今日から使えるライテク実践講座-「ブレーキ性能はどこまで信用できる?」

Text / Kentaro SAGAWA Photo / Satoshi MAYUMI  取材協力 /ライディングアカデミー東京
ライディングアカデミー東京」佐川健太郎の“スマテク”とは?
普段から役立つ実践的なノウハウや方法をレクチャーしてくれるのは、バイクライフをもっと豊かにするためのライディングスクール「ライディングアカデミー東京」の佐川健太郎校長。せっかく手元にある大型バイク、安全に走りを楽しみ、満面の笑みで1日を終えたいもの。そのためには、ライダー自身のスキルアップと安全意識の向上、環境へも配慮したスマートなライディングを目指したい。それが“スマートテク”なのだ。
PAGE01PAGEPAGEPAGE

強くかけるほど
フロント中心になる

「ブレーキはどこまで強くかけられるか?」と聞かれることがあります。状況によるので一概には決められないのですが、簡単には「ロックする直前まで」強くかけることができます。

 

ブレーキ性能はバイクによって違いますし、タイヤやサスペンションの性能、路面の状態、勾配、速度域などによっても変化します。そして、それ以上にライダーの技量によって大きく左右するものです。ただし、いろいろな条件が変わったとしてもロックする直前、つまりタイヤがスリップするか、しないかの状態が最も制動力を発揮すると言われています。

 

バイクのブレーキですが前後連動システム以外は通常は2系統2操作になっています。クルマと違ってライダーの意思で前後ブレーキを別々に操作出来るわけです。これを活かさない手はありません。

 

バイクは減速中に前のめりの車体姿勢になります。これを“ピッチングモーション”と言いますが、このとき前輪に荷重が移動してフロントフォークが沈み込み、フロントタイヤが路面に押し付けられて制動力が発揮されます。逆に後輪の荷重は抜けていき、タイヤが半分浮いたような状態になっていきます。

 

つまり、ブレーキを強くかけるほどフロントブレーキへの依存度が高くなり、リアブレーキは効かなくなっていく特性があるのです。前後同時にかけてもリヤ側がロックしやすいのはこのため。この特性を理解することが、まずはブレーキ性能を引き出す一歩でしょう。

Practice

 

前後同時に穏やかにブレーキング

ツーリングペースの場合、強いブレーキングは避け、常に車体を安定させた状態で走ることが快適なライディングの基本になります。コーナーを立ち上がったらスロットルを戻し、前後同時に穏やかにブレーキをかけて減速。ブレーキを緩めながら次のコーナーへ向けてスムーズに車体を倒しこんでいきます。過度にブレーキ入力を強めるとピッチングモーションが大きくなり過ぎたり、リアタイヤがロックし易くなるなど、車体の安定性が損なわれるので注意しましょう。

フロントブレーキはバイクの性能向上にともない、より強力なシステムへと進化してきました。高性能モデルでは対向4ポッドや6ポッドで、ダブルディスクが定番。前後連動ブレーキの場合、リアを入力するとフロントキャリパーのピストンの一部が作動して自然なフィーリングが得られるタイプが主流です。

フロントが主役

フロントブレーキはバイクの性能向上にともない、より強力なシステムへと進化してきました。高性能モデルでは対向4ポッドや6ポッドで、ダブルディスクが定番。前後連動ブレーキの場合、リアを入力するとフロントキャリパーのピストンの一部が作動して自然なフィーリングが得られるタイプが主流です。

 

リアブレーキはフロントに比べて小型で、キャリパーも写真のような片押し1ポッドか対向2ポッドが一般的。ディスクローターも小径で制動力は低めに作られています。ただし、クルーザータイプなど後輪分布荷重の大きい一部のモデルでは、フロントと同等以上の制動力を持たせているものもあります。

リアは補助的

リアブレーキはフロントに比べて小型で、キャリパーも写真のような片押し1ポッドか対向2ポッドが一般的。ディスクローターも小径で制動力は低めに作られています。ただし、クルーザータイプなど後輪分布荷重の大きい一部のモデルでは、フロントと同等以上の制動力を持たせているものもあります。

強くブレーキをかけるほど、ピッチングモーションも大きくなり、前輪に荷重が移動してフロントブレーキへの依存度が高まります。フルブレーキング時には結果的にリアが浮き上がった状態になってしまうことも。この状態ではリアの制動力はゼロです。制動力の中心はあくまでもフロントなのです。

強くかけるほどフロント依存度が高まる

強くブレーキをかけるほど、ピッチングモーションも大きくなり、前輪に荷重が移動してフロントブレーキへの依存度が高まります。フルブレーキング時には結果的にリアが浮き上がった状態になってしまうことも。この状態ではリアの制動力はゼロです。制動力の中心はあくまでもフロントなのです。

 

リアブレーキの効力はフロントに比べて小さく、制動力と言うよりはむしろ車体姿勢の安定やエンジンパワーの制御に有効です。Uターンなどではリアブレーキを踏みながらスロットルを開けることで、パワーを抑え込みつつリアが沈み込んだ、安定した状態を作り出すことが出来ます。

リアは車体安定とパワー制御がメイン

リアブレーキの効力はフロントに比べて小さく、制動力と言うよりはむしろ車体姿勢の安定やエンジンパワーの制御に有効です。Uターンなどではリアブレーキを踏みながらスロットルを開けることで、パワーを抑え込みつつリアが沈み込んだ、安定した状態を作り出すことが出来ます。

 

スクワット効果

リアブレーキを踏み込んだままスロットルを開けていくと、リアサスペンションが沈み込んでリア車高が低くなっていきます。これを「スクワット効果」と呼びます。Uターンなどをコンパクトに曲がりたいときや、ウエット路面でスロットル操作に気を遣うときなどに有効で、車速と車体姿勢の安定が得られます。

スマテク+α

新型のデイトナにはレーシングマシンと同じモノブロック(一体式)タイプのフロントキャリパーが採用され、もともと強力な制動力に加え、ブレーキタッチがより鋭くかつ繊細にコントロール出来るようになりました。コーナリング中の微妙なライン修正や速度調整などに特に有効で、まさに「指一本」ですべてをコントロール出来る、そんなイメージ。安全のためにも、コーナリング中も指は1本必ずレバーにかけておくといいでしょう。

デイトナ675

新型のデイトナにはレーシングマシンと同じモノブロック(一体式)タイプのフロントキャリパーが採用され、もともと強力な制動力に加え、ブレーキタッチがより鋭くかつ繊細にコントロール出来るようになりました。コーナリング中の微妙なライン修正や速度調整などに特に有効で、まさに「指一本」ですべてをコントロール出来る、そんなイメージ。安全のためにも、コーナリング中も指は1本必ずレバーにかけておくといいでしょう。

 

砂漠やガレ場をものともせず、スロットル全開で走り切れる車体と足回りを持ったビッグ・オフモデルが990アドベンチャー。その巨大な車体を減速させるブレーキシステムは、前後ともオフ車とは思えないほど強力かつコントローラブル。大きなサスペンションストロークを考慮して、急激に効力が立ち上がらない設定になっています。リアブレーキが思いのほか強力なので、進入でリアロックさせないように軽く一定にかけるようにしましょう。

990アドベンチャーR

砂漠やガレ場をものともせず、スロットル全開で走り切れる車体と足回りを持ったビッグ・オフモデルが990アドベンチャー。その巨大な車体を減速させるブレーキシステムは、前後ともオフ車とは思えないほど強力かつコントローラブル。大きなサスペンションストロークを考慮して、急激に効力が立ち上がらない設定になっています。リアブレーキが思いのほか強力なので、進入でリアロックさせないように軽く一定にかけるようにしましょう。

PAGE01PAGEPAGEPAGE

スマテク講座 講師
佐川 健太郎(Kentaro SAGAWA)
「ライディングアカデミー東京」校長。1963年東京生まれ。モーターサイクルジャーナリストとして2輪専門誌等で活躍中。公道で役立つ実践的な低速系ライディングから、モータースポーツとしてのサーキットライディングまで、テクニックやノウハウに造詣が深く、メーカー系イベントや各種スクール、走行会などでも講師を務める。米国ケビン・シュワンツ・スクール修了。MFJ公認インストラクター。
■スマテクに関するソボクなギモン受付中!■

この記事に関するご質問、ご相談を受付けています。ひとことでライテクと言っても、ライダーによって体格や考え方も異なるし、バイクそのものの特性や走行シチュエーションによってさまざまです。「これが100%正解!」なんて、無いに等しいところですが、広く一般的な基礎知識やノウハウ、こんなときはどうするのがベターなのか?といったギモンに対して、高いライディングスキルを持ち、知識と経験豊かなプロライダーが直々にお応えします。こんな機会はめったにありません!

佐川校長へどんどん質問・相談してみよう!

※コメントはこの記事に関する内容に限らせていただきます。なるべく多くのご質問にお応えするつもりですが、内容によってはコメントできない場合もありますことを予め御了承ください。

これまでの相談一覧

oosako さん

12月21日

この前下り坂で急ブレーキをかけたとき車輪がロックし転倒してしまいました。下り坂では,体が前傾になり車体のバランスがくずれやすくなると思うのですが、何か注意するべき点はありますか?

校長 さん

01月08日

>oosako さん
コメントをいただき、ありがとうございます。
まず、どんなときでも「急ブレーキ」はなるべくかけないようにしてください。特に下り坂では前輪に一気に荷重が移動してロックしやすくなります。
下り坂に限らずですが、ブレーキング時にはニーグリップが基本となります。ニーグリップといっても、ヒザでタンクを締めつけるだけでなく、太モモの内側や踵、くるぶしなど下半身全体を使ってバイクを押さえていくイメージです。シートにお尻を潜り込ませるつもりで座面にしっかり体重を載せることもポイントです。その上で背筋・腹筋を使って上体をしっかり安定させて、逆に肩・腕・手の力はできるだけ抜いてみてください。ニーグリップができていないと、腕で体重を支えることになり、前輪に荷重がかかりすぎてロックしやすくなります。また、腕に力が入っているとロック時やその寸前の兆候(ハンドルがガクガクと振動したり、フロントタイヤが切れ込み始める)を感知しずらくなります。
それでももし前輪がロックしてしまったら、速やかにフロントブレーキを緩めてください。車体がまっすぐであれば、前輪ロックしても回復させることは可能です。
ともあれ、急ブレーキをかけないようにする運転を心掛けてくださいね。

KUNIO さん

01月16日

HP2スポーツに乗っています。
近くの峠で走行を楽しんでいますが、タイヤ(空気圧普通)サイド付近(約5mm残しています)まで使用していますが、マシンの限界が感じられなくとても不安です。
ワインディンにより異なると思いますが、どんなライディングが安全にカッコよく乗れますか?

校長 さん

01月29日

>KUNIO さん
コメントいただき、ありがとうございます。
HP2スポーツですか…素晴らしいバイクにお乗りですね。まずタイヤの空気圧ですが、大型バイクの場合メーカーの規定値で2.5~3.0㎏ぐらいに設定されているはずです。これはストリートでも高速巡航する場合の設定で、街乗りやスポーツライディングだと少し高めかもしれません。空気圧が高いと高荷重をかけないと潰れてくれないため、接地感がいまひとつ出てこない場合があります。HP2だとレーステックあたりのハイグリップタイヤを装着していると思いますので、スポーツライディングでは規定値から1割程度空気圧を落としたほうが接地感が強まると思います。サーキットであれば、さらに落とします。
「マシンの限界を感じられない」というのは、バンク角という意味でしょうか。バイクの挙動を感じられないという場合、いくつか原因があります。「サスセッティングが合っていない」「リラックスできていない」「フォームに無理がある」等々、実際に見てみないと何とも言えませんが。
ひとつ言えることはバンク角にこだわると、うまく乗れません。タイヤを端まで使えるかどうかは、見た目のバンク角とイコールではありません。サスペンションやタイヤに正しく荷重をかけられているかどうかが重要であって、それができていないといくらバンク角だけ深めていってもタイヤのグリップ力は上がらずリスクが増えるだけです。
安全にカッコよく乗りこなすためには、まずリラックスして乗れているか、スムーズで確実な操作ができているか、そしてしっかりバイクに荷重をかけて乗れているか。そのあたりからひとつひとつ解決していくのが早道でしょう。

NH さん

02月13日

大変参考にさせて頂いています。
スクワット効果のところを読んで疑問に思っていたことなのですが、「リアはリアブレーキを踏んだ時しかライダー主導で大きくリアサスを縮める方法が無いのか?」と言うことです。

なぜなら
アクセルオンでアンチスクワットでリアサスは伸びる。
アクセルオフのエンブレでは積極的と言うほどリアサスを沈められない。
Fブレーキではリアサスが伸び
Fブレーキリリースではピッチングで弱リアサス沈み
であると思っているからです。

また
リアサスの縮側を固くしたり、柔らかくすることは何に影響があるのでしょうか?

いろいろ質問すみません。

校長 さん

03月01日

>NHさん
コメントいただき、ありがとうございます。
NHさんがおっしゃるとおり、ライダー主導でリヤサスを沈めるためには、リヤブレーキを使う以外の方法はないと思います。
これ以外には、サスセッティングによってリヤサスを沈めることもできます。これは静的と動的、ふたつの方法があります。まず静的には、リヤサスのプリロードを弱めることで1Gでの沈み込み量を増やすことができ、結果的にリヤ車高が下がります。足着きをよくする場合などに有効ですね。一方、動的にはリヤサスの伸び側ダンパーを強めることで、リバウンドのストロークスピードを抑制して、アンチスクワットやピッチングでの挙動を穏やかにし、結果的に動きの中でリヤの位置を常に低くする作用があります。いずれもライダー主導ではありませんが。
「リヤサスの縮側」とは圧側ダンパーのことと思いますが、これはリヤサスが縮まるときのスピードを制御しています。固くすれば当然沈み込みにくくなり、コシ感・踏ん張り感は増しますが、やりすぎるとツッパリ感が出てきます。逆に柔らかくするとスロットルを開けたときに素直にリヤサスが沈み込みますが、やりすぎると落ち着きがなくなったりします。一般的には街乗りでは弱め、スポーツライディングでは強めにセットしていくとしっくりくるはずです。いずれにしても、圧側ダンパーは最後の味付けに使うものと考えてください。

ZXR さん

01月27日

>前回のサスセッティング有り難う御座いました。
 法定速度内での話ですが、フロントブレーキを強く掛けすぎた時にペーパーロックあるいはフルロックするその直前の兆候に「ブレーキレバーから伝わる微振動」を感じます。
 あくまでもキャリパーやパッド・ローター、タイヤは正常動作する環境であるとした場合、この現象でロックする兆候を察知する手としては有効なのでしょうか?

校長 さん

01月28日

>ZXRさん
コメントをいただき、ありがとうございます。
フルロックというのは、前輪ロックのことでしょうか? たしかに前輪ロックする直前にはタイヤがグリップを失いかけて細かく跳ねたり、それに伴ってフロントフォークのしなりが戻ることになどよる振動がハンドルやレバーを通じて伝わってくるものです。その場合はおっしゃるとおり「ロックの兆候」と見ていいでしょう。
ただ、ベーパーロック現象はブレーキの過熱によりフルードが沸騰して気泡が生じることで油圧低下が起こり、ブレーキが効かなくなる症状なので、ブレーキロックとは分けて考えほうが良いでしょう。その場合には微振動はなく、逆にレバータッチがふにゃふにゃ(スポンジーとも言います)になるはずです。ただ、現代のバイクで法定速度内でそういった状態になることは考えにくく、もしブレーキに異常を感じるのであれば、他の原因(パッドの摩耗やキャリパーのガタや緩み、ステムベアリングの摩耗、フルードの著しい劣化など)を疑ってみるべきだと思います。心配であれば、一度信頼できるショップで点検していただくのがよろしいかと思います。

119899 さん

01月14日

ストップ&ゴーの距離のあるサーキット雨走行中でのブレーキングについて質問です。前の群に追いつきかけた際、予期せぬ手前で前ライダーに急減速されてこちらは突然のブレイキングになりました。ロックしてリア接地後シフトダウンしてイン側にかわしましたが、突然のブレイキングでロックした直後の良い対処方法を教えてください。体勢を完全に真っ直ぐするまでロック状態を我慢するのかブレイキを即リリースしてシフトダウンするのか。

校長 さん

02月19日

>119899 さん
コメントをいただき、ありがとうございます。
そのときの速 度やコースレイアウト、周囲の状況などにより、一概には言えないと思います。
その上でですが、フロント、リヤにかかわらずブレーキロックさせないのが理想ですが、万が一ロックしてしまったら即入力を緩めて、タイヤのグリップを回復させるのが基本です。ただ、雨などではリヤロックしやすく、特に低いギヤではエンブレが強いため、リリースして も後輪がバタついたりして姿勢が回復つずらい場合があります。
その場合 は、半クラを長めに使ってエンブレを緩和することで、姿勢を安定させやすくなります。
ただし、リリースが遅 れて完全にバイクが横を向いた状態でリヤブレーキを緩めると、後輪が急にグリップを取り戻してハイサイドになる可能性が高くかえって危険で す。そのときはリヤロックさせたままスライドダウンさせたほうがダメージは少ないはずです。
サーキットではレベルや意識の異なるいろいろな人が一緒に走っています。「予期せぬ行動」をとる人もいること想定して、安全マージンを十分にとってライディングを楽しんでください。

投稿する