キムコ AK550 長期インプレvol.01【普段使い編】

掲載日:2018年01月15日 トピックス    

車両協力/キムコジャパン  取材・写真・文/西野 鉄兵、『アウトライダー』編集部

キムコ創立50周年モデルが2017年12月日本でも発売開始!

キムコ AK550 長期インプレvol.01【普段使い編】

台湾ブランドのキムコと言えば、お手ごろ価格の原付二種や250ccスクーターを思い浮かべる人が多いと思う。2017年に世界各地で発売されたこのAK550は、名前のとおり排気量550cc(細かくは550.4cc)のエンジンを搭載している。ただ、これが初めての大型バイクというわけではない。10年ほど前にはすでに700ccのスクーターを発表していて、現在は他メーカーへのOEM生産をするなど技術力と信頼性の高さは折り紙つきだ。

キムコ創立50周年モデルとして登場したAK550は、発売から半年ほどで、世界累計販売台数が8,000台に達した。充分に世界に認められた後、日本でも発売開始されたわけだ。

キムコ AK550 長期インプレvol.01【普段使い編】

主力市場のヨーロッパでは、とくにイタリアでのシェアが高いそうだ。技術もさることながら、デザイン性でも認められているのだろう。直線を基調にしたシルエットはビッグスクーターながら野暮ったさがなく、スポーツバイクが持つ「やる気」が感じられる。

直接のライバルは間違いなく、ヤマハのTMAX530シリーズだろう。スポーツツーリング性能を追求したコンセプトや排気量、それに価格も近い。AK550は税込み127万4,400円でTMAX530 DXは135万円、TMAX530 SXは124万2,000円となる。排気量はAK550の方が20cc大きく、最高出力と最大トルクも上回っている。

通勤で都内を走ってみると、スポーツバイクだということを実感!

キムコ AK550 長期インプレvol.01【普段使い編】

スクーターは、通勤や通学、買い物など、日常使いでの用途がミッション車に比べると格段に多いだろう。そこでしばらくは街乗りバイクとしての性能を確かめるため、通勤など都内の移動に使ってみた。すると、これまで数々乗ってきた250ccクラスのスクーターとはまるで別物だと実感したのである。

まずは足つき。シート高は785mmと決して高くはないのだが、シート幅がある分、脚を真っ直ぐ下ろせず、両足を地面につけようとすると爪先立ちになる(身長175cm・体重68kg)。もちろん脚の太さも大きく影響する。筆者は人並みより太ももが太いため、シート側面に干渉してしまうのだ。脚が細い人ならずいぶん楽に乗れるだろう。

キムコ AK550 長期インプレvol.01【普段使い編】

走り出してしまえば、ハンドルやフットボードまでの距離が遠いということはなかった。身長180cm以上の人の方が、ゆったりと乗れてジャストフィットすると思う。つまりけっこう大きい人向け、やはり欧州市場を意識した仕様だ。

筆者が考える街乗りでの使いやすさを要素は大きく分けると3つ。足つき性、細身(コンパクト)な車体、瞬発力だ。

AK550の場合、足つき性は前述の通りでスクーターにしてはやや地面が遠い。傾斜地で停車して両足をつこうとしたとき、片足がなかなか接地せずヒヤッとすることもあった。シートの前の方に座ると足はつきやすい。

車体サイズに関しては250ccスクーターとさほど変わらない印象だ。ただ、ミラーがハンドルではなくカウルについていて、幅もあるため少し気を遣った。

そして瞬発力だが……あまりにも良過ぎる!

キムコ AK550 長期インプレvol.01【普段使い編】

AK550はパワーモードの選択ができる。左レバーのパッシングスイッチの横に備わったグレーのスイッチを押すことで「フルパワー」と「レイン」の2つの設定に切り替えが可能だ。

レインモードはウエットな路面での空転を防ぐため、出力を少し落としている。街乗りならフルパワーモードではなく、レインモードの方がちょうど良く感じられた。

フルパワーモードはあまりにも瞬発力が良いため、アクセルを開ける、ブレーキを握る、またアクセルを開ける……という動作の繰り返しになってしまった。時速30km以下の低速をスムーズにコントロールするのに四苦八苦したのだ。

それがレインモードでは、ずいぶん穏やかで安心感があった。スクーターの場合、エンブレが弱くクラッチも切れないため、加減速はアクセルとブレーキに託される。あまりブレーキランプをちかちか点灯させるのも後続車に申し訳ないので、街中はレインモードで走った。

キムコ AK550 長期インプレvol.01【普段使い編】

モードをフルパワーにしていると、バイクが「もっと加速させてくれ!」とせっついてくるようで、ついつい信号待ちの先頭に立つとロケットスタートをしてしまう。気付くと思った以上にスピードが出てしまっているときが多々あった。渋滞にはまっている最中は、やはり「俺はもっと走りてえんだ!」と訴えかけてくるかのよう。

270度クランクの並列2気筒エンジンは、ミッション車でいうと、ヤマハのMT-07やトライアンフの ボンネビルシリーズなどが採用している。ドルッドルッ、ドルッドルッ、ドルッドルッ……と飛びかかろうとする番犬のような雰囲気。そのリードを押さえつける飼い主はちょっと大変だ。

総じて、走行性能に関しては「コイツの得意なフィールドは街乗りではなさそうだぞ」と思ったのだった。

便利な最新装備が満載だ!

キムコ AK550 長期インプレvol.01【普段使い編】

AK550にはキーレスエントリーシステムが採用されている。スマートキーをジャケットのポケットに入れておけば、エンジンの始動やシートのオープン、ハンドルロック、給油口のオープンができる。鍵をいちいち挿さなくていいのは非常に楽。万が一、シート下ラゲッジスペースに鍵を入れたまま閉じてしまっても、普通に開けられるのが嬉しい。怖いのはエンジンを始動させた後、鍵を落としたり、どこかに置いてきてしまったりすることだ。一度オフにしたら次は始動しないので、出先で動かせなくなってしまう。スマートキーの反応距離は2~3メートル程度のようだった。

キムコ AK550 長期インプレvol.01【普段使い編】

グローブボックスは左右にあり、左側は内部にUSBタイプの電源ソケットが備わっている。6インチサイズのスマホなら、ケーブルを繋いだ状態でも斜めに傾けたら入った。これなら走行中に安全な場所で充電ができる。

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右側のグローブボックスは一般的なもの。夏用のグローブやサングラスなどを入れることができる。開閉は左右ともにワンタッチ式で鍵は付いていないから、貴重品を入れて車両から離れるのは避けたい。

キムコ AK550 長期インプレvol.01【普段使い編】

シート下ラゲッジスペースは前側から開くタイプ。2段階に角度調整を行なえるLED照明まで備わっている。

キムコ AK550 長期インプレvol.01【普段使い編】

容量はまずまず。ヘルメットはタイプによって入らないものもある。写真のアライ・SZ-Ram4(Lサイズ相当)の場合、逆さにすればシートを閉じることができた。エアダクトのないスモールジェットくらいなら逆さにしなくても入りそうだ。ヘルメットのほかにグローブを入れてもまだ余裕がある。レインウエアやマップも同時に収納できるだろう。

キムコ AK550 長期インプレvol.01【普段使い編】

しかし「ヘルメット入れにくいのかあ……」と嘆くことなかれ! 嬉しいことに外国車としては珍しく、ヘルメットホルダーが完備されている。しかも反対側にも備わっているので、タンデムツーリングで2人ともフルフェイスでも安心だ。

キムコ AK550 長期インプレvol.01【普段使い編】

メーターは画期的なシステムが採用されている。右側は速度、燃料計、水温計などを表示。左側は回転数(タコメーター)、オド、トリップ、電圧状況、前後のタイヤの空気圧表示、瞬間燃費、継続燃費などを表示する多機能なもの。

そして中央部の液晶パネルが最大の注目ポイント。『noodoe』(ヌードー)と言って、世界で始めてスマホとのBluetooth接続を可能としたスマートメーターだ。速度や時計に加え、天気情報やコンパス、スマホの新着メッセージまで表示される。これらの組み合わせやデザインは自在に変えられ、自分で作ることも、世界中のユーザーたちが作ったものも使えるのだ。

キムコ AK550 長期インプレvol.01【普段使い編】

デフォルトではBluetoothを接続せずに速度計とアナログ時計が表示される。アナログ時計は秒針までついていて、とても見やすい。

将来的にはナビ機能を持たせることも考えられていて、欧州では2018年春から実施される予定だ。ソフトウエアの無料アップデートのみで最新のナビゲーション機能が表示されるというのは、なんとも画期的。このシステムはキムコが成功させれば、ほかのメーカーも絶対に真似するだろうなあ、と思った。

キムコ AK550 長期インプレvol.01【普段使い編】

メーターとnoodoeの操作は右レバーの付け根にあるスイッチで切り替えて、その上部にあるスイッチで表示の操作を行なう。複雑そうに見えるけれど案外シンプル。数日で慣れた。

取り回しはスクーターとしては重めだけどビッグバイクよりだいぶ楽!

キムコ AK550 長期インプレvol.01【普段使い編】

AK550の車両重量は226kgで、例えば250ccスクーターと比べるとマジェスティの場合で188kgなので、だいぶ重く感じる。しかしミッションのリッターバイクと比べれば重心が低い分、反対側に倒す不安も少なく、取り回しは楽。女性でもハンドルを自在に切って前進と後退ができるだろう。

またハンドルの切れ角がとても大きいため、小回りが利く。クラッチの付いていないスクーターはUターンでの速度調整が難しいから、自信がないときは降りて転回した方が楽だろう。

キムコ AK550 長期インプレvol.01【普段使い編】

スクーターのメリットがこれ! 跨ったままでも前進と後退ができる。ただし路面が砂利だったり傾斜地だと難しい。シートに座ったまま動かすのは、脚が太く短い筆者には無理があった。

キムコ AK550 長期インプレvol.01【普段使い編】

駐輪場に置くときに嬉しかったのは、ミラーを前方に折りたためること。ステーごとガクンと折れるので、横幅はだいぶコンパクトになる。

キムコ AK550 長期インプレvol.01【普段使い編】

駐輪場へ置いた際もほかの中~大型バイクと変わらない。車体サイズは、例えばホンダ・CB400SFと比べると全長が85mm、全幅が50mm長い程度。ビッグスクーターは場所を取るイメージがあるが、ミラーが折りたためることもあり、乗りかえた際に駐輪スペースに困ることは少なそうだ。

キムコ AK550 長期インプレvol.01【普段使い編】

センタースタンドが標準装備されていることも魅力だ。駐車スペースがよりコンパクトで済む。サイドスタンドが降りているとエンジンがかからないが、センタースタンドなら始動するというのもメリット。センタースタンドをかけるのは、荷物を積んでいてもラクラクだった。

キムコ AK550 長期インプレvol.01【普段使い編】

ガソリンはハイオク指定となる。街乗りではレインモードを使用し、燃費は約25km/Lだった。モードをハイパワーにすると、20km/Lを切る結果に。燃費の面でも市街地でのコミューターとして使うときは、穏やかなレインモードがオススメだ。

キムコ AK550 長期インプレvol.01【普段使い編】

普段使いする中でもありがたかったのは、標準装備されているグリップヒーターの存在。スイッチを入れると左グリップのLEDライトが白く光る。温度は3段階で調整でき、薄手のグローブで最強モードにすると真冬だというのに熱過ぎることも。グリップの径は細身で操縦しやすい。

さて、普段使い編はここまで。今回の結論は、充実したユーティリティは便利だけど、走行性能はスポーツツーリングを重視した造りだということ。

だから、ほとんど街乗りでしか使わないという人にはオーバースペックかもしれない。そんな人には、同社の新型250ccスクーター「G-Dink 250i」が扱いやすく、値段も安いのでオススメしたい。

長期インプレのvol.2では、AK550の本領であるツーリングでの走行性能を探ってみたい。

試乗ライダー プロフィール
西野鉄兵
ツーリングマガジン『アウトライダー』編集部デスク。ビッグスクーターブームの2002年からバイクに乗り出し、初めて所有した250ccはホンダ・フュージョン タイプX。学生時代にはこのバイクで毎日往復100kmの距離を通い、長い休みには全国各地を走り回ってきたツーリング好き。

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