ハーレーダビッドソン FLSTF ファットボーイ
ハーレーダビッドソン FLSTF ファットボーイ

ハーレーダビッドソン FLSTF ファットボーイ – 低速~高速まで快適に楽しめる

掲載日:2008年03月04日 試乗インプレ・レビュー    

構成/バイクブロス・マガジンズ編集部

常に人気モデルの上位にある
ハーレーの定番モデル

100年以上の歴史を誇るハーレーは、現在5つのファミリーに分かれる。ツーリング、ソフテイル、ダイナ、スポーツスター、そしてV-RODだ。今回紹介するFLSTF(ファットボーイ)はソフテイルファミリーのモデル。ソフテイルは1984年から登場したファミリーで、その特徴はフレームの構造にある。当時、すでに盛んだったハーレーのカスタムの中では、古いモデルのリアサスペンションが取り付けられていないフレーム形状(リジッドフレーム)の人気が高かった。ただ、リアサスペンションが装備されていないと快適なはずもなく、快適さとフレームのリア周りのデザインの良さを両立させるため、開発されたのが“ソフテイルフレーム”だったのだ。フレーム下にサスペンションを隠し、一見するとリアサスペンションがないように見えるスタイル。これをメーカーが採用したことによって、ハーレー人気はさらに広がった。

また、ソフテイルは2つのシリーズに別けられる。FLシリーズとFXシリーズだ。どちらもソフテイルフレームを採用するものの、FLシリーズはどっしりとした重厚感のあるモデルで、FXシリーズはチョッパーテイストが色濃い。今回紹介するFLSTFはソフテイルファミリー・FLシリーズに属し、旧き良きハーレーのスタイルを守り続けるモデルの1つなのだ。伝統的な“ハーレーらしい”スタイルから、1990年の登場以来、常にハーレーの人気モデルの上位にあり続けているFLSTFについて、じっくりとご紹介しよう。

※FLSTFはファットボーイというマスコットネームがつけられており、FLSTFよりはファットボーイと呼ばれることが多い。そのため、以下はファットボーイとして紹介させていただく。

ハーレーダビッドソン FLSTF ファットボーイ 特徴

前後17インチホイールと
極太のタイヤが特徴的

ハーレーダビッドソン FLSTF ファットボーイ 写真1990年以来、搭載するエンジンこそ「エボリューション→ツインカム88B→ツインカム96B」と変化したものの、ファットボーイのスタイルに大きな変化はない。「クラシックなスタイル×現代の技術」を体現するモデルであるため、大幅な見た目の変化は求められていないのだろう。ただ、2007年モデルでエンジンがツインカム96Bに変更された際、ファットボーイのみ特殊なタイヤサイズに変更されている。従来、ソフテイルFLシリーズは前後16インチと、クラシックテイストのハーレーが当たり前に採用してきたタイヤを履かせてきた。しかし、2007年モデル以降はFLシリーズではファットボーイのみ、前後17インチでフロント140mm、リア200mmの太いタイヤを採用した。このため、同じFLシリーズの中でもファットボーイは前後左右、どの角度から見ても重厚感、存在感があり、その人気をさらに高める結果となっている。その他、FLシリーズの中でファットボーイのみの特徴というと前後のホイールにディッシュホイールを採用していること。このホイールデザインもファットボーイの大きな特徴となっている。

これはソフテイルファミリー共通の部分になるが、エンジンは1584ccツインカム96Bを搭載。力強いトルクで加速するものの、エンジン内部に搭載したバランサーによって不快な振動を抑える仕組みとなっている。1584ccのエンジンはダイナファミリー、ソフテイルファミリー、ツーリングファミリーの3ファミリーが搭載しているが、それぞれのファミリーごとにエンジン仕様には差があり、エンジンだけで見るとソフテイルファミリーのツインカム96Bがもっとも快適な走行を約束してくれるエンジンと言えよう。もちろん、快適なだけではなく、ハーレーには外せない要素、“鼓動”もしっかりと残されている。

2007年モデルから排気量アップ、ミッションが6速化されたツインカム96エンジン。エンジン内部にバランサーが内蔵され、不快な振動を軽減。その真価は高速巡航時に発揮され、快適そのもの。

1584ccツインカム96Bエンジン

2007年モデルから排気量アップ、ミッションが6速化されたツインカム96エンジン。エンジン内部にバランサーが内蔵され、不快な振動を軽減。その真価は高速巡航時に発揮され、快適そのもの。

長距離走行時も疲れを感じない肉厚のシート。ライダー側のシート幅がやや広いので、身長が低い人は足つきに不安を感じるかも。純正オプションで足つきをよくするシートも用意されている。

肉厚のノーマルシート

長距離走行時も疲れを感じない肉厚のシート。ライダー側のシート幅がやや広いので、身長が低い人は足つきに不安を感じるかも。純正オプションで足つきをよくするシートも用意されている。

ソフテイル・FLシリーズで唯一採用されている存在感大の前後17インチディスクホイール。美しく品のある外観とクオリティの高さが人気だが、高速走行時に横風を受けるとやや怖いかもしれない。

質感の高いディスクホイール

ソフテイル・FLシリーズで唯一採用されている存在感大の前後17インチディスクホイール。美しく品のある外観とクオリティの高さが人気だが、高速走行時に横風を受けるとやや怖いかもしれない。

ファットボーイならではのデザインのフロント周り。威風堂々としたスタイルで人気だ。大型のヘッドライトを装備しているため、走行中にヘッドライトに映る景色を楽しめるのも、このモデルの魅力の1つ。

大型のヘッドライト

ファットボーイならではのデザインのフロント周り。威風堂々としたスタイルで人気だ。大型のヘッドライトを装備しているため、走行中にヘッドライトに映る景色を楽しめるのも、このモデルの魅力の1つ。

ハーレーダビッドソン FLSTF ファットボーイ 試乗インプレッション

エンジンは非常に扱いやすい
低速~高速まで快適に楽しめる

ハーレーダビッドソン FLSTF ファットボーイ 写真乗る前に車両の周りをぐるりと回ってみたが、リアの200mmタイヤの存在感はかなりのもの。ハーレーのカスタムの世界ではワイドタイヤを履かせるのが人気だが、これだけ存在感があれば充分。その他、クロームメッキが美しいエンジン、マフラー、フロント周りなど、どこから眺めても高級車を買ったという所有感を満足させてくれるだろう。筆者は少し前のスポーツスターに乗っているが、こういった風格あるモデルで悠々と街を流すのも楽しいだろうなと、ついつい思ってしまう。

ではファットボーイに跨ってみよう。まず感じたのは「ハンドルが思った以上に近い」ということ。もう少しハンドルが遠くてもいいかな、と思う。ただ、筆者は身長が178cmと大柄の部類であること、納車時にハンドルを近くする人の方が多いということから、これは決してマイナスポイントではない。次に車両の重さ。エンジンをかけない状態での車両の押し引きは見た目ほどの重さはなかった。車両重量はカタログ上では330kgもあるが、車高が低いため数字上より軽く感じるはず。一方、足つきはノーマルシートの横幅があるせいで、両足はベッタリ地面にはつくものの、ヒザの余裕はなかった。私でそうなので、体格に自信がない人は足つきに不安を感じてしまうだろう。実際、納車時にシートを薄くて幅が狭い純正のバッドランダーシートに換える人が多いと聞く。

ハーレーダビッドソン FLSTF ファットボーイ 写真エンジンをかけると「ハーレーらしい、力強いサウンドが…」と言いたいところだが、近年の環境規制の結果、ハーレーのサウンドはかなり抑えられたモノとなっている。個人的にはマフラーの音量・音質にはもうこだわりがないので気にならないが、映画で聞くようなハーレーサウンドを期待している人は覚悟のほどを(笑)。2007年から吸気システムはインジェクション化されているので気温の低かった試乗日もエンジンは一発で始動、少し前のキャブレターモデルに乗っている私には楽に始動ができるのがちょっと羨ましい。スロットルを回し、走りはじめると“ドッドッドッ”と大排気量ツインエンジンは重い車体を力強く前へ進めてくれる。ツインカム96が発売された当初のエンジンフィーリングより気持ちよくなった気がするが、インジェクションのデータの設定が2008年モデルでさらに煮詰められたのか? エンジンの回り方は初心者に扱いにくいものではなく、低回転で必要以上のパワーが出てしまうことはない。

エンジンに組み込まれたバランサーのおかげでダイナファミリーやツーリングファミリーほどの振動はお尻には伝わってこず、快適そのもの。バランサーの快適さは街乗りではなく、高速走行でその有り難味を発揮してくれるだろう。低速走行の街中~高速まで、どんなシチュエーションでも走行中は重さを感じることはなく、扱いやすいのだが、他の1584ccモデルと比べて気になったのが、コーナーリング時。ファットボーイの前後タイヤの太さから、スポーツ性を求める気はもともとなかったが、コーナーを曲がっていると思った以上に外に膨らんでしまう。コーナーが続く道での軽快性はあまり求めない方がいいだろう。ややネガティブな面も書いたが、ハーレーのイメージにもっとも似合うストレートの道での気持ちよさはさすがに格別。「ハンドルから手を離してもまっすぐ走るんじゃないか」と思わせる直進安定性はこの太いタイヤのおかげが大きいだろう。

ハーレーダビッドソン FLSTF ファットボーイ こんな方にオススメ

ポジションは後からどうにでも
ルックスに惹かれたら即買い

ソフテイルのFLファミリーは、ツーリングファミリーの一部モデルとで悩む人が多いと聞く。この2ファミリーで悩んでいる人は必ず試乗して欲しい。エンジンのバイブレーションがまったく違うため、どちらが自分好みなのか、自分の体で確かめて欲しい。ただ、ファットボーイはホイールサイズなど他にはない特徴があるモデルのため、指名買いも多いはず。ツーリングファミリーや同じファミリーのFLSTCのような、ツーリング時の積載性はないものの、シンプルな装備で悠々と街を走りたい人にはオススメ。サドルバッグなど余計な装備は最低限に、このシンプルなスタイルを楽しんで欲しい。足つき性などから「乗れるかな?」と不安に思う人がいたら、心配ご無用。ファットボーイは最低地上高やシート高が他のモデルと比べても低いため、体格に不安がある人もハンドルやシートを換えるだけで乗りやすくなるから大丈夫だ。女性や身長が高くないユーザーが非常に多いのは豊富なパーツを組み合わせれば、ポジションはどうにでもなる。

ハーレーダビッドソン FLSTF ファットボーイ 総合評価

旧き良きスタイルを再現した
もっともハーレーらしいモデル

個人的には現行モデルラインナップの中ではソフテイルFLシリーズが見た目では“もっともハーレーらしい”と考えている。ツーリングファミリーの威風堂々としたモデルも確かに“ハーレーらしい”が、ツーリングファミリーは「より遠く、より快適に」を実現するためには進化を厭わないモデルだ。フレーム下にサスペンションは装備しているものの、ソフテイルフレームの快適性はツーリングファミリーのフレームには間違いなく劣る。多少の快適性を犠牲にしてでも“旧き良き”ハーレーのスタイルを具現化しようとしているのがソフテイルファミリーであり、中でもクラシックテイストを再現しているモデルがFLシリーズだ。ファットボーイを含むFLシリーズが人気の理由はきっとこの“クラシックテイスト”にあるのだろう。少々コーナーが曲がりにくかろうが、気にすることはない。見た目が気に入ったのであれば間違いなく買い、だ。ファットボーイはノーマルでスタイルがかなり確立されているものの、そこに少し自分流の個性を与えてやれば一生付き合える相棒となることだろう。

SPECIFICATIONS - HARLEY-DAVIDSON FLSTF FAT BOY

ハーレーダビッドソン FLSTF ファットボーイ 写真

価格(消費税込み) = 227万1,000円

1990年に登場して以来、スタイル面で大きな変化をせずに歴史を経てきた人気モデル。リアサスペンションが見えないフレーム形状と、旧き良きハーレーの雰囲気を現代に伝えるスタイルが人気で、安定した人気を誇る。

■エンジン = 空冷OHV 45°Vツイン 1,584cc
■最大トルク = 110N・m/2,750rpm

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