ケンテックのショールームは板橋区を通る環状8号線沿い、埼京線の北赤羽駅から徒歩10分の場所にある。このあたりの歴史を探ると、戦中は陸軍の管理敷地。昭和20年の東京大空襲では徹底的に空襲されたが、戦後は工場用地として復活を遂げた地域とある。荒川を渡れば北に鋳物で有名な川口を配することから工業が盛んな地域だったことも伺える。
代表の吉岡健一さんは、そんな土地柄で育った。今50代の前半だから、幼少期は昭和の40年代、青年期は50年代である。まさにそれは高度成長期と重なり、町は活気で溢れていたはずだ。青年となった吉岡さんは、都内一等地にある二輪メーカーで営業マンとして業績を上げながら、自分のショップを立ち上げることを模索していた。それはバイクブームやアメリカンブームと言われた時代。独立してから紆余曲折があったものの、企画製作したパーツは順調に売れて、車両販売も好調となる。
「最初は実家で立ち上げたんですよ。1992年だったかな。このあたりは機械工場が多くてね。僕は少年時代からそんな町で育ったから、どんなものでも製作できる自信があった。自分で製作できるものもあるし、仕事を頼める工場や知り合いも多かった。最近はみんな歳をとって辞める人も多いけど、この界隈の職人気質は変わらないものですよ」
現在のショールームは15年ほど前にオープンした。カスタムを製作するファクトリーは、別の場所にあり、怪我の回復と共に、今後さらにパーツ製作物を増やせる体勢を整えるという。
ケンテックの代表的なパーツに2イン1マフラーがある。これは国産アメリカンの性能を高める優れたマフラーだが、そこにも吉岡さんの大きなこだわりが反映されていた。
「シルエットは、ショベル時代のハーレーローライダーがモチーフです。2イン1というマフラーは、排気脈動をうまく利用した効率の良い排気系が作り出せる良い形状で、パワー不足な国産アメリカンに装着して吸気のセッティングを変更すると、エンジンチューニングなんてしなくても、かなりパワーアップします。ウチのマフラーはルックスだけじゃなくて性能でも勝負します」
ローダウンしても、バンク角をちゃんと確保させる絶妙な形状。吉岡さんが生み出すパーツの細かいこだわりは、マフラー形状を見るだけで、充分納得できるものである。その他の製作パーツも、細かい形状や仕上がりには目を見張るものばかり。購入したユーザーはリピーターとなり、全国のショップからのオーダーも数多い。それは吉岡さんの職人としての気質が、各パーツに反映されているからなのだと思った。
もう15年以上前に製作したこのカスタムは、イベント出品用に短期間で製作されたもの。ロー&ロングのシルエットをストレッチタンクとマフラーで強調した個性的な1台だった。ドラッグスターのノーマルが持っているイメージを壊すことなくモディファイされたシルエットは、シンプルで時代を超越した美しさを表現している。ペイントは、ケンテックブルーと呼ばれる3コートパール塗装で、見る角度を変えると微妙に変化する。ガラリと色を変えるマジョーラ塗装よりも上品なイメージが特徴だ。フロントフォークは5センチロングでトリプルツリーは7度のレイク角を与える。これでハンドリングはどの速度域でもニュートラルで、切れ込みはいっさいない。走りにも手を抜かないケンテックらしいカスタムなのだ。
ハーレーダビッドソン用のツアーバッグにエクステンションで延長し、ブラック塗装。取り付けステーはワンオフ製作し、独特のシルエットを国産アメリカンベースで完成させたドラッグスターである。フロントフォークにハーレー純正のΦ41㎜を使用して、ホイールにもハーレー用の21インチキングスポークカスタムホイールを採用する。トリプルツリーはなんとノーマルだが、そのまま使用できるという。車高調整にフォークのスプリングを加工してローダウンしたが、リヤサスはノーマル。フェンダーのシルエットを加工することでローダウンのイメージを与え、実際は充分なバンク角を確保するという手法でモディファイされている。このバガーカスタムは、コンプリート販売も検討中だ。
吉岡さんのカスタムポリシーに「バイクに乗らない人から見ても美しいという印象を持ってもらいたい」という考え方がある。このドラッグスター1100クラシックは、まさにそんな1台ではないだろうか。フロントフェンダーやリヤフェンダーはノーマルからのワンオフ加工。流れるようなデザインはクラシカルだが現代的なモダンアートを感じるシルエットである。実際に吉岡さんがライディング中に、偶然道路上で行き合わせた皇室関係者から賛辞をいただいたというエピソードもあり、その美しさは折り紙つきである。カスタムの内容は下の詳細にて確認していただきたい。当然走行性能をスポイルさせないモディファイを展開し、走りも充分に満足できるスペシャルバイクとして完成されている。
カスタム車両を製作する上で必要となる各種のパーツ。ケンテックでは、その精密な工作技術を持って、オリジナルパーツの販売も数多く実施している。それは各車種別の専用パーツから、バイクの車種を選ばない汎用パーツまでと様々だが、そのどれもが多くの試作やテストを繰り返して生まれて来たクオリティの高さを誇る。品質は、実際に手にとって見てみればすぐに判断できるもの。吉岡さんのこだわりは、パーツの細部にまで行き届いているのである。
ビレットライザー「ニュースタイル・ジュラポスト」は長さが3タイプ。ハンドルをマウントするキャップに加工があり、ボルトが見えない構造である。
2万円~2万3,000円(税抜き)
ドラッグスターにボルトオン装着できるようにジュラルミン製のアタッチメントが装備されたS&Sタイプのエアークリーナー。エレメントはUNI製を使用する。
2万5,000円(税抜き)
通常六角のボルトが使用されるフォークキャップから取り替えるフォークジョイントはプレーンなデザイン。長さは25㎜から150㎜までラインナップする。
1万2,000円~2万円(税抜き)
住所/〒174-0051 東京都板橋区小豆沢4-27-9
電話/03-5914-1270
FAX/03-5914-1281
営業時間/11:00~19:00
定休日/毎週水曜日
赤羽駅から西へ10分。井荻トンネルから枝分かれした環状8号線沿いにあるショールームは、ガラス張りで夜も照明を閉ざさない。中にはハーレーや国産アメリカンのカスタムが展示されていて、様々なパーツも手に取ることができる。