今日から使えるライテク実践講座-「軽いバイクと重量級バイクはどう違う?」

Text / Kentaro SAGAWA Photo / Photo / Yuji FUKUYAMA  取材協力 /ライディングアカデミー東京
ライディングアカデミー東京」佐川健太郎の“スマテク”とは?
普段から役立つ実践的なノウハウや方法をレクチャーしてくれるのは、バイクライフをもっと豊かにするためのライディングスクール「ライディングアカデミー東京」の佐川健太郎校長。せっかく手元にある大型バイク、安全に走りを楽しみ、満面の笑みで1日を終えたいもの。そのためには、ライダー自身のスキルアップと安全意識の向上、環境へも配慮したスマートなライディングを目指したい。それが“スマートテク”なのだ。
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パワーと車重で
加速力は決まる!

加速性能に優れたマシンの条件とは…。加速性能はほぼ車重とパワーで決まってきます。ずばり! 軽くてパワフルなマシンほど加速がいいことになります。

 

パワーウェイトレシオ、という言葉を聞いたことがあるでしょうか。これは車重を最高出力で割った値で、1馬力当たり何キログラムを負担しているかが分かるものです。この値が低いほどダッシュがいいわけで、加速性能を予測する指標になっています。

 

たとえば4輪でもっとも俊敏な加速力を誇るF1マシンの場合、パワーウェイトレシオは1キログラムを軽く下回ります。2輪だとリッタークラスのスーパースポーツがちょうど1キログラムぐらいですね。加速性能を示す数値として0→100km/h加速というものがありますが、ホンダのF1マシンで約3.7秒というデータがあります。同じホンダ最速の市販スポーツカーであるNSXが約5.2秒ですから、いかにF1の加速が凄いかが分かります。

 

でもそこで驚いてはいけません。今回試乗したK1300Sの場合、0→100km/h加速はなんと2.8秒!(メーカー公式発表)。つまり、我々はF1を超える加速性能を持ったマシンに日常的に乗っていることになります。

 

さておき、バイクの場合、排気量が増えるほど車重も増す傾向にありますが、それ以上にパワーも上がっていくためパワーウェイトレシオは逆に下がっていく傾向にあります。つまりバイクの場合、大排気量マシンほど加速がいい。もちろんカテゴリーによってエンジン特性も異なるので一概には言えませんが、ひとつの目安にはなるでしょう。

Practice

大排気量マシンはじんわりと

発進加速ではクラッチワークが重要です。大排気量マシンの場合トルクも強大なため、高い回転数から一気につなぐとフロントが浮き上がったり路面によってはホイールスピンしたりと、リスクが高まります。クラッチミートは「じんわり」が基本。特につながり始めの部分を丁寧に、そこから加速に合わせて徐々にリリースしていくようにしましょう!

 

小排気量マシンは半クラ重視

排気量が小さくなるほどトルクも細くなり、それに伴ってクラッチワークにも繊細さが求められるようになります。粗くつなぐと大排気量マシンのような暴走はないものの、エンストが起こりやすくなります。特に250cc以下のクラスでは、半クラを長めに当てて、クラッチミート時にエンジン回転数が下がりすぎないようにするのがポイントです。

加速度的に開ける

大排気量マシンはアソビを取った状態から初めはじんわりと開け始め、加速するに従ってスロットルを加速度的に大きく開けていくのがポイントです。後輪を通じて路面と対話するつもりで、強大なトルクをうまく路面に伝えながら最大限グリップを引き出してやるイメージです。人差し指はブレーキ用に準備しておき、グリップは主に小指と薬指で軽く握るようにしましょう。

 

メリハリよく開ける

トルクが小さくパワーも穏やかな小排気量マシンの場合、比較的思い切ってスロットルを開けていくことができます。もちろんガバ開けはダメですが、クラッチミートである程度回転数が安定したら一気にスロットルを全開まで持っていってオーケー。発進時はエンジン回転数も大排気量マシンに比べたら高めに設定したほうが、メリハリよく加速できます。

F1マシン並みの加速力を備える大排気量マシンでは、加速時のライディングフォームが重要になります。ライダーを置き去りにするような強烈な加速Gに対抗するためには、前傾姿勢は欠かせません。前傾度の目安としては、頭をステアリングステム中心軸の延長線上に持ってくるのが基本。背中は丸めず股関節から上体を倒し、腰を少し引いて着座位置をやや後ろにすると伏せやすくなります。

頭はステムの延長線上に置く

F1マシン並みの加速力を備える大排気量マシンでは、加速時のライディングフォームが重要になります。ライダーを置き去りにするような強烈な加速Gに対抗するためには、前傾姿勢は欠かせません。前傾度の目安としては、頭をステアリングステム中心軸の延長線上に持ってくるのが基本。背中は丸めず股関節から上体を倒し、腰を少し引いて着座位置をやや後ろにすると伏せやすくなります。

 

250ccクラスでも加速時はきちんと前傾フォームをとりましょう。加速時には「上体を倒す」減速時には「上体を起こす」これが習慣として体に染みついていれば、いきなりハイスペックモデルに試乗したとしてもバイクの挙動に遅れることなくすぐに順応できます。加速時は減速時と違って強くニーグリップする必要はありません。肩と腕の力を抜いてステアリングはフリーにしましょう。

小排気量でも前傾する習慣を

250ccクラスでも加速時はきちんと前傾フォームをとりましょう。加速時には「上体を倒す」減速時には「上体を起こす」これが習慣として体に染みついていれば、いきなりハイスペックモデルに試乗したとしてもバイクの挙動に遅れることなくすぐに順応できます。加速時は減速時と違って強くニーグリップする必要はありません。肩と腕の力を抜いてステアリングはフリーにしましょう。

加速性能の違い(0~30m)

排気量による加速性能の違いを検証するために、実際に停止状態からフル加速して30m地点に到達するまでの時間を計測してみました。結果はまさに予想どおりで、到達時間は排気量順にきれいに並びました。ちなみにパワーウェイトレシオ(車重/最高出力)はK1300S = 1.45kg(254kg/175ps)、ストリートトリプルR = 1.54kg(167kg/108ps)、XR230 = 6.78kg(122kg/18ps)。距離が長くなるほどパワーに余裕のある大排気量マシンは有利なので、さらにタイム差は大きくなるはずです。なお、計測は一発勝負で、クラッチミートのタイミングなどでタイムは変わってきますのであくまでも参考データということで。

スマテク+α

ウォームアップを忘れずに!

これから寒い時期になるので、特にタイヤのウォームアップは入念に行いましょう。冷えたタイヤは本来のグリップ性能を発揮してくれません。ツーリング先で休憩した後などが要注意で、真冬だとわずか数分でタイヤは冷え切ってしまいます。走り出してすぐに深くバンクさせることは避けて、最初は直線でタイヤを温めてください。方法としては、加速とブレーキングを交互に繰り返しながら徐々に速度を上げていくのが有効。加速でフロント、減速でリア、それぞれのタイヤがつぶれることで発熱します。BMWでも方法は同じですが、ABSやASCなどの最新装備のおかけで、加速でのスピニングやブレーキングでのロックを心配せずに思い切れるのが嬉しいですね。上体を前傾したり起こしたりするアクションを加えることで、ライダー自身のウォームアップにもなります。もちろん周囲の安全をよく確認して行ってください!

 

ストリートトリプルRが搭載するデイトナ675系の直列3気筒エンジンは、鋭いスロットルレスポンスと盛り上がる低中速トルクが魅力ですが、その一方でデリケートなスロットル操作が求められるのも事実です。油断してラフにスロットルを開けてしまうと、簡単にフロントアップしてしまうことも…。あくまでも初めにアソビを取ってから、じんわりと開けていく基本操作を忘れずに。たとえば安全な場所でフル加速にトライする場面などは“まくれ”防止にいつでもリアブレーキを踏めるよう、最初からペダル上に右足をセットしておくことが大事。また、クラッチリリースで誤って手がグリップから離れてしまわないように、クラッチレバーには常に指を何本かかけておくことを習慣にすると良いでしょう。

ラフなスロットル操作に注意!

ストリートトリプルRが搭載するデイトナ675系の直列3気筒エンジンは、鋭いスロットルレスポンスと盛り上がる低中速トルクが魅力ですが、その一方でデリケートなスロットル操作が求められるのも事実です。油断してラフにスロットルを開けてしまうと、簡単にフロントアップしてしまうことも…。あくまでも初めにアソビを取ってから、じんわりと開けていく基本操作を忘れずに。たとえば安全な場所でフル加速にトライする場面などは“まくれ”防止にいつでもリアブレーキを踏めるよう、最初からペダル上に右足をセットしておくことが大事。また、クラッチリリースで誤って手がグリップから離れてしまわないように、クラッチレバーには常に指を何本かかけておくことを習慣にすると良いでしょう。

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スマテク講座 講師
佐川 健太郎(Kentaro SAGAWA)
「ライディングアカデミー東京」校長。1963年東京生まれ。モーターサイクルジャーナリストとして2輪専門誌等で活躍中。公道で役立つ実践的な低速系ライディングから、モータースポーツとしてのサーキットライディングまで、テクニックやノウハウに造詣が深く、メーカー系イベントや各種スクール、走行会などでも講師を務める。米国ケビン・シュワンツ・スクール修了。MFJ公認インストラクター。