カワサキ・ニンジャGPZ900Rヒストリー/世界最速を目指して生まれたカワサキ水冷並列4気筒の原点 その2

掲載日:2018年11月27日 トピックス    

取材協力/株式会社カワサキモータースジャパン
文/中村友彦 写真/ロードライダー編集部 記事提供/ロードライダー編集部
※この記事は「レジェンドバイクシリーズ 01 カワサキ GPZ900R」に掲載された内容を再編集したものです。

カワサキ・ニンジャGPZ900Rヒストリー/世界最速を目指して生まれたカワサキ水冷並列4気筒の原点 その2

カワサキGPZ900Rの、他車とは一線を画する
最新技術を随所に導入していた

前回書いた通り、初披露の場となった1983年10月のパリショーでは、目立つ優位を築けなかったカワサキGPZ900R。その背景には、初見の印象が前作の空冷GPzシリーズに似ていたという事情があるのかもしれないが、実際のGPZ900Rはその空冷GPzと関係ないどころか、既存の日本製並列4気筒の常識にまったく捉われていない、すべての面において斬新なモデルだった。

カワサキ・ニンジャGPZ900Rヒストリー/世界最速を目指して生まれたカワサキ水冷並列4気筒の原点 その2

カワサキ・ニンジャGPZ900Rヒストリー/世界最速を目指して生まれたカワサキ水冷並列4気筒の原点 その2

まず心臓部となるエンジンに関しては、水冷、DOHC4バルブヘッドというふたつの要素は、当時としても珍しくはなかった。だが、吸気ポートのストレート化を実現するサイドカムチェーンと、振動緩和に貢献する1軸2次バランサーは、当時のバイクでは画期的だった。他社がこのふたつを量産車に使うのは、1990年代に入ってからの話だ。

GPZ900Rのシャシーで最も注目すべきは、ダイヤモンドフレームだろう。エンジンを車体構造材の一部として用いるという手法は、今ではごく普通になっている。ただ1980年代初頭当時、大排気量4気筒車でダウンチューブを使わないダイヤモンドフレームを採用したのは、GPZ900Rくらいだ。なおGPZ900Rが高張力鋼管のメイン部/アルミ角パイプのシートレール/アルミ鋳造のスイングアームピボットプレート兼ステップホルダーという3分割式のダイヤモンドフレームを採用したのは、軽量化と低重心化を促進するためで、空冷GPz1100の乾燥重量244kg/全高1275mmに対して、水冷GPZ900Rの公称値は228kg/1220mmと、この目的は達成された。

このようにあらゆる部分に革新的な機構を投入したGPZ900Rの血統は、以後に発展型として登場するGPZ1000RXやZX-10、ZZR1100に受け継がれていく。もっともシャシーは、GPZ900Rのそれが革新的すぎたためか、カワサキはGPZ1000RXで大きく舵を切り、以降はボルトオン着脱式ダウンチューブを持ったツインスパーフレームに移行。ただしエンジンに関しては、GPZ900Rの基本設計を活かした進化が長年に渡って行われ、発展型の2002年型ZZR1200は、GPZ900R+40psとなる155psをマークした。

余談だが、そのZZRのエンジンは、1997年から展開が始まったネイキッドのZRX1100/1200系にも転用され、2016年型ZRX1200 DAEGまで現役を続けた。改めて振り返るとGPZ900Rの基本設計は、30年以上も生き続けていることになるのだ。

最新技術を随所に導入したGPZ900Rの歴史続きは次のページにて

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