キムコ AK550 長期インプレvol.02【ツーリング・走行性能編】

掲載日:2018年01月22日 トピックス    

車両協力/キムコジャパン  取材・写真・文/西野 鉄兵、『アウトライダー』編集部

ツーリングシーンでスポーツ性能の本領が発揮される!

キムコ AK550 長期インプレvol.02【ツーリング・走行性能編】

日々の通勤で感覚をつかみ、街乗りでの性能を確かめた後、いよいよツーリングへ出発した。今回はツーリングでの走行性能をインプレッションしていこう。

キムコ AK550 長期インプレvol.02【ツーリング・走行性能編】

まず特徴的なのは、エンジンの鼓動感だ。スクーターと言うと、ミッション車に比べ主張は少なくおとなしいものが多い。存在感が薄いとも言いかえられるかもしれない。コミューターとして便利な日常を過ごすことを重視した造りで、ユーザーもそれを目的に所有するためだ。

しかしAK550はまるで異なる。車両のキャッチフレーズは「the thrills of touring」だ。直訳すると「ツーリングのスリル」となる。しばらく乗ってみて個人的に意訳するならば「旅をワクワクさせる」とか「ちょっと過激に走ろうぜ」とか、そんなニュアンスなのかなと思う。

エンジンは鼓動感からやる気満々だ。270度クランクの水冷並列2気筒エンジンは、2気筒を採用するスポーティな車両でよく用いられるもの。ドルッドルッ、ドルッドルッ、ドルッドルッ……という鼓動感は、街中では「止まっているときは番犬を押さえつけているかのよう」と表現したが、信号も少ない爽快な道を走ると、ボクサーが素早くワンツーパンチを放ち続けているかのような印象を抱いた。身体の芯の部分に響いてくる小刻みなリズムが走れば走るほど心地よく、なるべく止まりたくない、と思えてくる。

キムコ AK550 長期インプレvol.02【ツーリング・走行性能編】

最高出力は39.3kw(53.5PS)を7,500回転で発生する。排気量から考えると驚くような数値ではないが、実際に乗ってみると想像以上に力強かった。ギア操作が不要なためスタートダッシュから出したい速度域までアクセルのひねり具合ひとつ。大きく開ければあっという間に時速100kmに達し、身体が置いていかれるような感覚になる。ちなみに体重68kgの筆者がほぼ空荷で検証したところ、約4,000回転で時速60km、約5,500回転で時速100kmだった(ハイパワーモード時)。

レッドゾーンは8,000回転からで余裕はたっぷりある。メーカー発表では最高速度が時速161.7kmとなっている。今後、時速110km制限の高速道路が増えていく見込みだが、このバイクなら交通の流れの先陣を切って巡航できるだろう。

ちなみに、エンジン外観のように見える部分は樹脂のカバーで、この中に金属ケースが備わっている。エンジン本体はカウルを取り外すと見ることができる。

キムコ AK550 長期インプレvol.02【ツーリング・走行性能編】

スクーターのコーナリングは独特だ。ミッション車と異なる特徴は大きく3つあると考えている。1つはニーグリップができないこと、2つ目はトルク感が薄いこと、3つ目はエンジンブレーキがほとんど使えないことだ。

ニーグリップに関してはどうすることもできないが、対策がある。フットボードに乗せた足に少し力を入れて、自分の脚をフレームに見立てるのだ。脚をなるべくバイクと一体化させるようなイメージ。神話のケンタウロスを想像すると分かりやすいかもしれない。脚をバイクの一部と考えて走るだけで、安定感と安心感が増す。

トルク感が薄いと、すーっと滑っていってしまうかのような感覚で「曲がりきれるのか!?」と冷や汗をかくことがある。スクーターはたいがいそうだがAK550は違った。しっかりと地面を踏みしめている感覚が強い。

最大トルクは55.64N・m/5,500rpmで、最高出力に対し2,000回転低いところで発生する。5,500回転といえば、筆者の体重の場合の時速100km走行時と同じだ。常用域で扱いやすいセッティングにされているのが分かる。

エンジンブレーキに関しては、やはりミッション車と比べるとその差は大きい。ただ、スクーターの中ではかなり強い方だろう。アクセルを戻すとグッと押さえつけられるような感覚があり、下りコーナーも怖い思いをせずに走ることができた。

キムコ AK550 長期インプレvol.02【ツーリング・走行性能編】

AK550は走行モードが「フルパワー」と「レイン」の二択。フルパワー時はメーターパネルに青色のLEDが点灯する。レインモードでは薄いオレンジ色となる。乾いた路面のツーリングでは基本的にフルパワーで走っていたが、1車線プラスアルファほどの幅が狭い道ではレインモードの方が安心だろう。

フルパワーは加速が非常に良いため、低速時でのアクセル操作がシビアで難しい。狭い道ではほんの数ミリ開け過ぎただけで予想外のスピードが出てしまい、肝を冷やすことになる。

キムコ AK550 長期インプレvol.02【ツーリング・走行性能編】

AK550が走りやすく感じる特長として、車体バランスの良さもある。前後の重量配分を50:50に近付けるように設計されていて、ハンドリングがとても素直なのだ。加えて徹底した低重心設計により、安心感も高い。

ブレーキとサスペンションにこだわりが光る!

キムコ AK550 長期インプレvol.02【ツーリング・走行性能編】

足周りを見ていこう。まずフロントは倒立フォークが採用されている。上下でクランプされたダブルクラウン式で径は41mm。ストローク量が120mmも確保されている。コーナリングでよじれを感じることもなく、機敏かつ安定して働いているのが体感できた。

ブレーキはダブルディスクが採用されている。キャリパーはブレンボ製でミッション車のスポーツモデルさながらの装備だ。排気量に対してオーバースペックとも思えたが、ビッグスクーターは車重があり、なおかつAK550は加速がすこぶる良いので、確実に安心して制動できるよう手厚くしたのだろう。ABSは前後標準装備。メーカーはBOSCH製。完璧とも言える充実さだ。

キムコ AK550 長期インプレvol.02【ツーリング・走行性能編】

リアブレーキはシングルディスク。フロント2枚・リア1枚で、前の方がかなり強く効くかと思ったが、後ろも力強い制動性を体感できた。強過ぎず弱過ぎず、的確な効き具合で感触もいい。リアブレーキはワインディング走行やUターンをする際の速度調整でも使うため、ガクンッと効くものだとコワイ。その点このブレーキは安心感の高いものだった。

キムコ AK550 長期インプレvol.02【ツーリング・走行性能編】

ブレーキは前後ともに4段階で硬さ(距離)を調整できる。レバーに備わったアジャスターを指で回すシンプルな仕様だ。

キムコ AK550 長期インプレvol.02【ツーリング・走行性能編】

リアサスペンションは外観の特徴としても一役買っている。そのレイアウトは「ホリゾンタルトレーリングアームリアサスペンション」と呼ばれ、ホリゾンタルは「水平の」という意味だ。トレーリングアーム式はスイングアームの要素も持ったもの。エンジンとトランスミッションをフレームマウントとすることでバネ下重量を軽減し、後輪の路面追従性を向上させている。水平近くまで寝かされたモノサスペンションは、最近のスポーツバイクのようでかっこいい。

以上のように、ブレーキとサスペンションは、フラッグシップモデルにふさわしいこだわりが詰め込まれている。タイヤはメッツラー製だ。オンロードのあらゆるシチュエーションで不安はなく、信頼して思い思いの走りが楽しめるだろう。実際にこの足周りのおかげで快適なツーリングができたと思っている。その点は次回のインプレでも触れたい。

キムコ AK550 長期インプレvol.02【ツーリング・走行性能編】

未舗装路での走行も試してみた。ツーリングでは不意に道がフラットダートになったり、砂利の駐車場を走らなくてはならないこともある。土の道では、ぬかるんでさえいなければ何ら不安もなく走ることができた。また、細かい砂利なら問題ないが、ひとつひとつの石が大きい川原などは、さすがに厳しいだろう。

キムコ AK550 長期インプレvol.02【ツーリング・走行性能編】

タイヤの径は前後15インチと小さめ。それでもサスペンションが優秀なため、想像以上に良く走る。スクーターで積極的にダートに飛び込む人はいないと思うが、見た目以上に進めると思っていただいて大丈夫だろう。

AK550でのツーリングはロングになるほどその性能が体感できそうだ。所有すればきっと北海道にも行きたくなる。北海道を楽しもうと思ったらフラットな未舗装路を走らなくてはならない機会も出てくる。長旅の中のほんの0.1%程度のフラットダートを頑張れるだけの性能は持っている。

今回はツーリングでの「走行性能」に重点を置いて見てきた。次回はAK550ならではの「快適性能」に注目して紹介していきたい。

試乗ライダー プロフィール
西野鉄兵
ツーリングマガジン『アウトライダー』編集部デスク。ビッグスクーターブームの2002年からバイクに乗り出し、初めて所有した250ccはホンダ・フュージョン タイプX。学生時代にはこのバイクで毎日往復100kmの距離を通い、長い休みには全国各地を走り回ってきたツーリング好き。

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