいの場所だ。

アナキーアドベンチャーの開発目標は、直進安定性、コーナリング安定性、ハンドリング、操縦性、ドライグリップなどは先代となるアナキー3と同等レベルの性能を持たせたうえで、ウエット時のグリップ力をさらに高めること。

そもそも、四輪のディファレンシャルギアなど、駆動系部品を作るメーカーのコースだけに、ハンドリング路に存在するカーブは入り口は速度が早く、その後、どんどん曲率が小さくなる複合カーブが多いうえ、道幅も狭い。クルマだと横Gで挙動がどんどんシビアになるような長いカーブが続く意地悪設定だ。

これはダート路も同じ。緩やかなカーブの先にさらに回り込むカーブ、表層は滑る砂利道、という設定だ。

実際にテストして分かる
高速領域まで変わらぬ安心感

まずは高速周回路を使って、100km/h、120km/h、140km/h、160km/h、180km/hあたりまでフィーリングを確かめる。比較用にアナキー3を装着したBMW R1200GSでも走行をしてみた。安定感は両者互角。速度が増してもまったく安定感と安心感は変わらなかった。

また、直線に設けられた30m間隔で置かれたパイロンのスラロームを100km/h程度で通過してみる。アナキーアドベンチャーのほうがハンドリングに粘りがなく、切り返しは軽快だった。ただし、こんな速度でこれほどレーンチェンジを繰り返すような走行は日常的ではないから参考までに。

写真はバンクの最上段を走行中。余談だが、速度が速いので、路面に強いGで押しつけられている感じがある。テストはバンク下のコーナーで試みた。旋回力、寝かす重み、また深いバンク角から起こしたときの安定感、安心感も素晴らしい。前輪フィーリングの濃さはライディングをバラ色にしてくれる。

高速周回路にある折り返しカーブは高速バンクになる。また、そのバンク下は長い高速コーナーだ。高速コーナーでタイヤの接地面に高負荷をかけながら旋回をしても、まったくアナキーアドベンチャーは音を上げない。旋回性を維持する重みはやはりアナキー3よりも軽快。総じて高速走行は得意分野だと太鼓判が捺せる。

意地悪なワインディングも
自信を持ってイケル

次にドライハンドリング路だ。狭いとは書いたが、どれぐらいか、というと、前走者を追い越すとき、相手がしっかり道を譲ってくれないと、ちょっと恐いレベル。センターラインのない相互通行の道、という印象だ。そして、路外は草地。はみ出したら即転倒になるだろう。精神的プレッシャーも掛けることで、製品を鍛えるコースらしい。

深いリーンアングルでもグリップ力に危うさはない。アンダーステアも許容範囲の下限あたり。軽妙なものでしかなかった。

同じくアナキー3との比較になるが、カーブへの進入、そこから旋回へと入るためにバイクを寝かせてゆく過程で、アナキーアドベンチャーは自在感がある。まるで接地面が縦長にのび、しっかり路面を掴む感じだ。それでいて粘り感がなく、接地感はさらっとしている。それが安心感の源泉。さらにもっと攻め込んでみようか、と挑戦心を楽しく引き出してくれるのだ。

減速時にブレーキをかけ始めたところから、緩やかにブレーキを残しながら深く寝かすまでの一連でも、しっかりと旋回力を出しながら走ってくれるのがいい。速度は旋回中が50km/h、60km/h、直線的な部分で120km/h程度まで上がるが、パーシャルスロットルで長い時間曲がるようなカーブと、その先に待ち構える高速道路のランプのような回り込むカーブのアプローチも、自信を持って走るコトができる。

道幅が狭く、一気に荷重をかけにくいコース設定だけに、探りながらの走りが多くなる。タイヤには決して有利ではない場面でも安心感が途切れない。だから楽しい。

減速時の安定感、グリップ感、深いバンク角への移行する軽快さと安心感。それらを含め死角なし。見た目のブロックタイヤ感からキツイかと思ったら、市街地同様、どの場面でもこのコースではアナキーアドベンチャーが好印象だった。

濡れたアスファルトをしっかり掴み込む
ウエット性能の確かさ、実感

今回、テストコースで体験した実力でもっともすごいと思ったのがウエット性能だ。アナキーアドベンチャーはドライ路同様、濡れたアスファルトをしっかりと掴み込んでくれる。減速時もスラロームでも同様だ。

減速時の姿勢変化が少ないのがBMWの美点だが、それにしても伸びたリアサスペンションにリアタイヤが接地性を失わずしっかり減速する感触はなかなか。フロントのグリップ感も信頼を置けるもの。

特にスラロームでは左右への切り返す瞬間、タイヤからは相応に荷重が抜ける瞬間がくる。そこをドライ路で体験したときのように、軽い身のこなしでス、スっと接地感を伴って走る。向きが変わり、そのまま寝かし込んでも恐くない。平常心で普通に走れる。

ウエットスラロームで見せた走りは未体験のものだった。写真のような切り返しから寝かし回り込む、というライディングシーンを綺麗に、シームレスにつないでくれる印象だ。

対するアナキー3もけっして劣るタイヤではないのだが、旋回に入る瞬間の切れ込み感、切り返し時の荷重移動時など短い時間だが緊張する瞬間がある。なるほど、40%アップしたウエット性能とはこのことか! 急減速をしても同様で、ABSが介入するほどブレーキングしても、その介入したときの減速Gはアナキーアドベンチャーが一枚上手。同じ速度なら車体長の半分は確実に短く止まっているように感じた。

荷重がぐっとかかってからの安心感はアナキー3もあるが、ブレーキング開始時の車重程度しか荷重がかかっていないところに一気に車重がのしかかるような場面でも、アナキーアドベンチャーの安心感は絶大。

路面変化を柔軟に吸収
林道ファンならおすすめしたい!

最後にダートコースへ。アクセルを開けるでも締めるでもない30~40km/h程度で荷重移動を極力減らして走り、タイヤが持つベーシックなグリップ力を感じてみた。直線では方向安定性がやはり高い。アナキー3だと砂利に細かく影響される感じだ。ブロックが深い分、アナキーアドベンチャーのほうが適度に路面変化を柔軟に吸収する印象なのにたいし、剛性が高そうなトレッドのアナキー3は変化を素直にハンドルを握る手に伝えてくる。どちらにしても恐くはないが、安心感が高いのはアナキーアドベンチャーだ。

硬い路面の上に砂利が乗る一番やっかいな状況、しかも轍の段差もなく平らな路面。まるで逆バンクのカーブを走るよう。こんな複雑な状況をもしっかりと路面を掴んでくれる。

ペースを上げる。アクセルオフ、ブレーキング、寝かし込み、アクセルオン、旋回、という一連の動きにメリハリを付け、スポーツしている感じまで速度を高めてみる。アナキー3はグリップ限界時の挙動が空気圧の高いタイヤで走っている印象だ。もちろん、両者同じ、標準指定の空気圧だから、よりマイルドで接地感があるアナキーアドベンチャーのほうが楽に走行できる。身構えるコトが少ないのだ。減速に関しても、緩やかに旋回しながら速度を落とすような場面でもまるでオフロード用タイヤのように安心感がある。

緩い左カーブ、路面は浮き砂利。慣れてきたとはいえ、トラクションコントロールが入りながらここまでテールスライドでコントロールを楽しめる車体とのバランスも絶妙。タイヤの基本性能が高くないとここまでは楽しめない。

登坂路も走り、最低限の助走でタイヤのグリップを見てみた。土に石が埋まった路面にしっかりと噛みつき、駆動力を路面に伝えるのが解る。同じ坂を下りながらブレーキングしてゆっくり降りても、その減速を受け止めてくれるから安心だった。速度をのせ、途中から減速するような走りをしても、ライダーの意思はタイヤを通じて地面にちゃんと届く。バイクをコントロールできている感覚は何物にも代えがたい喜びだ。

登坂路にて。およそ40度の上りを適切な助走の後、静かに掘らずに着実に登って見せた。下り坂でのブレーキ力もしっかり路面に伝えている。

ミシュラン、アナキーアドベンチャーは
多様な欲望にしっかり効きます

結論を言うなら、これほど全方位に優れたタイヤなら、迷う必要ナシ、そう思う。現在、ミシュランは舗装路メインに使うユーザーに、スポーツツーリングタイヤとして人気のロード5のアドベンチャーバイク向け仕様であるロード5トレールを。砂地や泥濘、どこでも走りたい、林道をもっとエンジョイしたい、というユーザーには、オフロードブロックタイヤのアナキーワイルドをそれぞれ用意している。

今回、アナキーアドベンチャーを体験すると、舗装路、砂利道など日常使いから振り幅の大きさ、というか守備範囲の広さが印象的だった。アドベンチャーバイクをそれらしく使うならば、むしろうってつけのタイヤであると言える。長い高速移動でノイジーなオフ向けタイヤは我慢がいるし、峠道ではやはりハンドリングのシャープネスやグリップは我慢が必要。ロード用タイヤでは逆に未舗装路で不安だ。

なるほど、通過できる、ではなくどこでも楽しみたい、を見事に一本に封入している。タイヤ作りの情熱が見せた包容力。オフロードルックだけど、舗装路も良くて、というタイヤが最近人気だ。その急先鋒になるタイヤだと言えるだろう。しばらく愛車に履き、その性能をさらに追求してみたいと思う。

INFORMATION

ワールドグランプリのトップカテゴリーで、350回以上の勝利と26回のチャンピオンを獲得してきたミシュラン。1889年の創業以来、人やモノのモビリティの発展に貢献することを自らの使命とし、自転車のための脱着可能な空気入りタイヤやラジアルタイヤの発明など、2輪車や自動車業界におけるあらゆるステージで活躍してきた。